長野県中野市で2023年5月、住民女性と警察官の計4人が殺害された事件で、殺人などの罪に問われた青木政憲被告(34)の裁判員裁判の論告求刑公判が24日、長野地裁(坂田正史裁判長)であり、検察側は死刑を求刑した。全国紙社会部記者が語る。
【写真】「大切なものは金」卒業アルバムに綴られた青木被告の“将来の夢”。経営していたジェラート店の様子
「青木被告は、散歩中だった女性2人を突如ナイフで相次いで刺し、駆けつけた警官2人もハーフライフル銃とナイフで襲って殺害したとされています。検察側は『悪質な犯行』だと非難し、極刑である死刑を求刑しました。
公判を通じて青木被告は黙秘を続けており、弁護側は青木被告が事件当時『統合失調症で心身耗弱状態だった』と主張している。公判の争点は被告人の刑事責任能力と量刑の程度となっています」
事件の初公判があったのは9月4日。弁護側は青木被告に統合失調症の症状が見られたことを、精神鑑定を行なった医師の証言をもとに主張していた。公判を傍聴していたライターの高橋ユキ氏が語る。
「弁護側の冒頭陳述によると、青木被告は小~中学校の頃から人の目を見て話せず、大学入学後に寮に入ったが、寮生や同級生からの『ぼっち』『キモい』という声が聞こえるようになったといいます。被告は犯行直後にも母親に『おばさんが”ぼっち””ぼっち”というから刺した』と説明していたと言いますが、それは青木被告の妄想・幻聴だったようです」
一方で検察側は、逃げる女性を走って追いかけ、刺し殺した被告の残虐さを指摘していた。
「被告は事件発生の1か月半ほど前に、凶器となるボウイナイフをネットで購入しました。その際、弟に〈ごっつえーナイフ買うたった 今年はこれでいっぱい人殺すねん〉とLINEメッセージを送っていたといいます」
検察側は、当時妄想症に罹患していたとしても、責任能力は十分に保たれていたとして、完全な責任能力があったと主張。それゆえの死刑求刑となったわけだが、9月11日に行われた公判では、被告人が逮捕当初に応じていた取り調べで「死刑になるのが宿命」と話していたことが、調書の内容から明かされている。この公判も傍聴していた前出・高橋氏が解説する。
「調書によると、被告は取り調べで殺害した2人の女性に対し、『いい歳こいて悪口を言うようなロクでもない人間』と断罪していたといいます。先に説明した通り、被告が聞いた”悪口”は、被告の妄想だったわけですが。
当時通っていた大学の学生など、身の回りの多くの人から悪口を言われていると思い込んでいた被告は、『世間の人に悪口を言われて、世の中から排斥され、殺人犯になって、死刑になるのが宿命だと理解している。この事件を起こしてなかったとしても、別の日に、他の場所で、私の悪口を言うバカな人間を殺した可能性は高かったと思います』と供述していたそうです」
今回の求刑を受け、弁護側は26日の最終弁論で、刑を軽くするよう求める見通しだ。判決に注目が集まる。