2025年9月26日、国税庁は『2024年分民間給与実態統計』の調査結果を発表。平均給与は 478 万円(前年比 17.7 万円増)と過去最高をマーク。男女別の給料差に目を向けると、男性は586.7万円(前年比18.2万円増)、女性は333.2万円(17.4万円増)だった。依然と、男女の給料差は253万円もあるのだ。今回の調査では、業界別の給料格差がさらに広がっていることも浮き彫りに。最も平均給与が高いのは電気・ガス・熱供給・水道業という安定した業界で832.4万円だった。最も低い宿泊業・飲食サービス業は279.3万円とは2.9倍の差が生じていた。
キャリア10年以上、3000件以上の調査実績がある私立探偵・山村佳子さんは、メンタル心理アドバイザー、夫婦カウンセラーの資格を持つ。「男女の給料格差が男女の関係の有無に関係していることは多いです。パパ活もその一つではないでしょうか」という。
山村さんは「困っている人を救える人になりたい」という気持ちが強い。学生時代は警察官を希望していたが、当時は身長制限があり、受験資格はなかった。一般企業に勤務するが、目の前の人を助けたいという思いは強く、探偵の修行に入る。探偵は調査に入る前に、依頼者が抱えている困難やその背景を詳しく聞く。山村さんは相談から調査後に至るまで、依頼人が安心して生活し、救われるようにサポートをしている。
これまで「探偵が見た家族の肖像」として山村さんが調査した家族のことをお伝えしてきたが、この連載「探偵はカウンセラー」は、山村さんが心のケアをどのようにして行ったのかも含め、様々な事例から、多くの人が抱える困難や悩みをあぶりだしていく。個人が特定されないように配慮しながら、家族、そして個人の心のあり方が、多くの人のヒントとなる事例を紹介していく。
今回山村さんのところに相談に来たのは43歳でパート勤務している美恵子さん(仮名)だ。「玄関先に不審物が置かれるようになり、置いた人を特定してほしい」と山村さんのところに相談にきたのだ。
今回の依頼者・美恵子さんから連絡があったのは、午後3時でした。「買い物から家に帰ると、仏壇用の花が玄関先に捨てられていて……このところ、不思議なことが多く調べていただきたいのです」と言います。1時間以内にカウンセリングルームに来られるというので、お待ちする事にしました。
やってきた美恵子さんがおっとりとした優しい雰囲気の女性です。高級洋菓子店の紙袋に、少々しなびた仏壇用の花が入っていました。他にも針で穴を開けた避妊具が3個、開封しているが未使用の妊娠検査薬、栄養ドリンク、色褪せた水着、エナジードリンク、仏教関連の経典などが入っています。
「ここ3ヵ月くらいの間に、うちの玄関前に置かれていたものです。警察に相談したら“一応、とっておいてください”と言われて、気持ち悪いと思いながらもガレージの隅に置いておきました。せっかく山村さんに相談するのだからと、持ってきたのです」
美恵子さんは「人から恨まれる覚えはないんです」と言っていました。まずは、家族構成と夫との結婚の経緯について伺いました。
「家族は私と同じ歳で結婚14年の夫、13歳の娘の3人です。本当に何もない普通の家族です。夫と私は高校の同級生で、大学生の時に一時期付き合ったのですが、自然消滅。28歳の時に仕事で再会し、意気投合。そのまま結婚したのです」
ただ、詳しく聞くと、現在住んでいる家は美恵子さんの祖父の土地に建てたものでした。祖父は戦後に生活必需品に使う部品を発明しており、その販売や特許料で財をなしていたことがわかりました。
夫の勤務先は、給料が高いことで知られる名門商社です。とはいえ、美恵子さんにセレブという雰囲気は全くなく、使い込まれたトートバッグはノーブランド、コットンのブラウスとチノパンはおそらくファストファッションのものです。腕時計や靴、スマホケースも国内ブランドでした。
「家こそ親から譲られましたが、そのほかは別に贅沢なこともしてませんし、車だって国産車です。娘も誰もが羨む名門ではありません。だから、こんなものが半年前から置かれるようになったのが気持ち悪くて。夫が防犯カメラを設置して、画像を分析してくれましたが“何も映ってなかった”というのです」
仏花が置かれていたことを夫に話したら、「もう警察は取り合わないだろう。やめろ」と言ったそうです。
「荷物が置かれる時間帯はだいたい13~17時、頻度は1ヵ月から2週間に1回です。今日、仏花が置かれていたということは、向こう1週間の動きはないでしょう。お願いしたいのは、1週間後から丸々7日間、12~17時の間、ウチを見張って欲しいのです」
美恵子さんの口ぶりと雰囲気から、心を病んだ様子はありません。探偵の依頼者の中には、精神疾患の症状の一つである「誰かに見張られている」「盗聴されている」などの強い妄想を抱える人も少なくありません。強く思い込んでいるために必死の形相で「命が狙われています」とか「私を守ってください」などと依頼されるので、つい探偵も真に受けてしまうことが多いです。しかし、実際は誰から監視も盗聴もされていない事例が少なくありません。
このような私的なガードマン的な仕事を探偵が請け負うと、被害が実際ないのでずっとはりつくこととなり、100万円以上の高額な調査費用になってしまうケースもあります。ですから、私はそのような相談者だと確認ができた場合、ご本人に「まずはメンタルケアが大切です。精神科で心の治療をするのはいかがですか」と伝えています。その場でご家族に連絡していただき、医療につなげたことも多々あります。
美恵子さんにその心配も兆候も全くありませんでした。ただ、何かを隠していることはわかりました。私は家に置かれたものを見ながら、「もしかすると、お嬢さんがいじめに遭っている可能性はありませんか?」と聞いたところ、「それは全くありません。今、学校が楽しくて、バレーボールの部活に燃えていて、朝6時に家を出て7時の開門を待っているくらいなんです」と話していました。
そして、私が聞きたかった「パートナーの方が浮気をしている可能性はありませんか?」と続けたところ、美恵子さんの顔がサッと曇りました。そして、しばらく無言です。私も発言を待つように黙っていました。すると「やっぱりそうですよね」と言いました。
「夫と私は親からの結婚のプレッシャーでお互いに“まあこの人でいいか”と結婚したようなところがあります。だから娘が生まれてから早々にレスになりましたし、男女というよりも“信頼できる仲間”という雰囲気なのです。ただ、夫は結婚してからわが家での健康的な食生活で20キロ以上痩せて、モテるようになった。チヤホヤされたり、ときめくことが好きなので、夜の仕事の女性とちょいちょい浮気している気配はあったのです」
夫の写真を見せていただくと、身長が180cm以上あり、がっちりした体型をしています。全体的にワイルドな印象でモテそう。
「夫は“女性は遊び”と決めているので、“遊べそうな人”と1~2回デートする程度で、上手に切り上げていたんです。でも、今の女性とは結構長く続いている様子。多分、玄関にモノを置いているのは女性だと思うんです」
美恵子さんは「夫の収入や、社会的信頼は捨てがたい。あと、夫の海外勤務に帯同するために、仕事を辞めました。そんなこともあり、妻の座を手放したくない。夫との間に波風を立てず、浮気があったことを絶対に娘にバレることはなく、何事もなかったかのように、穏やかな毎日を取り戻したいのです」と話しています。
さらに、このまま放置すると、嫌がらせがエスカレートする可能性もあります。
「そうなのです。夫に知られないように相手を特定し、ガツンとお灸を据えてやりたい。どうぞよろしくお願いします」
仏花や穴の開いた避妊具を置くというのは、思いの強さ、危うさを感じますが、警察はこれで動いてくれないでしょう。
実は浮気で多いのは、給料が高い男性が、収入が少ない女性をサポートするうちに恋愛関係に発展するパターンです。お金がない人は追い詰められていることが多いため、家族まで巻き込んでしまうことも少なくありません。今回はその事例の可能性が高いと念頭に置いて調査をしたほうがいいと感じました。
◇事実は一体どうなっているのか。調査の果は後編「「夫は最初からわかってた」自宅前に避妊具や仏花…結婚14年の家族に届いた「謎の荷物」の真相」にて詳しくお伝えする。
【後編】「夫は最初からわかってた」自宅前に避妊具や仏花…結婚14年の家族に届いた「謎の荷物」の真相