自宅の庭先にある駐車スペースに、悪びれる様子もなく近隣住民が無断駐車をおこなうトラブルがたびたび発生している。丁寧に注意をしても、耳を傾けることもなく、逆恨みに発展する場合もあるようだ。悪質な無断駐車に対して、我々はどのように対処するべきなのか。まこと法律事務所の北村真一さんに話を聞いた。
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ー他人の敷地への無断駐車は、法的に問題ないのでしょうか。
他人の敷地内に許可なく駐車する行為は、民法上の「不法行為」に該当します。土地の所有者は加害者に対し、権利を侵害されたことによって生じた損害の賠償を請求できます。
刑事罰に目を向けると、「住居侵入罪」を思い浮かべる人もいるかもしれません。ただし、塀などで囲まれていない開放的な駐車場では、この罪に問うことは難しいのが実情です。無断駐車によって駐車場が使えず業務に支障が出た場合など、状況によっては「威力業務妨害罪」が適用される可能性はあります。
残念ながら、私有地への無断駐車を直接取り締まる法律は、現在の日本には存在しません。警察が「民事不介入の原則」を理由に、積極的な介入に消極的であるのはこのためです。
ーレッカー移動やタイヤロックは法的に問題ありますか
たとえ自分の土地であっても、許可なく駐車されている車を勝手に移動させたり、タイヤロックをかけたり、あるいは傷をつけたりする行為は、「自力救済」と呼ばれ、法律で固く禁じられています。
これを行ってしまうと、相手から器物損壊罪で訴えられたり、移動にかかった費用とは別に損害賠償を請求されたりする可能性があります。
ー無断駐車によって被った損害に対して、損害賠償は請求できますか
無断駐車は前述の通り「不法行為」にあたるため、それによって被った損害の賠償を請求できます。例えば、ご自身が駐車場を使えず、やむなく近隣のコインパーキングを利用した場合、その駐車料金相当額を損害として請求可能です。
「無断駐車は罰金3万円」といった看板を掲示しても、法的な強制力はなく、実際に請求できるのはあくまで実損害額に限られます。
ーどうしても解決しない場合、どうしたらいいでしょうか
悪質な無断駐車が続く場合は、最終手段として民事訴訟を提起することになります。
具体的には、土地の明け渡しを求める「土地明渡請求訴訟」などを裁判所に起こします。訴訟と聞くとハードルが高いと感じるかもしれませんが、請求する損害額が60万円以下であれば、手続きが比較的簡便で迅速な「少額訴訟」の利用も可能です。
ご近所トラブルは感情的になりがちですが、弁護士などの専門家に相談し、冷静に法的な手続きを踏むことが大切です。
●北村真一(きたむら・しんいち)弁護士
大阪府茨木市出身の人気ゆるふわ弁護士。「きたべん」の愛称で親しまれており、恋愛問題からM&Aまで幅広く相談対応が可能。
(よろず~ニュース特約ライター・夢書房)