米国で乱用が社会問題となっている合成麻薬「フェンタニル」。日経新聞による「中国組織が日本に拠点をつくっていた疑いが判明した」との報道も衝撃的でしたが、なぜこれほど蔓延してしまったのでしょうか。(30代・男性・会社員)
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※写真はイメージ AFLO
もともとアメリカで麻薬が蔓延するようになった一つの契機はベトナム戦争です。50万人もの若者が兵士としてベトナムに送られましたが、南ベトナムの一般の農民と解放戦線のゲリラが、服装では見分けがつきませんでした。敵と味方の区別がつかないまま極度の緊張の中で麻薬に手を出す若者が増え、アメリカに帰国してからも麻薬が手放せないため中南米に麻薬製造工場ができました。
その後、麻薬取り締まりが厳しくなる一方、医療用の鎮痛剤オピオイドが乱用されるようになり、これも規制が厳しくなった結果、代用として合成麻薬フェンタニルが蔓延することになりました。
産業の空洞化で働きたくても働く場所のない男たちが憂さを晴らすためにフェンタニルに手を出すという風潮が続いています。

(池上 彰)