7月30日朝、ロシア・カムチャツカ半島付近で巨大地震が発生。日本でも太平洋沿岸を中心に津波警報が発表され、各地で影響が出た。
そしてその日、Xではこんな声が……。
《館山でクジラが打ち上げられてるらしいけど地震と関係あるのかね》
《地震と津波の影響なのか、クジラ打ち上げられてて…怖い》
同日、千葉県館山市の海岸にクジラ4頭が打ち上げられている模様がテレビ各局で中継された。地震の影響ではーーと考える人々の心理も理解できる。しかし、どうやらクジラと地震は関係がなかったようだ。というのも、クジラが打ち上げられているのが見つかったのは、地震発生の前日、7月29日の夕方だったのだ。それに、震源地から房総半島までは2500キロも離れている。そもそも日本沿岸では鯨類の座礁が年間300頭もあり、そう珍しいことではない。
「マッコウクジラ4頭が漂着した平砂浦海岸は、地元では有名な“サーファーの聖地”ですよ。波が高くてサーフィンをするには適しているんです。遠方からサーフィンをするために来る人がいる一方で、この辺りに住む人はあまり泳ぎにいきません」(近隣住民)
実際に本誌カメラマンが海岸に到着すると、腐敗した臭いがどこからか漂ってきた。前日からニュースになっていたことで、まばらではあるが、見物人も集まっている。
「地元の人以外にもカメラを携えてクジラを見に来ている人がちらほらいました。ほかにも、無邪気に近づく子どもや、クジラの流血を見て後ずさりする人。クジラの局部を触る人など様々でした。なかには、クジラの歯を簡易的なノコギリで切り取っている人もいましたね。自分が見たときには、すでに歯をくり抜いた跡が何個かありました。辺りは血だらけになっていましたね。
少し撮影していると、千葉県の担当職員が来て規制線を張っていました。話を聞くと、『10日以内には処理をする』とのことでした」(本誌カメラマン)
正式に館山市の海岸を管理する千葉県の安房土木事務所にきいた。
ーークジラたちはどのように処理されるのか?
「海岸に打ち上げられたのは7月29日です。31日にはクジラが死んでいることを現場で確認したので、今後は埋却処理をすることになります」
ーー砂浜に埋めるわけですね?
「そうです。クジラは大きいため移動させることが困難で、また感染症などのリスクもあります。そのため埋却処理をします。処理の日程は、台風が接近していることもあり、現時点(8月1日)ではまだ決まっていません。なるべく速やかに処理をしたいと考えております」
死んだクジラの処理というのは、じつは非常に厄介だ。
水産庁の「鯨類座礁対処マニュアル」によると、死んだクジラの処理方法は「埋却(埋設)処分」と「焼却処分」がある。そして「焼却」は、「鯨体に多くの水分を含み、技術的・経済的理由及び各自治体の焼却施設能力の限界から焼却には相当の困難を伴うことが予想される」とハードルが高い。また、海底に沈める方法もあるが、大型の船舶を使用し、非常に手間と費用がかかる方法だ。「鯨類は死亡してからの腐食の進行が早く、腐食が進むと体内にガスが溜まる」との記述もあり、もっとも早く、費用もかからないのが、砂浜に埋める方法なのだ。
ちなみに2024年10月、兵庫県の垂水沖合に漂着したクジラは一時陸揚げされ、その後神戸の埋め立て地に埋却処理され、その費用は約2800万円だった。こうした処理費用は自治体が負担するが、2023年に大阪湾に迷い込んで死んだクジラ「淀ちゃん」の処理費用をめぐってはゴタゴタが起きている。淀ちゃんは死後、市長の決定によって海底に沈める処理がおこなわれ、その費用は約8000万円だった。しかし、大阪市の当初の試算では費用は約3800万円だったことや、市の担当者と処理業者が親しい間柄であったことが明らかになり、関係者が処分されている。
漂着クジラは、とても“難儀”なやつなのだ。