興行収入100億円に迫る大ヒット映画『国宝』。その芸術性の高さ、俳優陣の迫真の演技、そして3時間を超える長尺が話題となっている。
長時間の鑑賞となると、どうしても気になるのが「トイレ問題」だ。そんな中、SNSを中心にこんな声が広がっている。
《映画の前にボンタンアメを食べたら、最後までトイレに行かずに済んだ》
《ライブ中に尿意が気にならなかったのは、もしかしてボンタンアメのおかげ?》
いま、「ボンタンアメに頻尿抑制効果があるのでは?」という都市伝説のようなウワサがネットを中心に注目を集めている。“ボンタンアメを食べたから、トイレは気にしなくても大丈夫”と思い込むことにって尿意が抑えられるプラセボ効果だと指摘する向きもあるが、さにあらず。泌尿器科専門医は「一理あるかもしれない」と言うのである。
年間2万5000人以上の泌尿器症状を診察している「くぼたクリニック松戸五香」院長・窪田徹矢医師が注目しているのはボンタンアメに含まれる「シネフィリン」という成分だ。
「シネフィリンは柑橘系の果皮に多く含まれる成分で、交感神経を刺激し活性化させる作用があります。重要なのは、シネフィリンに平滑筋を弛緩させる作用があるという点です」(窪田医師)
平滑筋とは、膀胱など自律神経で制御される筋肉のこと。つまり、「シネフィリンが膀胱の過剰な収縮をゆるめることで尿意を感じにくくしている可能性がある」というのだ。メカニズムとしては過活動膀胱の治療薬と似ていると、窪田医師は言うのである。
窪田医師はボンタンアメに含まれる糖質の存在にも着目している。
「ボンタンアメに含まれる糖質(もち米や水飴)が血漿の浸透圧を変化させることで、一時的に尿の産生を抑える働きがあると考えられます。そこにシネフィリンの平滑筋弛緩作用が加わることで、尿意そのものが一時的に落ち着く。こうした体感は、実際にあると思います」
複合的な作用によって「一時的な頻尿軽減」を感じる人がいてもおかしくないと窪田医師は見ているのである。ただし、効果と治療は異なる。過信は禁物だ。
「ボンタンアメを食べて『効いた気がする』という人がいても、それはあくまで補助的な効果にすぎません。頻尿の背景には膀胱の老化、前立腺肥大、糖尿病、睡眠障害、ストレスなどさまざまな原因が存在します。まずは正しく診断を受け、根本的な頻尿の原因を突き止めることが先決です。
ボンタンアメを食べ過ぎると、糖質の摂りすぎに繋がります。トイレをずっと我慢することで膀胱炎を引き起こすリスクもある。注意が必要です」(窪田医師)
「心理的な影響により、トイレが近くなることもある」と窪田医師は続けた。
「“しばらくトイレに行けない”と警戒することで、逆に行きたくなってしまう。途中で席を立てないと思うことで不安になってしまう――これは、心因性頻尿と呼ばれるもので、誰にでも起こりうる現象です。
ライブや映画、長時間の会議の前など、『尿意が不安』という気持ちを和らげるアイテムとして、ボンタンアメを1~2粒口にする程度なら、私は悪くない選択だと思います」
ポケットにしのばせられるボンタンアメ。妄信せず、お守り代わりとして持ち歩くにはいいのかもしれない。