福岡市の高島宗一郎市長が2025年8月11日、福岡市内で川が氾濫したとするXの投稿が「フェイク」だと注意喚起したが、後に「実際に発生していた事象」だったとして陳謝した。
福岡県内では、9日夜から線状降水帯が発生。福岡市内でも激しい雨が降った。
こうした中、SNS上では「香椎川氾濫! 気をつけて」とする動画が拡散された。道路が冠水し、中央を走る車のタイヤがほぼ埋まる様子が映っていた。
高島氏は11日午後、この動画について、フェイスブックで「【やめてください!】」という書き出しで、「昨日夕方の記録的大雨では、大変迷惑な事案がありました。それはSNSの情報動画です」と指摘し、「実際には起きていない氾濫映像」と説明。
「防災担職員も驚き、忙しい中で現場確認に時間を取られました。モニター上での河川の水位計からは氾濫は確認できませんでしたが、動画が拡散されていたため職員が現地を確認してフェイクだと判明しました」などとしていた。
元となった投稿に東京のテレビ局から取材の問い合わせが寄せられていたことにも触れ、「人命を守るための最も重要な時間帯に、現場の行政職員がこのような虚偽情報への対応に追われることは、災害対応の大きな妨げになります」と厳しく非難。投稿者のアカウントは削除された、とも説明した。
しかし同日夜、高島氏は一転して香椎川の氾濫が事実であったことを認めた。
誤認に至った理由として、「現場確認に行った市職員の目視情報では河川の氾濫は確認できなかった」が、「実際には撮影された映像の時間と現場確認した時間に約30分のずれがあり、河川氾濫がすでに終了していた」と説明した。
香椎川近くの水位計では氾濫を確認できず、投稿者アカウントが直後に削除されたこと、また市民からの多数の通報が寄せられなかったことなどから、総合的に虚偽と判断したという。
注意喚起ポストの後、職員から「偽情報と言い切れない可能性がある」との報告を受け、防災担当や道路下水担当の職員が改めて現場を確認。すると、映像に映っていた実際の車両を発見し、車や近くのフェンスに流木や葉の痕跡が残っていたことから、短時間ではあるが川から水があふれた可能性が高いことが判明したという。
後に投稿者と連絡が取れ、高島氏は直接経緯を説明し、謝罪したという。
「本来、災害時には正確な情報発信が何よりも大切です。そして受け手も冷静に情報の真偽を確かめることが重要です。その啓発を目的に投稿したはずの私の情報が誤っており、本当に情けなく、恥ずかしい限りです」と反省をつづり、「また、近年のAIフェイク動画やbotの増加に対する私自身の過度な警戒心も、今回の判断に影響したと感じています」と振り返った。
謝罪の上で、「市としても今回の判断を深く反省し、改善するとともに、今後はさらに複数の情報源による確認を徹底し再発防止に努めます。私自身も今回の件を深く重く受け止め、災害時にはより冷静かつ正確な情報をお届けできるよう、気持ちを新たに全力を尽くします」と結んだ。