真夏の強い日差しが照りつける日だけでなく、実は梅雨明け前でも怖い熱中症。最近ではニュースで話題になることも多く、気をつけている人も多いことだろう。
そんな“熱中症のなりやすさ”と胃腸の健康状態に、実は関連性があるという。ではどのように胃腸を整えていれば、熱中症予防につながるのだろうか?
腸内フローラ検査を提供する株式会社サイキンソーの管理栄養士・小川静香さんに話を聞いた。
そもそも熱中症とは「体に熱がこもっている状態」。
通常は炎天下の外出や体を動かすことで体温が上がっても、汗をかいたりすることで適切な体温調節がされている。しかし、たくさんの汗が出てしまうと体内の水分が不足していき、熱をうまく発散できなくなるのだ。
そんな熱中症を予防する方法の一つとして、意識してほしいのが“胃腸のケア”なのだ。「“熱中症のなりやすさ”と胃腸の健康状態には、少なからず関係があると考えています。胃腸には水分を体内に溜めたり吸収したりする役割があり、この機能が低下していると体内の水分不足につながるからです」そこで、日常生活の中で特に気をつけたいのが「お酒の飲み過ぎ」と「朝食抜き」の習慣となる。
小川さんによると、アルコールには利尿作用があり飲み過ぎによって脱水状態に陥ることがあるという。また食事の際には、汁物だけでなく食材などから水分も摂取しているそうで、朝食を食べないことで胃腸の水分不足を招く可能性も。
たしかに、農林水産省のサイトにも「ご飯100グラム当たり、水分60グラム、炭水化物37.1グラム、タンパク質2.5グラム、食物繊維1.5グラムなどが含まれています」とあり、気づいていなかったかもしれないが日常的に「食べて水分補給」をしていたのだ。
しっかり食事を取ることには、他の面からも胃腸のケアの効果が期待される。
「ご飯を食べなかったりすると、腸内細菌のエサになる食物繊維が腸内で空っぽの状態となります。すると腸内の“水分の保留機能”にも影響が出てしまい、腸に水分が入ってきてもすぐに流れ出てしまい蓄えたり吸収できなくなったりするのです」
こんな状態で大量の汗をかけば、水分補給をしてもすぐには大腸の細胞に吸収されず、「大腸の水分」が減った状態が続いてしまう。食事の重要性が分かったところで、その内容にも注意してほしい。
食物繊維を意識することがポイントで、夏が旬の食材で言えば「オクラ」「モロヘイヤ」「桃」などが挙げられる。「オクラはとろろやキムチなどを混ぜたつゆで冷やしそうめん。モロヘイヤはお浸しやカレーに。夏が旬の桃はオリゴ糖もたっぷりで腸にうれしい果物です」
その一方で避けてほしいのが「辛いもの/刺激物」「冷たすぎるもの」「生もの」だ。
「どれも胃腸への影響があることが理由です。例えばアイスなどは、冷たいままで腸まで届いてしまうと機能低下の原因になります。また加熱調理されていない卵や魚などの“生もの”は消化に時間がかかることから、その分胃腸に負担がかかります」もちろん絶対に食べてはいけないというわけではない。まずは「胃に負担がかかる食事」だと意識してみてはいかがだろうか。
また食事以外では、夏独特の気温差が胃腸に大きな影響をもたらすとのこと。
「30℃を超える外気とクーラーが効いた室内との温度差で、自律神経は乱れやすくなります。この自律神経の乱れが胃腸の蠕動運動や機能低下に繋がりやすいのです」と小川さん。近年の夏は真夏日だけでなく猛暑日になる日も増え、「冷房の温度設定が低くなりすぎないように注意する」「室内では上着を羽織る」などの対策もしておいた方が良いかもしれない。
最後に水分補給についても触れておきたい。水分補給は熱中症になってからでは遅い。
例えば、水を一気飲みしたとしても胃を通過するのは約20分後。体内に吸収されるには時間がかかるのだ。そこで、小川さんに効果的に水分摂取する方法を教えてもらった。「実は真水よりも食塩水のような濃度のある水分の方が体への吸収効率が良いのです。スポーツドリンクは糖分が多いので、おすすめは経口補水液ですね。水を飲む場合は、塩分を含む食事などと一緒に、または、塩などを加えることで少し濃度をつけてから飲むよと良いかもしれません」
こまめに水を飲むのも大事だが、体の水分を補う効果的な観点からみると経口補水液が良いのだそう。
その他では、日頃から味噌汁のような塩分を含む食材を定期的に摂取するのもいい。このような習慣を日常生活の中に落とし込むことが、自然に熱中症予防へとつながるというわけだ。近年夏の暑さは異常とも言えるほどで、誰が熱中症になってもおかしくはない。対策はいろいろあると思うが、胃腸の観点からも考えて夏の暑さを乗り切ってほしい。
小川 静香(おがわ・しずか)株式会社サイキンソー 管理栄養士・公認スポーツ栄養士。日本女子大学家政学部卒業後、東北大学大学院医学系研究科にて、運動学分野の博士(医学)の学位を取得。食品メーカーなどで、資格を活かしたプロモーションや営業活動に従事。サイキンソー入社後は、企業の健康経営推進に向けたセミナーやトップアスリートのコンディショニング支援などを行う。イベントでの講演やメディアへの寄稿や出演も多数。