ある中華料理チェーン店で、スマホで注文しようとしている中年の女性グループ。うまく操作できず、店員が使い方を必死に説明している。客は簡単に注文でき、店員は手間が省けるというのが、スマホやタブレットを使ったオーダーシステムなのだが、実際はそううまくはいっていないようである。
店員を通さず自分のスマホで注文を送信するセルフオーダーシステムは、マクドナルドやスターバックスコーヒーなども導入している。「リクルート」の調査では57.1%の人が経験している。ただ、セルフシステムへの賛否は分かれていて、「大きな声で店員を呼んだりしないのでいい」「周囲を気にせず頼める」と歓迎派がいる一方、「QRコードを読み込むのが面倒」「店員さんに相談しながら注文を決めたい」というイライラ派も少なくない。
「AERA」(2025年3月24日号)には、「俺のギガに”タダ乗り”しやがって」と憤然としている男性が紹介されている。たしかに、モバイルオーダーはバッテリーも通信費も客持ちだ。バッテリー切れ寸前だとか、ギガを使いすぎているときなどはヒヤヒヤするという客は少なくない。
しかし、店にとっては注文を聞いたり、勘定の計算(モバイルオーダーは自動でできる)に人手を取られずに済むのでメリットは大きい。最近、モバイルオーダーを導入した都内の居酒屋の店長は、「お客さんとのトラブルが減った」という。「注文の勘違いでもめることは多いのですが、スマホはオーダーの履歴が残るから、トラブルになりようがない。助かりますよ」と話す。
人手不足が進む昨今、これからモバイルオーダーシステムを導入する店が増えるのは間違いない。家電・システムメーカーは売り込みに必死で、NECは専門サイトも展開している。
回転すし店はほとんどセルフオーダーだが、いずれ老舗すし店なんかにも導入されて、おやじさんが「次、なに握りましょうか?」と聞くと、カウンターの客は「そうだねえ」なんていいながらスマホをピッとやって、「これお願いします」「へいっ!」なんていうのは、嫌だなあ。
(シニアエディター 関口一喜)