コメの価格が高騰する中、農家の倉庫などからコメが盗まれる被害が各地で相次いでいる。
茨城県内では4月末までに14件確認され、昨年1年間(25件)の半数を超えている。一度に400キロ以上盗まれたケースもある。警察は売りさばく目的で盗んだ可能性もあるとみて捜査。施錠の徹底や防犯カメラの設置など対策も呼びかけている。
「量も多くショックも大きい。こんなことはやめてほしい」。稲作が盛んな茨城県筑西市の男性(73)は怒りをにじませる。被害に気づいたのは4月19日。自宅敷地内の倉庫にあるコメ用の保冷庫から約30キロ入りのコシヒカリの玄米14袋が消えていた。
家族で食べる約1年半分の量で、かけたはずの保冷庫の鍵は開けられていた。男性は被害に憤りつつ、「こんなに大量にどうやって持ち去ったのか」と首をかしげる。男性宅を含め、近隣の4軒が被害に遭っていた。
県警によると、今年に入り被害は少なくとも7市で14件発生し、総量は計約4・5トンに上る。車を使った複数人による犯行とみられ、不審な人物や車両を目撃したら110番するなど防犯メールで注意を呼びかけている。
日本有数のコメどころ、新潟県では例年、新米が出回り始める秋口に狙われる傾向にあったが、今年は2月以降に4件(計540キロ)と、昨年と同数の被害届があった。県警幹部は「コメ不足と価格高騰を受けて、売却したり、自分で食べたりするために盗んだ可能性がある」と指摘する。
被害は西日本にも広がっている。岡山県警によると、今年に入り、岡山市などで少なくとも5件の被害が発生。いずれも民家の倉庫から計約2トンが盗まれた。今月1日には、奈良県警が奈良市内の倉庫から約255万円相当の玄米132袋を盗んだ疑いで、無職の男(30)を逮捕した。生活に困り、販売目的で盗んだと供述したという。
農家側の対策が窃盗犯の逮捕につながったケースもある。青森市で3月、市内の倉庫に侵入して玄米2袋(計60キロ)を盗んだ疑いで男(37)が逮捕された事件では、盗難対策として米袋に位置情報を発信する電子機器を取り付けていたこともあり、男の特定につながった。
青森県警生活安全企画課は「位置を把握できる電子機器は盗難対策に有効。倉庫の施錠や防犯カメラの設置など、基本的な対策も進めてほしい」としている。