大盛況を見せている大阪万博。開催地近くには、府民の血税を闇に葬った男が運営していたホテルがあった。恐るべき「金銭トラブル」に迫る。
前編記事『大阪万博からすぐ「さきしまコスモタワー」が詐欺同然の手口で落札…!?「血税26億円」をドブに捨てた維新・橋下徹時代から続く「恐るべき金銭トラブル」』より続く。
コスモタワーに関する誉田氏の契約については、不可解な点が他にもある。
’17年、テナントの入札を勝ち取ったのは、誉田氏の息子が社長を務める自転車販売の会社と、大阪の建設会社の2社だった。だが、入居が決定すると、諸々の権利を別の会社に譲渡してしまう。
譲渡先は、誉田氏が新しく設立した「さきしまコスモタワーホテル開発」だ。この新会社は実績や資産、担保すらないペーパーカンパニーだったのだ。なぜ、こんないわくつきの人物と大阪府は賃貸契約を結び、ホテル事業を任せてしまったのか。事情をよく知る関係者はこう明かす。
「コスモタワーにテナントが入らず大阪府は焦っていた。そんなときホテル運営に名乗り出た誉田氏は救世主のような存在でした。だが実は、理由はそれだけではありません。維新のある大物が、誉田氏をゴリ押ししたという噂もあるのです」
大阪府と誉田氏の会社の裁判は昨年6月に高裁判決が下っており、誉田氏には「フロアの明け渡し」と「賃料など26億円の支払い」が言い渡されている。しかし、府は大部分を誉田氏から回収できていない。さらに誉田氏は差し押さえを逃れるために資産隠しをした疑いで昨年8月に逮捕(現在は執行猶予中)。今年1月には会社が破産開始決定を受けたことがわかった。
誉田氏は最初からコスモタワーの賃料を踏み倒すつもりだったのか。それを聞くべく、「誉田が韓国にいる」という情報を入手し、現地へ飛んだのが前編冒頭の場面だ。
誉田氏は午後8時過ぎから何時間も賭けを繰り返していた。そして深夜1時半、ついに軍資金が尽きたのか誉田氏はカジノを出る。その瞬間を逃さず、筆者は声をかけた。
「なぜ破産したのにカジノで豪遊しているんですか?」
少し驚いたような表情を浮かべながら彼はこう答えた。
「カネは人から借りたんや」
破産者に何千万円も貸す人間がいるだろうか。しかも、用途はギャンブルである。さらに誉田氏は薄ら笑いを浮かべて、こう言い放った。
「知り合いをたくさんカジノに紹介してるんや。奴らが負けたカネのバックでカジノ側から俺の懐に入る。それがカジノで遊ぶ資金になるんや」
ならば、その「利益」を大阪府や債権者に返すべきではないか。その問いには無言を貫くばかり。滞納の理由について聞くと「大阪府との間で、家賃よりも銀行の返済を優先させても良いという取り決めをしてたんや」とにべもない。
筆者はさらに、大阪府と賃貸契約に至った経緯について問いただした。ペーパーカンパニーで契約できた理由について、誉田氏はこう語った。
「契約のときに、『俺の会社で入札したい』と話したら、大阪府の担当者は『実績がない会社では議会で突っ込まれる。後で変更してもええから、名義だけ「ちゃんとした会社」にしてくれ』って言ったんや。完全に出来レースやで」
さらに、契約の「舞台裏」まで暴露し始めた。
「あれ(さきしまコスモタワーホテル)の件は維新の松井(一郎)さんから声がかかったんや。あのビル、府が85億円で買うたことで『不当に高い金額で買った』と住民から監査請求が出て問題になってな。入居率は低いままで賃料収入も少ない。それで困って俺に声がかかった。そもそもは維新からの依頼やったんや」
当時、松井氏が代表を務めていた日本維新の会に問い合わせてみたところ、「松井一郎氏が誉田氏に入居を持ちかけた事実はございません」と回答した。
ホテル開業と時を同じくして府知事に就いた吉村氏だが、前任者の松井氏がかかわった金銭トラブルを解決する動きは見えてこない。
それどころか、元経営者はカジノで放蕩の限りを尽くしているばかり。こうした状況を放置し続けることは、「血税をドブに捨てている」との誹りを免れないのではないか。
吉村氏に取材を申し込んだところ、府の庁舎管理課から以下のような回答が届いた。
「(誉田氏との契約について)当時の対応としては問題があったとは考えておりません。
さきしまコスモタワーホテルに関する未払金につきましては、全額回収に向けて、あらゆる法的措置を講じながら引き続き対応してまいります」
万博で盛り上がる夢洲の隣で、いまや廃墟のようにそびえ立つ「さきしまコスモタワー」。その一角には、破産したホテルの看板がいまも虚しく残されている。
「週刊現代」2025年5月12日号より
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