政権発足から半年、少数与党の舵取りは難航し、支持率も低迷する石破茂・首相は焦りの色を隠せないでいる。このままいけば、夏の参院選で自民大敗は必至。そうしたなか、永田町では石破首相が「衆参W(ダブル)選挙」という大博打に打って出るとの情報が駆け巡っている。
【議席予測】衆院選「自公過半数割れ」で起こる政界再編シミュレーション
選挙情勢分析に定評がある政治ジャーナリスト・野上忠興氏は「ダブル選になれば自公政権は衆参ともに過半数を失い、石破退陣は決定的になる」と指摘する。
本誌・週刊ポストは野上氏の協力で参院選の詳細なシミュレーションを行った。野上氏の予測結果は、「自民34議席」「公明11議席」の大惨敗となった。勝敗の鍵を握る32の1人区で自民は最大24敗を喫するドミノ現象が予想される。比例代表の議席も過去最低の13議席と、非改選を合わせて自公は121議席前後(自民系無所属含む)まで減らし、参院過半数割れとなる可能性が高い。第3回では、衆参ダブル選後の政局を予測する。【全3回の第3回。第1回から読む】
ダブル選挙では、「こうした参院選の自民大敗の情勢が衆院にそのまま波及する」(野上氏)ことになる。
「自民党は衆院でも現在の191議席から170~180議席程度まで減らす可能性がある。公明党も2~4議席前後減らして自公で190~200議席程度。そうなると過半数に30~40議席も足りない。衆参ともに過半数割れのうえ、そこまで議席が減れば法案ごとに野党の協力を求める部分連合では政権運営できません。石破首相の退陣後、政権の組み替えに進むことになる」(同前)
では、ダブル選挙後にどんな政党の組み合わせの政権ができるのか。
別掲の図は、衆参ダブル選挙後の衆院の各党予想議席と、連立政権の政党組み合わせをシミュレーションしたものだ。
「自民、公明+国民民主の連立政権」なら衆参で過半数に達し、「自民、公明+維新の連立政権」だと衆参で過半数となるかギリギリの水準となる。「立憲、国民、維新、れいわ4党による非自民連合政権」も成立し得るが、参院は少数与党となる。もちろん、「自民+立憲の大連立政権」なら衆参で安定多数だが、各勢力はどう動くことになるか。野上氏が語る。
「キャスティングボートを握るのは国民民主、維新、れいわになる。立憲を中心にその4党がまとまれば共産党抜きの非自民連合政権も数字のうえでは可能だが、その場合、立憲の野田代表が総理になるつもりなら話はまとまらないでしょう。国民民主の玉木雄一郎代表を首相に担ぐといった必要がある。玉木氏との連立は自公も望んでいるからです。
自公は参院で過半数を割れば、まず維新に連立参加を持ちかけるでしょうが、断わられれば政権を失わないために“玉木首相”を条件に国民民主の連立参加を持ちかけることが考えられます。野田氏が首相になるチャンスがあるのは、玉木氏に断わられた自公が他に選択肢がなくなって、野田首相を担いで大連立に走るケースではないか。自民党が社会党の総理を担いだ村山内閣のパターンです」
自民党参院のベテラン議員も政権組み替えをにらんだ言い方をする。
「選挙後に石破総理は退陣し、総裁選を行なうことになる。しかし、新総裁がそのまま次の総理になれるとは思っていない。
自民党が政権を続けるには、維新、国民民主、立憲のどれかに連立を組んでもらうしかない。玉木氏を首相に連立を組むつもりなら減税に前向きな総裁、野田首相で大連立にするなら財政再建を重視する財務省寄りの総裁、といった具合に、“連立相手を選ぶための総裁選”になるだろう」
今夏の選挙戦を経て、ニッポン政界の景色が大きく塗り替えられることは確かだ。
(第1回から読む)
●レポート/野上忠興(政治ジャーナリスト)と本誌・週刊ポスト取材班
※週刊ポスト2025年4月18・25日号