変わった魚、入荷しました――。
三重県尾鷲市の老舗鮮魚店が、一般には流通しない深海魚などの販売を始めた。売り物にならず処分されていた魚介類を有効活用しようと、今年初めからX(旧ツイッター)を通じて不定期で告知している。毎回、1時間以内に買い手が決まるほどの人気を呼び、ネットで話題となっている。(根岸詠子)
創業100年以上という鮮魚店「はし佐商店」が、仕入れた魚の中に紛れていた「売り物にならない魚」を販売している。
アンコウの仲間で深海に生息するアカグツ、黄色と黒のしま模様をしたカゴカキダイ、下あごに2本のひげを生やしたヒメジ……。一般には知られていない魚を詰め合わせ、箱代・送料込みで1セット2500円前後。店の利益はほとんどないという。
これまで約20セットを販売し、Xに投稿して4分で買い手が現れたこともあった。海洋生物の研究者から「標本にしたい」との注文も。Xには「色々珍しい魚があり、見てて楽しい」「意外と美味(おい)しいらしいとか」など様々なコメントが寄せられている。
尾鷲魚市場では、食用として流通する魚介類だけで年間200種類以上が水揚げされる。それ以外にも、漁網にかかった様々な魚が水揚げされる。
はし佐商店の「新事業」の仕掛け人は、広報を担当する橋本萌さん(27)。社長の正さん(79)の孫で、約1年半前から家業を手伝っている。
橋本さんは連日、仕入れた魚の写真をXに投稿してきた。昨年12月、魚の中に、赤くて丸い頭のアカグツと、鮮やかなオレンジ色のヒトデが紛れ込んでいるのに気づいた。「クリスマスの飾りみたいで面白い」と投稿したところ、「買いたい」とのコメントが付いた。
アカグツもヒトデも、ずっと養殖マダイの餌にしたり、廃棄したりしてきた。正さんから「そんなもん売れるんか」と言われたが、「他にも欲しい人がいるのでは」と、今年1月にアカグツなどを詰め合わせて「変わった魚いりませんか」とXで呼びかけた。数十分で買い手が付いた。
それからは、珍しい魚は大事に店に持ち帰るよう仕入れ担当者に頼んでいる。
「変わった魚」の入荷時期は未定だが、入荷したらはし佐商店のXで知らせる。橋本さんは「魚に興味を持ち、もっと食べようと思ってもらえたらうれしい。尾鷲のPRにもなれば」と話している。