2023年4月、神戸市のラーメン店において店主で6代目山口組系の組長が拳銃で撃たれて殺害された事件、いわゆる「ラーメン組長射殺事件」から2年が経過した。敵対組織の幹部が組織犯罪処罰法の殺人などの罪で起訴されたが、事件の真相はどこまで明らかになっているのか。現状をレポートする。
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2023年4月、6代目山口組3代目弘道会傘下・湊興業の余嶋学組長が射殺された事件で、神戸地検は組織犯罪処罰法違反(組織的な殺人)と銃刀法違反の罪で絆會ナンバー2の金成行若頭ら3名を起訴している。事件が通常の暴力団の抗争事件以上に注目を集めた理由の一つは、余嶋組長がラーメン店店主という顔を持っていたことにあった。
「捜査当局は、金若頭ら組員が役割を分担するなどして組織として行動し、余嶋組長を射殺したとしています。単なる殺人罪ではなく、組織的な殺人の罪での起訴となっているのはそういう理由からですね」
と、担当記者。
金若頭は長野県で2020年に6代目山口組傘下組織に移籍した弟分を銃撃した殺人未遂罪や、2022年に水戸市で6代目山口組系組織の幹部を射殺した殺人罪などで起訴された。一方、「被害者」側の湊興業は2代目を小林重貴組長が継ぎ、本部は石川県金沢市に置かれている。
余嶋組長は神戸エリアで唯一の3代目弘道会の直参トップという立場ではあったが、子分を多く抱えるような親分ではなかった。さらに借金を抱えている身であり上納を頼める手下もおらず、直参に求められる会費の納入もままならず、そのために自ら厨房に入ってラーメンを作り続ける他なかったとされた。
「そういった背景については割と広く知られていたことでしょうし、ある程度内偵して行動範囲を分析していれば余嶋組長をラーメン店で襲うことはそれほど難しいことではなかったかもしれません」(同)
余嶋組長が狙われた理由については事件発生当初から様々に取り沙汰されたが、実際のところはどうなのだろうか。
「これは現時点では明かされておらず、公判で金若頭が具体的に語るか否かにかかっているとみられています。普通に考えれば、抗争相手である山口組の狙いやすいところをターゲットにしたということになるのでしょう」(同)
ところが、現時点で金若頭をめぐる公判はスタートしていない。絆會の織田絆誠会長の関与を当局が認定し、刑事責任を問うことを念頭に置いているとの情報が流れたこともあったが、そういう展開にはなっていない。
ただ、この一件が絆會に与える影響は小さくない、と語るのは元山口組系義竜会会長の竹垣悟氏(現在は、NPO法人「五仁會」を主宰)だ。
「少なくとも、ナンバー2である金若頭の判決が確定するまで織田会長は組織を維持し続けるのではないでしょうか。若い衆に対しては“好きなところに行け”などと伝えていると聞いていますが、会長自身の心づもりとしては、たとえ組織が自分ひとりになっても解散はしないということなのかもしれません」(同)
6代目山口組は今年4月の一方的な抗争終結宣言の後、傘下の組織に対して、絆會を含めた対立組織のことは「構うな」と号令をかけたとされる。これを踏まえれば、すでに構成員が2桁台となったとされる絆會は自ら運命を決める他なく、そこにこの事件の公判も影響する、ということになるのかもしれない。
デイリー新潮編集部