一部の来館者によるマナー違反行為により、今年2月に惜しくも閉館となった、新潟県三島郡出雲崎町の「出雲崎レトロミュージアム」。だが、わずか2ヶ月後となる4月4日にリニューアルオープンが決まったという。生まれ変わったミュージアムの見どころについて、館長の中野賢一さんに再び話を聞いた。
【画像】「またトラブルになってもいけませんので」と館長が語るリニューアル後に新たに導入される「入館同意書」
昭和のレトロなおもちゃを数千点以上展示する新潟県三島郡出雲崎町の「出雲崎レトロミュージアム」。2023年12月に開館後、多くの来館者でにぎわっていたが、展示しているおもちゃを壊すなど一部の来館者によるマナー違反行為があり、今年の2月3日に惜しまれつつも閉館した。
それからわずか2ヶ月後となる4月4日に、リニューアルオープンすることになったというが、新しく生まれ変わったミュージアムは一体どんなものになっているのだろうか。
――4月4日にリニューアルオープンされるということですが、どんな展示内容になっているのでしょうか。
中野賢一館長(以下、同) 以前、岐阜県高山市で運営していた「飛騨高山レトロミュージアム」(2018年11月開館)と同じように、建物の中に昭和の街並みを再現してお客さんに雰囲気を味わってもらいたい、という思いがあり、展示内容は9割が今までとはまったく違うものになっています。
飛騨高山のときに、昭和当時の小学校を再現した展示が好評だったので、今回も同様の展示を作りました。飛騨高山では実際に学校給食風の食事を提供していたのですが、ここでは食材が手に入らないので、雰囲気だけでも味わってもらえたらと思います。
――改装をおひとりで進めたということですが、かなり大変だったのではないでしょうか?
飛騨高山のミュージアムを作ったときも、自分で工事を行ないました。そのときはヘルプで大工さんにお願いしましたが、今回は一人で作業しました。おもちゃの展示用ショーケースをなくして、もともとあった展示台を壁にしたり、そこに珪藻土を塗ったり、波トタンを張ったりして、うまく活用しました。
SNSのフォロワーさんなどが少しお手伝いに来てくれて、ポスターを貼ってもらったりしましたね。工事で体がボロボロなので、オープン前に日帰り温泉にでも行きたいです(笑)。
――以前展示していたおもちゃは捨てたのでしょうか?
2月の閉館のときに、展示してあるおもちゃは欲しい方のもとに行ってほしいと思い、売店コーナーを使っておもちゃの販売会を行ないました。ウルトラマンや仮面ライダーが好きな方はたくさんいるので、6~7割がその方たちに売れましたね。あとはあえて残しました。
閉館前は、入館してすぐの所にある大きなショーケースにソフビを置いていたのですが、リニューアル後はそこに仮面ライダーのおもちゃだけを入れたり、昭和のおもちゃ屋さんを作ったりしました。おもちゃに愛着があって来られていたお客さんも多いので、仮面ライダーも昭和の時代までのものは残してあります。
――では廃棄処分になったものはないということでしょうか?
そうですね。子どもたちが遊んでいたおもちゃなどは、福祉関係の施設に寄付しました。児童館とかに持っていけば子どもたちも遊びますので。
――閉館に至った要因として、一部のお客さんのマナー違反行為がありました。今回のリニューアルにあたって「入館同意書」を作成したということですが、どんな内容なのでしょうか?
昭和をテーマにした博物館は全国にあり、館内に昭和のおもちゃ屋や駄菓子屋などを再現したブースを作っているところもあります。ただ、一切その中に入れない構造になっていることが多いんです。
しかし「飛騨高山レトロミュージアム」のときもそうでしたが、私のミュージアムでは侵入防止の柵を一切設置しておらず、展示の中まで入って、写真を撮ったりできるようにしてあります。
ただ、子ども目線の高さだと、ポスターや看板などいろんなものがあります。お子さんはどうしても興味があるものには触ってしまうので、ポスターを破いたり、ホーロー看板で指を切ったりしてもいけないと考え、今回から「入館同意書」を作成しました。
中学生以下のお子さんは、実際に遊べるゲーム以外は一切触らないように、親の方が気をつけて見守るようにお願いします、という内容です。7個くらいの質問項目を設け、「こういうことを守っていただけますか/はい・いいえ」とふうにお客さんに記入していただく形になっています。
かなり厳しい内容ではありますが、またトラブルになってもいけませんので。
――でも、それさえ守れば存分に楽しめると。
そうです。展示内容には貴重なものがたくさんありますが、そこは大人が分かっているので。高校生以上のお客さんに関しては、入口に注意事項が書いてあるので、それだけ読んでもらって入館していただくという形です。その代わり、展示物については扱いに気をつけてください、とお願いしています。
――小さいお子さんが実際に遊べるゲームには何がありますか?
せめてお子さんが触って遊べるものをと思い、縁日コーナーを用意しました。射的とかスマートボールなど、昭和の頃の縁日にあったような遊びを置いています。当時のままのものですね。
――リニューアルにあたってクラウドファンディングを実施したとのことですが、どういう経緯だったのでしょうか?
私が取引している金融機関がたまたまCAMPFIRE(クラウドファンディングのプラットホーム)さんと提携していて、そこの支店長から「CAMPFIREから連絡があって、うちも提携してるし、せっかくだからやりませんか」という話があったんです。閉館のニュースを見ていたみたいで。
私自身、クラウドファンディングをやるつもりはなかったし、やり方がよく分からなかったけど、まあやってみるかと。2月に閉館したときに来てくださったお客さんや、たくさんの方が支援してくださって、200万円近くも集まりました。
――今回は大幅なリニューアルということで、資金的にもかなりかかったのではないでしょうか?
本来、工事業者に頼むと、この規模だと1500万円くらいかかるんです。今回は私ひとりで作業したのでその費用がかかっていないのと、もともとここにあった展示台を使っているので、あとは屋根を作るとか、そういう細かい部分の材料をホームセンターで買ってきて、実際の工事費としては50万円くらいしかかかっていません。
展示品は、もともと私が持っていて新潟の倉庫に保管してあったものなので、そこから毎日車で運び出しました。
CAMPFIREのサイトにも書いてありましたが、以前、年間2百数十万円分くらい展示品を壊されてしまったので、ご支援いただいて余った資金はその補填に使わせていただこうと思います。
――入館料が1000円ということですが、安く感じます。
以前の入館料は600円でした。閉館時に全国の博物館館長さんが遊びに見えて、そのときに私がリニューアル後のイメージを描いた紙を見せて「飛騨高山のときみたいにするんです」と言ったら、「最低でも1000円に上げたほうがいいですよ」と言われて。それで一応1000円にしました(笑)。
ただ、うちの場合は駄菓子や雑貨の販売をやっていたり、中に有料のゲームや自動販売機なども置いていて、そういうものの売上があるので、入館料は最低限でいいかなと。
自分が毎月ご飯だけ食べられれば。なるべくたくさんの人に来ていただけたらと思います。
――どんなお客さんに、どんなふうに楽しんでもらいたいですか?
役場の方とか何人かすでに見に来られましたが、「入った瞬間に昭和にタイムスリップしたみたい」と言われます。ミュージアムのXやインスタを見てもらえれば分かると思いますが、建物に入った瞬間に昭和の街がある、というつくりになっています。
建物ひとつひとつに、昭和当時のカラフルでポップなホーロー看板が全部で300枚くらい付いていて、そういうものを見ていただきながら、昭和の時代にタイムスリップしたような感覚で楽しんでもらえればと思います。なるべく臨場感を出すためにガラスの仕切りも入れていませんので、リアルに観賞してもらえると思います。
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班