全人口の約20人から40人に1人いるとも言われている「自閉スペクトラム症」。人とのコミュニケーションが苦手だったり、変化に対して不安が強かったり…人によって症状は様々です。「自閉スペクトラム症」と診断された中学1年生の女の子、はるかさん。学校生活に悩みながらも、「先生になりたい」という夢を持って勉強に励む日々を追いました。(日本テレビ調査報道班・前田怜佳)■中学1年生に突きつけられた「退学勧告」「中1です。中学校から退学勧告をされました。」

去年7月、日本テレビに中学1年生の女の子、はるかさん本人からメッセージが届きました。当時、神奈川県の私立中学校に通っていたはるかさん。小学生のころいじめにあい、地元の公立中学校ではなく私立中学校に進学しました。しかし、学校に行きづらい日が増え、授業についていけなくなるように。テストで0点をとったとき、クラス全員の前で先生から点数を公開されるなど、つらい経験が増えたといいます。はるかさん「不登校気味で体が重い時があり、だんだん授業についていけなくなりました。学校で悩みを聞いてほしいと感じて先生に言いましたが、断られました。」去年6月には、中学校から飛び出したまま帰ってこず。中学校が警察に連絡し、保護されました。そして去年7月、中学校からはるかさんの自宅に届いたのは「退学勧告書」。”授業の中断による妨害行為”などが理由として、応じない場合は退学処分となると書かれていました。はるかさんの母親「娘が学校から飛び出したのは、体育の先生から何度もラジオ体操をするよう言われて怖くなったことが原因でした。困ったことやいやなことがあった時に、人に伝えることが苦手で、しんどくなったんだと思います。」■小学生のころから感じていた”生きづらさ”小学生のころから、”生きづらさ”を抱えていたというはるかさん。10歳のころ、児童精神科で「情緒障害」と診断されたといいます。はるかさん「居場所がなくなったり、いっぱいいっぱいになったりすると外に出たくなるんです。いろんなことを考え始めると、気持ちが落ち着かなくなってしまうんです。」私立中学校では、好きな授業や好きな先生もいたというはるかさん。学校側と退学について話し合う場では、退学の理由を聞いて悔しくて涙が出たといいます。今のまま、私立中学校のルールや決まりの中で生活を続けるのは難しいと感じました。■転校するも入院…「自閉スペクトラム症」と診断両親と相談し、私立中学校は退学することを決断。去年9月から公立中学校で半日通学を始めました。最初は、友人や先生とも楽しく過ごすことができていたといいますが…はるかさん「授業で疲れたら休み時間に遠いところでゆっくりしたくて。昇降口とか外が見えるところに行きました。そうしたら学校を飛び出すと思われるのか、先生が3、4人着いてきて気持ちが焦ってしまうんです。」先生とのコミュニケーションがうまくとれない日々が続き、去年10月、中学校で自らアルコール消毒液を口にふくんでしまい、救急搬送されました。体調に問題はありませんでしたが、その後、学校を飛び出すこともあり、2週間入院することに。このとき、「自閉スペクトラム症」と診断を受けました。はるかさんの母親「周囲の人に、はるかを理解してもらうことは難しいことが多いです。また、はるかにとって必要な支援がどこにあるのかが分からなくて…自分でも勉強しながら支援を探す日々を過ごしています。」■「自宅以外にも安心できる場所を」はるかさんは現在、塾で勉強を進めながら、週1回、地元の放課後等デイサービスにも通っています。放課後等デイサービスとは、人とのコミュニケーションを苦手と感じたり、学校の生活に不安を感じたりしている子どもたちをサポート・支援する施設。はるかさんは、好きなアーティストの”推し活”グッズを作りながら、学校での過ごし方を一緒に考えています。こどもサポート教室「きらり」 田代菜穂さん「1月に通い始めた当初、はるかさんはとても緊張している様子もあったので『好きなことからやろう』ということで”推し活”グッズ作りをしています。まずは、コミュニケーションをとった上で信頼関係を築くところから始めました。今は、はるかさんの『学校へ行きたい、勉強したい』という思いを大切にしながら、学校で急に緊張してしまったり困ったりした時にどうやって対処するかを一緒に考えています。」放課後等デイサービスはひとりひとりの苦手に合わせた支援ができますが、特に小学校高学年以降の支援が必要な子どもたちには、まだこうした支援があることが浸透していないといいます。こどもサポート教室「きらり」 小林護さん「幼児期くらいまでは、健診で支援につながる場合が多いです。一方で、高学年の小学生や中学生になると、これまでなんとなく学校でも過ごせてしまっているので、お子さんたちが支援につながりにくいんです。なるべく早く支援につながるのが一番ですが、支援が必要な子どもたちはまだまだいます。不登校の子どもにとって、外とのつながりや家庭とは違った安心できる場所になってくれればと思います。」■将来の夢は「学校の先生」4月からは、別の公立中学校に通い始めるというはるかさん。将来は学校の先生になりたいといいます。はるかさん「今の自分の気持ちがわかる先生がいたらいいなと思って。気持ちをわかってあげて、自分がしてほしかった対応ができたらって思います。悩んだときに受け止めてほしいし、これから学校に慣れて落ち着いて通えるようになりたいです。行きたい高校があるので、まずは高校受験をして、大学まで進学できるように頑張ります。」
全人口の約20人から40人に1人いるとも言われている「自閉スペクトラム症」。人とのコミュニケーションが苦手だったり、変化に対して不安が強かったり…人によって症状は様々です。「自閉スペクトラム症」と診断された中学1年生の女の子、はるかさん。学校生活に悩みながらも、「先生になりたい」という夢を持って勉強に励む日々を追いました。(日本テレビ調査報道班・前田怜佳)
「中1です。中学校から退学勧告をされました。」
去年7月、日本テレビに中学1年生の女の子、はるかさん本人からメッセージが届きました。
当時、神奈川県の私立中学校に通っていたはるかさん。小学生のころいじめにあい、地元の公立中学校ではなく私立中学校に進学しました。しかし、学校に行きづらい日が増え、授業についていけなくなるように。テストで0点をとったとき、クラス全員の前で先生から点数を公開されるなど、つらい経験が増えたといいます。
はるかさん「不登校気味で体が重い時があり、だんだん授業についていけなくなりました。学校で悩みを聞いてほしいと感じて先生に言いましたが、断られました。」
去年6月には、中学校から飛び出したまま帰ってこず。中学校が警察に連絡し、保護されました。そして去年7月、中学校からはるかさんの自宅に届いたのは「退学勧告書」。”授業の中断による妨害行為”などが理由として、応じない場合は退学処分となると書かれていました。
はるかさんの母親「娘が学校から飛び出したのは、体育の先生から何度もラジオ体操をするよう言われて怖くなったことが原因でした。困ったことやいやなことがあった時に、人に伝えることが苦手で、しんどくなったんだと思います。」
小学生のころから、”生きづらさ”を抱えていたというはるかさん。10歳のころ、児童精神科で「情緒障害」と診断されたといいます。
はるかさん「居場所がなくなったり、いっぱいいっぱいになったりすると外に出たくなるんです。いろんなことを考え始めると、気持ちが落ち着かなくなってしまうんです。」
私立中学校では、好きな授業や好きな先生もいたというはるかさん。学校側と退学について話し合う場では、退学の理由を聞いて悔しくて涙が出たといいます。今のまま、私立中学校のルールや決まりの中で生活を続けるのは難しいと感じました。
両親と相談し、私立中学校は退学することを決断。去年9月から公立中学校で半日通学を始めました。最初は、友人や先生とも楽しく過ごすことができていたといいますが…
はるかさん「授業で疲れたら休み時間に遠いところでゆっくりしたくて。昇降口とか外が見えるところに行きました。そうしたら学校を飛び出すと思われるのか、先生が3、4人着いてきて気持ちが焦ってしまうんです。」
先生とのコミュニケーションがうまくとれない日々が続き、去年10月、中学校で自らアルコール消毒液を口にふくんでしまい、救急搬送されました。体調に問題はありませんでしたが、その後、学校を飛び出すこともあり、2週間入院することに。このとき、「自閉スペクトラム症」と診断を受けました。
はるかさんの母親「周囲の人に、はるかを理解してもらうことは難しいことが多いです。また、はるかにとって必要な支援がどこにあるのかが分からなくて…自分でも勉強しながら支援を探す日々を過ごしています。」
はるかさんは現在、塾で勉強を進めながら、週1回、地元の放課後等デイサービスにも通っています。放課後等デイサービスとは、人とのコミュニケーションを苦手と感じたり、学校の生活に不安を感じたりしている子どもたちをサポート・支援する施設。はるかさんは、好きなアーティストの”推し活”グッズを作りながら、学校での過ごし方を一緒に考えています。
こどもサポート教室「きらり」 田代菜穂さん「1月に通い始めた当初、はるかさんはとても緊張している様子もあったので『好きなことからやろう』ということで”推し活”グッズ作りをしています。まずは、コミュニケーションをとった上で信頼関係を築くところから始めました。今は、はるかさんの『学校へ行きたい、勉強したい』という思いを大切にしながら、学校で急に緊張してしまったり困ったりした時にどうやって対処するかを一緒に考えています。」
放課後等デイサービスはひとりひとりの苦手に合わせた支援ができますが、特に小学校高学年以降の支援が必要な子どもたちには、まだこうした支援があることが浸透していないといいます。
こどもサポート教室「きらり」 小林護さん「幼児期くらいまでは、健診で支援につながる場合が多いです。一方で、高学年の小学生や中学生になると、これまでなんとなく学校でも過ごせてしまっているので、お子さんたちが支援につながりにくいんです。なるべく早く支援につながるのが一番ですが、支援が必要な子どもたちはまだまだいます。不登校の子どもにとって、外とのつながりや家庭とは違った安心できる場所になってくれればと思います。」
4月からは、別の公立中学校に通い始めるというはるかさん。将来は学校の先生になりたいといいます。
【みんなのギモン】身の回りの「怒り」や「ギモン」「不正」や「不祥事」。寄せられた情報などをもとに、日本テレビ報道局が「みんなのギモン」に応えるべく調査・取材してお伝えします。(日テレ調査報道プロジェクト)