ADHD(注意欠如・多動性障害)は、集中力の維持の難しさ・衝動的な行動・多動性が目立つなどの特徴を持つ発達障害の一つです。
その症状は子どもから大人まで幅広い年齢層にみられ、学業や仕事、人間関係に影響を及ぼすこともあります。
親として子どもの成長に不安を抱えることがある一方で、本人は自分の症状に気づきにくく、周囲との違いや困難を自覚しづらいことも少なくありません。
本記事では、ADHDの症状や診断基準などについてわかりやすく解説します。ADHDへの理解を深め、よりよい支援ができるような一助になれば幸いです。
監修医師:伊藤 有毅(柏メンタルクリニック)

注意力が散漫し集中できない(不注意)
落ち着きがなくじっとできない(多動性)
待つことが苦手なためすぐ行動してしまう(衝動性)
これらの症状は12歳より前からみられるため、日常生活において困難に直面する場面も少なくありません。場合によっては本人の自己肯定感が傷つくこともあり、保護者が子育てで悩みを抱えることもしばしばみられるでしょう。またADHDのほかに、うつ病・双極性障害・不安症などの精神疾患を伴っていたり、自閉症スペクトラム症・学習障害・チック症などの発達障害を伴っていることもあります。

幼児期:目立った不注意はほとんどないでしょう。じっとしているのが苦手なことはありますが、周囲の子と比べて目立つほどではありません。ただし、急に飛び出す・待てないなどの衝動性が注目されやすいでしょう。
小学生年代:この時期から不注意が目立ちはじめやすいです。連絡帳やノートがうまくとれない・忘れ物が多い・よそ見が多いなどが挙げられます。また、多動性も不注意同様にみられるようになり、授業中に立ち歩いたり、大声で話しかけるなどが挙げられます。衝動性では、軽はずみな行動がみられ、ルールが守れないことにより他者とのトラブルも多くなるのが特徴です。
中高生年代:ケアレスミスが多い・約束を忘れる・整理整頓ができないなど日常生活に支障をきたすような不注意が目立ちはじめます。授業中の離席は減りますが、落ち着いて授業が受けられない・じっとしているのが苦手という衝動性もみられます。衝動性は、感情的になりやすく、順番を待てないなどの症状が目立ちはじめるのが特徴です。このような症状から、反抗的になったり引きこもりがちになったりして、インターネットやゲームへの依存が高くなる可能性があります。

ADHDは、不注意や多動性・衝動性を主な特徴とする発達障害です。
学業や友人関係の困難さ、大人では仕事や対人関係など日常生活にも支障をきたしてしまうこともあります。
専門の医師による診断が必要で、治療方法には薬物療法のほかに作業療法士・言語聴覚士によるリハビリテーションが行われます。
また、大人のADHDでは同じ悩みを抱える自助グループへ参加することで抱えている問題を解決するヒントを見つけることができるかもしれません。
参考文献
参考3 定義と判断基準(試案)等|文部科学省
作業療法ガイドライン ADHD 0 版
注意欠如・多動症(ADHD)特性の理解