2月上旬。永田町・衆院議員会館内のカフェに、着物を来た恰幅のいい一人の男性の姿があった。バッジを付けた議員が来店すると声をかけ、こう名乗る。
【写真】「愛子さまのお相手候補」“賀陽宮”を名乗る活動家の名刺
「旧皇族の賀陽宮(かやのみや)と申します。最近、政治団体を立ち上げまして……」

「旧皇族」とは、戦後の1947年に皇室を離れた11宮家の人々のこと。2021年には、安定的皇位継承を議論する政府の有識者会議が皇族数の確保策として、旧皇族の男系男子を養子縁組で皇籍復帰させる案を提示するなど、近年、注目を集める存在だ。
「なかでも『賀陽宮』は別格です。現在、賀陽家を継ぐのは離脱時の当主だった恒憲王の孫にあたる正憲氏。正憲氏は天皇陛下と学習院初等科からのご学友です。天皇家の長女・愛子さま(23)と歳の近い2人の息子がおり、『愛子さまのお相手として最有力』だと取り沙汰されるなど、存在感を高めています」(宮内庁担当記者)
愛子さまとも“ニアミス”
「週刊文春」も今年1月2・9日号で、安倍晋三元首相がかつて「愛子さまに相応しい、Y染色体を持つ旧皇族の青年を探せ」と極秘で指示を出していたことを報じた。この指令を受けた杉田和博官房副長官(当時)が注目したのが、賀陽家の2人の息子だったのだ。
そんな名家がいま意外な場所で話題になっている。
「今年初めから“賀陽宮の末裔”という人物が、議員会館で与野党の国会議員に声をかけているのです」(政治部記者)

その人物は「賀陽健」(仮名)と名乗っているという。議員秘書が語る。
「彼はいつも着物姿で、目立つ。賀陽家の他、麗澤大学などを運営する学校法人の経営で知られる廣池家の縁者だとも名乗っていました。『賀陽』や『廣池』の名前を聞いて信用した代議士も多く、高市早苗元経済安保相も議員会館の事務所に招き入れていた。ただ、本当の旧皇族が自己紹介でわざわざ宮号を名乗るとは考えづらく、『本当に賀陽家の人間なのか』と困惑の声が広がっています」
健氏は議員に何を訴えているのか。SNSを見るとその一端が垣間見える。
〈(日本を)国際繁栄都市・国際宗教都市へ進化させなければなりません。繁栄する都市には、必ず宗教があります〉
〈西暦2020年頃から2037年頃にかけて、日本は現代のエルサレムとなり、世界のメッカとなります。この時期が、日本の黄金時代となるでしょう〉

その他の投稿によると、健氏は1987年生まれの38歳で、「神道協会 総理兼総裁」の肩書きを持つという。林芳正官房長官と写る写真もアップされていたほか、過去には、幸福の科学の書籍や教えを紹介する投稿も。さらに23年には、政治団体「富士山神上大愛神道菊栄豊国協会」を設立していた。

個性的な発信を行いながら、閣僚級議員に近づく健氏。賀陽家ではどのように受け止められているのか。現当主の正憲氏に取材を申し込むと、書面によるこんな返事が届いた。
「お尋ねの者は会ったことも話した事もなく、賀陽家の者として、認識していません。賀陽家として今いる者は6人のみです。賀陽家の者としてこちらが認識していない者が賀陽をかたり、あちらこちらに顔を出していることは、初めて知りました」

正憲氏だけでなく賀陽家の女性2人にも尋ねたが、揃って「親戚と認識していません」と答えるのだ。
健氏は賀陽を騙る“ニセ皇族”なのか――。だが、さらに取材を進めると、驚くべき事実が判明した。
3月26日(水)正午配信の「週刊文春 電子版」および3月27日(木)発売の「週刊文春」では、健氏の真の正体や、皇族との関係性、本人へのインタビューなどを詳報している。
(「週刊文春」編集部/週刊文春 2025年4月3日号)