※本稿は、真鍋佑介『一生目が見える人のすごい習慣』(扶桑社)の一部を再編集したものです。
眼鏡やコンタクトレンズは、近視や遠視、乱視などを矯正し、私たちの視生活をサポートしてくれる矯正器具です。視力矯正以外にも、度なしのカラーコンタクトもあり、おしゃれ目的で装用している人もいるでしょう。眼科に行かず、オンラインでコンタクトレンズを購入しているという人もいるのではないでしょうか。
ネットなどで気軽に買えること自体は便利です。ですが、眼科に行かなくても買えるから、眼科での定期検査が不要というわけでは決してありません。同じ種類のレンズを再購入するとしても、安全に使い続けるために定期検査を受け、目の状態を確認する必要があります。
実は、コンタクトレンズは高度管理医療機器に分類されるもので、透析機人工呼吸器と同じレベルの位置づけです。副作用が出た場合人体へのリスクが高いものとして考えられています。
コンタクトレンズは目に直接装着するため、不衛生に扱うと角膜に深刻なダメージを与え、重篤な後遺症を残して失明に近い状態にまで至ることがあります。このようなトラブルは20代の若い方に多く、本当に悲惨です。
コンタクトレンズは正しく使わないと角膜という部分に様々なトラブルを引き起こします。
角膜とは、目の表面、黒目の部分にあたる透明な膜で、外部の刺激や細菌、ウイルスなどの侵入から目を守るバリア機能も担っています。しかし、ここにコンタクトレンズがかぶさってしまうと、角膜は酸素不足に陥ってしまいます。
コンタクトレンズの装用時間は1日12時間が限度です。長期間不適切に使用すると、角膜が酸素不足になって死滅していきます。特に角膜の一番内側の層にある角膜内皮細胞が減ってしまい、徐々に角膜が濁っていきます。この細胞は角膜全体に栄養を与えて代謝を促して、角膜の透明性を維持するために必要不可欠なのです。
細胞が死滅すると角膜はぶよぶよに膨れ上がって、失明に近いほど白濁してしまいます。こうなってしまうと角膜移植でしか治せません。
コンタクトレンズを毎日使うなら酸素透過性の良い「シリコンハイドロゲル」を使ったものにしてください。
問題はカラコンのほうです。ネットで買える安価なカラコンには酸素透過性の低い一昔前のHEMA素材のものがあり、さらに色素が表面にプリントされているので、まぶたに触れて炎症を起こすこともあります。
ネットで購入可能な安価なカラコンは、十分注意が必要です。カラコンを購入されるときは国の認可を得た高度管理医療機器承認番号の記載のある1dayのものを選ぶようにしてください。
角膜が酸素不足になって抵抗力が弱まると、感染症にかかる確率も上がってしまいます。角膜が感染症を起こすと角膜炎となり、それが進行すると角膜潰瘍(かいよう)という、角膜の表面が深くえぐれてしまった状態になってしまいます。
汚れた手でレンズや目を触ったり、レンズケースを不潔にしていたりすると、レンズに細菌や真菌が付着し、角膜に感染するリスクが高まります。
他にも、水道水でレンズやレンズケースを洗うことは、アカントアメーバなどの微生物による感染のリスクがあるため、絶対に避けなければなりません。
アメーバ感染は手強く、抗生剤に反応しにくいため治療が一筋縄ではいきません。あっという間に感染が広がり、長く入院が必要になるケースがありますし、場合によっては角膜移植が必要になることもあります。このようなトラブルは、残念ながら若い人に多い傾向があります。
これらは不潔なレンズケースの中で増殖します。ケースに入れて保管する場合、保存液はすべて捨て、保存液でケースの内外を洗い、ケースはしっかりと乾かす。そのうえで、1.5~3カ月に一度はケースを交換してください。
酸素不足、感染症リスクを考えると、コンタクトレンズをつけたまま寝てしまうのは絶対に避けてください。30分程度のうたた寝でもダメです。目をつむると涙の量が減ってしまい、菌が繁殖しやすい状態になってしまいます。
白目から黒目に向かって血管が伸びてきている充血状態を「角膜パンヌス」と言いますが、強い酸欠状態のサインです。黒目の周りが充血していたり、コンタクトを取った直後に目が痛くなる場合は慢性的に角膜が酸素不足になってしまっています。
それに、目をつむっている状態だと、目の中で菌が繁殖することにもつながります。つい眠気に襲われてしまうかもしれませんが、視力を失いたくなければ注意しましょう。
コンタクトを装着しているときにさす目薬にも注意を。「塩化ベンザルコニウム」という防腐剤が入っている目薬は、ソフトコンタクトに対して使ってはいけません。防腐剤がコンタクトの素材に吸着されて、目の表面に残ってしまい、角膜を傷つけます。
眼科学会等の報告だと、感染症が起こる確率は1dayが最も低く、2weekは6~7倍、1monthは10倍近くと、期間が長いものであるほど角膜感染症のリスクが高くなります。眼科によっては1dayしか扱っていないところもありますが、それは安全面に配慮しているためです。
ただし、1dayであっても目の中に入れるものなので、必ず適切な使い方を守り、手指は清潔に保ってください。どのコンタクトレンズを使うにしろ適切に使用することはとても大切ですが、目の安全のためにできるだけ1dayコンタクトレンズを使用していただきたいと思います。
喫煙と過度の飲酒は、全身の健康に悪影響を及ぼすことが広く知られています。もちろん、これらの悪習慣が、「目」に対しても非常に大きなダメージを与え、様々な眼疾患のリスクを高めています。
喫煙は、目にとって「百害あって一利なし」と言っても過言ではありません。タバコの煙に含まれるニコチンや一酸化炭素などの有害物質は、血管を収縮させ、血流を悪化させます。また、喫煙によって体内に発生する大量の活性酸素は、目の細胞を傷つけ、老化を早めます。
喫煙は酸化を促進してしまいます。水晶体を濁らせ、黄斑を傷つけてしまいます。血糖コントロールが乱れたり、一酸化炭素濃度の上昇で血流が悪化するので、緑内障も進行しやすくなってしまいます。
適量の飲酒は、血行を促進し、ストレス解消に効果があるとも言われています。眼圧もわずかに下がるのです。しかし、過度の飲酒は悪影響しかなく、眼圧も上がってしまいます。
ビールや日本酒などの醸造酒は糖質が多く、血糖値の上昇と糖化を起こします。また、利尿作用により体内の水分バランスが乱れたり、アルコール分解のためにビタミンB群が消費され不足することで、目の代謝のために使われるビタミンが不足してしまいます。
喫煙と飲酒を同時に行うと、それぞれの悪影響が相乗的に働き、目の健康に深刻なダメージを与える可能性があります。
例えば、喫煙によって血管が収縮し、血流が悪化した状態で飲酒をすると、アルコールの代謝が遅れ、体内に有害物質が蓄積しやすくなります。また、喫煙と飲酒は、どちらも活性酸素の発生を促進するため、酸化ストレスによるダメージが大きくなります。
喫煙や飲酒が嗜好品としてストレス緩和になっていることはわかるのですが、これが常態化し、依存するくらいになってしまうと、自ら進んで体を病気にしていると言えます。
禁煙でタバコはやめるようにし、お酒は純アルコール量を20g以内(ビールだと500ml程度、日本酒だと180ml程度)に抑えるなど、適切な量に留めるようにしましょう。
———-真鍋 佑介(まなべ・ゆうすけ)眼科医真鍋眼科院長。「近視予防を広めたい」という意思から眼科医を志し、2015年から岐阜大学病院の眼科医として長年分野を問わず疾患の診療をしてきた。後に緑内障専門医として診療と研究に従事する。2021年から真鍋眼科に勤務。なんでも相談できる「かかりつけ医」をモットーとして患者を支えている。———-
(眼科医 真鍋 佑介)