「初代ミス京大グランプリを獲得させて頂きました」──華やかなドレスを着て、トロフィーを手に微笑む女性。京都大学医学部医学科1年生である一条美輝さん(19)の報告に対して、SNS上で困惑の声が広がった。なぜなら、京都大学は“ミスコンを開催しない大学”として有名だからだ。同大学のOBが語る。
【写真】純白のウェディングドレス姿を披露した一条美輝さん
「120年を超える京都大学の歴史の中で、ミスコンが開催されたとは聞いたことがありません。そのような企画が立ち上がっては、ルッキズムなどの観点から反対されてきた経緯があり、昨秋の全学実行委員会でも、11月祭(学祭)での『京大ミス・ミスターコンテスト』企画の中止決議が全会一致で採択されました。
現役学生の後輩たちはミスコンが開催されたとは知らず、『いつやってたの?』と戸惑っています」(京都大学OB)
大学コンテスト情報のポータルサイト「MISCOLLE(ミスコレ)」によると、「京大ミスコンテスト」の投票期間は1月21日23時~23日17時とわずか2日足らずしか設けられていなかったようだ。
「京都大学には総長裁定にある『京都大学の名義並びにエンブレム、ロゴタイプ及びスクールカラーに関する規程』が存在します。在校生からは、今回行われた『京大ミスコンテスト2024』がこの規定に抵触するのではないかという意見も上がっています」(同前)
ファイナリストは、一条さんを含め2名だけ。そのためネット上には、グランプリによる“自作自演”のコンテストではないかと疑う声まである。
グランプリに輝いた一条さんは、全国のミスコンに出場し、人気YouTube番組「青い令和の虎」にゲスト出演したこともある。
一条さんに取材し、“自作自演”疑惑について尋ねたところ、「それは絶対にありません」と断言した。
「運営スタッフの方から去年6月にInstagramのDMで『ミス京大を開催するので、ぜひ出場しませんか?』と打診されました。スタッフの方ともともと知り合いだったわけではなく、SNSなどで私のことを知って声をかけてくれたそうです。
京大にミスコンはないものだと思っていたので、『本当なのかな?』と驚いたのですが、今回が初開催と聞き、喜んでお受けしました。
入学時に配られたサークル情報誌に『京大ミス・ミスター事務所』と運営の情報も載っていたのですが、いかんせんページ数が多くて見落としてしまっていたんですよね……。つまり私の入学時にはもう運営が存在していたということで、自作自演ということは絶対にありません」(一条さん)
運営からの説明によると、ミスコンへの反対運動を回避すべく、ゲリラ的な開催としたようだ。
一条さんが受賞の喜びを語る。
「周囲の協力などもあり、コンテストを通して、人の温かみを感じました。グランプリを獲得後、スタジオで素敵な記念撮影もしていただけて、すごくうれしかったです。ミス京大の初代グランプリとして、このような取材のご依頼もいただけました。
ただ当初は大変光栄に思っていたのですが、思いがけずこのような騒動に発展してしまい、非常に困惑しています。運営が非公認サークルであることもつい最近知りました」(一条さん)
「京大ミス・ミスター事務所」に、大学の認可などについて問い合わせた。
「京都大学の学生が運営するサークルでの“京都大学”の名義使用の申請は不要とされています。『京大ミス・ミスター事務所』は、京都大学の学生が運営するサークルですので、名義使用は問題ないと考えております」(「京大ミス・ミスター事務所」のスタッフ)
一方で、京都大学の広報課は「NEWSポストセブン」の取材に対し「これまでミスコンテストを公認したことは一度もなく、名義貸しなどでもありません」と答えた。また、同広報課は各メディアの取材にも、非公認団体は大学の名義は使えないこと、今回については名義使用を認めていないと説明している。
昨年の京都大学11月祭での「ミス・ミスターコンテスト」企画が中止となったことについて「京大ミス・ミスター事務所」のスタッフは、
「京都大学11月祭事務局から『ミスコンのステージは中止だが、ミスコン企画自体は続行して構わない』と聞きました。学祭でのステージがなくともミスコン企画を開催している例は、『ミス慶應コンテスト』などほかにも存在します」
と主張している。このスタッフによると、公式Instagramや学内情報誌などで告知した結果、「大体の数字で、1万人規模の票が集まった」という。 なお、京都大学11月祭事務局に「京大ミスコンテスト2024」について問い合わせたところ、以下のような回答だった。
「あくまでミスコンステージ企画が中止となったのは、昨年の11月祭においてのみであると認識しております。また、弊団体は11月祭以外での他団体の活動について関知する立場にはございません。
弊団体は、『京大ミスコンテスト2024』の主催団体が11月祭に出展を希望された企画については対応を行いましたが、『京大ミスコンテスト2024』への関与はしておりません」(京都大学11月祭事務局の回答)
コンテストには複雑な経緯があったようだ。グランプリの一条さんには芸能界に羽ばたき夢を叶えてもらいたいが、「ミス京大」という肩書きが公式なものとして認められるかどうかはいまだ不透明だ。