昨年2月、神奈川県相模原市の自宅で両親を殺害したなどとして殺人と窃盗の罪に問われた少年(16)の裁判員裁判が2月4日、横浜地裁(吉井隆平裁判長)で始まった。
少年は窃盗罪や父に対する殺人罪は認めたが、母を殺害したことについては「殺してと言われたので殺した」と述べ、嘱託殺人罪にとどまると主張。代理人弁護士は「保護処分が選択されるべきだ」と訴えた。(弁護士ドットコムニュース・一宮俊介)
起訴内容によると、被告人の少年は当時15歳だった2024年2月10日、自宅で父親(当時52歳)を刃物で多数回突き刺し死亡させ、その後帰宅した母親(当時50歳)も首を絞めたり刺したりして殺害した。
また、事件前の2月6日と同10日に相模原市などのコンビニ2店でおにぎりやペットボトル飲料などを万引きしたとして、窃盗罪でも起訴されている。
少年は逮捕後、横浜家庭裁判所に送られたが、その後検察官送致(逆送)され、横浜地検が昨年5月に起訴していた。
検察官の冒頭陳述によると、少年は両親と3人で暮らしていた。小学生のころから父親から暴力や暴言を受け、家では食事作りや洗濯などの家事を任されていた。
父への不満や嫌悪感などから自宅で過ごすことを避けるように。2023年に高校に進学したが、学校を無断欠席するようになり、交際する女性の家などに外泊することが増えた。暴走族に加入したこともあったという。
検察官は、2024年2月6日と10日にコンビニで万引きをしたことで父親から外出禁止を命じられた少年が、交際相手に会いに行きたいとの思いから父親の殺害を決意し、帰宅した母親に通報されるのを止めるために殺害したと説明した。
これに対して、被告人の代理人弁護士は冒頭陳述で、少年は遅くとも小学2年のころから虐待を受けており、父からは暴力のほか、「下僕」「刑務所に入れる」などと暴言を吐かれることがあったと説明。
ネグレクトの状態に置かれ、学校に持っていく弁当も自分で作っていたという。
少年は母親に「父と離婚してほしい」とお願いし、母は一度は離婚を前向きに検討したものの、結局離婚や別居をしなかったことから、少年は裏切られた思いを抱いたと述べた。
代理人弁護士は「取り返すことのできない2人の命を奪った罪は重い。しかし、犯行の動機は長年にわたる両親の虐待と不適切な養育という本人にはどうすることもできない状況が影響を与えた」としたうえで、少年院送致などの保護処分が相当だと訴えた。
証拠調べでは、中学校で実施されたヤングケアラーに関するアンケートで少年が「(ヤングケアラーに)該当する」と回答していたと説明する担任の供述調書などが読み上げられた。
2月5日は少年の被告人質問などが実施される予定。