【多産DV】という単語を聞いたことがあるだろうか?
DV(ドメスティック・バイオレンス)と聞くと家庭内暴力を思い浮かべる人も多いと思うが、多産DVとは「避妊してほしい」「もう妊娠したくない」といった妻の意向を無視し、避妊せずに性交渉を行い、妻が望まない妊娠・出産を繰り返させるDVのことだ。
出産直後から性交渉を強要したり、短期間に子供を次々と産ませるケースもあれば、複数回中絶をさせるケース、帝王切開をしているにもかかわらず妊娠を繰り返すケースなどがある。
今回は多産DVをされている女性と、多産DVをしている男性に話を聞かせてもらった。
「私がまさに多産DVを受けています」と話してくれたのは、香坂悠里さん(35歳・仮名)。彼女は今「5人目を妊娠中です」と苦笑する。
「子供はほぼ年子。第一子はもうそりゃあ可愛くて、第二子までは子育ても楽しかった」
香坂さん的には、第二子が保育園に通うようになったら、社会復帰する予定だったという。
「子供は可愛いけど、我が家は旦那の収入もそこまで多くないし、専業主婦をするのはチョット…って感じ。保育園に預けてパートにでも出て、子供の学費とかを貯めたかった」
そんな話をしたところ、ほぼ強制のような妊活がはじまってしまう。
「旦那が『俺の稼ぎじゃ無理ってこと?子供が小さいのに人に預けるなんてかわいそうだ!』とブチ切れました。それからSEXの回数が増えて、何度頼んでも避妊をしない。ピルを飲みたい旨を話したら『不要』とピシャリ…」
案の定、第三子をすぐに妊娠した香坂さん。上の子2人を抱えての妊娠は「めっちゃきつかった」と当時を振り返る。だが、驚くことに第三子を妊娠した翌年に、年子で第四子を授かった。
「やっと産まれたー…と思ったら、もう妊娠。なんだか私って毎年妊娠か出産しているなぁ、疲れたなぁ…なんて思いつつ、子供の世話に追われる日々で色々判断能力が落ちていました」
そんな時に出産祝いに来てくれた友人が「これって一種のDVじゃない…?」と心配そうに香坂さんに問いかけた。
「お互いが欲しい訳じゃないのに、毎年のように出産して『あんた普通の状態がもう何年もないよ』って。確かに妊婦か出産したてで常に子育てをしている。友人から見たら、私が社会復帰をしたいと言っているのにおかまいなしに妊娠させる旦那を『異常だ』と」
香坂さんの旦那は嫉妬深く、女友達との外出や夜中の電話すらいい顔をしないそうだ。
「旦那の知らない私を知っている人全てが気に入らないようです。わざわざ出産祝いに来てくれた友人に挨拶のひとつもしないから、友人も『今度は外で会おう』と疎遠になってしまった子もいます」
さらにどんどん子供を作るが、旦那の給料は一向に上がらない。子供が1人生まれると生活費が月に1万円プラスされるそうだが「全く足りない」と話す。
「彼は私のことを好きではあるんだろうけど、友人との外出以外にも美容とかにお金をかけたりするのも嫌います。『自分で稼いだ金だから』と最低限の生活費と家のローンや光熱費以外は全て自分の娯楽に使ってしまうんです」
香坂さんは自身の貯金や微々たるポイ活、両親からの支援でぎりぎり生活していたがーー。
「目減りする貯金残高を見るのが辛くなり『ゼロになったらどうしよう』と、パパ活をすることにしたんです」
既婚者であること、まだ1歳未満の子供がいることをオープンにして「生活費が足りません。それでも助けてくれる方いませんか」とパパを募った。驚くことに「意外と需要はあった」という。
60代以上のおじいちゃん世代と『大人ありで母乳飲ませてくれませんか?』というマニアック世代にかなり刺さりました(苦笑)。何人かとやりとりして、2人のパパとマッチングしました」
1人は60代で食事のみ。もう1人は40代の会社経営者で大人ありなんだとか。
「60代の人は『下の2人を連れてきな』と言って、レジャー施設や個室の食事なんかに連れて行ってくれます。1回食事をして2万円ですが、ドラックストアで生活用品、デパートで子供服を買ってくれるので有難いです。40代の方に会う時は、子供を両親に預けて行っています。見た目が嫌でなくて、さらに40近い私に1回4万円もくださるので断る理由がなかった」
パパ活で月に6万円から8万円を稼いでいるが、4人分の学資保険に月1万円ずつ。残りは足りない生活費と貯金にまわしている。貯金額が増え、心にゆとりが持てた頃に第五子の妊娠が発覚した。
「最悪ですよね…。コンドームはつけてくれないにしても中出しはせずに気をつけていたつもりが…。パパ活はバレていないんですが、たまに外出していることは知っているので、多分家にいさせるための強制妊娠だと思います」
望まない妊娠とまではいかないが「正直もう子供は産みたくなかった」と香坂さんはいう。
「妊娠中、60代の方は会ってくれるんですが、当たり前に40代の方は『また落ち着いたら連絡してね』と…。なんか結婚して、普通に子育てしたかっただけなのに、どんどん妊娠させられて、経済的には困窮して、パパ活までして子育てしている自分ってなんなんだろう?とふとした時に思います。幸せなのかな…」
香坂さんに「離婚は考えていないのか?」と聞くと「うーん」と俯く。
「私にとってはDV加害者なのかもしれませんが、内情を知らない子供たちにはいい父親なんです。本当皮肉ですよね。今のところ、お金がなくても子供たちは賑やかに楽しそうにしているから…」
だが、第五子の出産後はパパ活の貯金を使い避妊リングをつける予定だという。
「まだ離婚には踏み切れませんが、このまま行くと大家族の貧困家庭になる未来しかありません。私が未然に防ぐしかない」
離婚となってもいいように日々の日記をつけているそうだ。
「多産DVなんていう単語が出てきて恐ろしい。嫁が気が付かなければいいけど…」そう心配しているのは、沖田祐樹さん(41歳・仮名)だ。
沖田さん一家は現在4人目を妊娠中で、なんと全員年子だという。
「多産DVという単語ができて恐る恐るクリックしたら、まさに僕のやっていることでした」
驚くことに、沖田さんは自分自身が多産DVである自覚があるそうだ。
さらに<「妻に家に居てほしい」と望んだ男性がとった「あまりにヤバすぎる手段」>の記事では、自らが行っている多産DVについて、沖田さんに詳しく話を聞いている。
【つづきを読む】「妻に家に居てほしい」と望んだ男性がとった「あまりにヤバすぎる手段」