大阪府枚方市で、女子大学生を殺害した罪に問われていた住居不定・無職の男に大阪地裁が懲役22年の判決を言い渡しました。西光勝被告(27)は去年5月、大阪府枚方市で交際していた大学2年生・渡辺華蓮さん(当時19)を包丁で複数回突き刺して殺害した、などとして殺人などの罪に問われています。■借金してガールズバー通いこれまでの裁判では、西光被告が借金を重ねたあゆみや渡辺さんとの出会いと変遷が明らかになりました。

職を失ってからも借金をしてガールズバーに通っていたこと。渡辺さんと出会い、「多額の収入がある」と嘘をついたまま交際したこと。親に嘘をついてまで金を借り続けていた結果、誰からも金も借りられなくなり、渡辺さんに“一緒に死んでほしい”と考えたことなどです。当時の心境について、法廷で時折涙を流しながら、こう話していました。(西光被告)「華蓮さんが思い描いていた僕で終わらせたかった」「自分のものにしたかった」Qなぜ自分のものにしたかった?「華蓮さんが他の男の人と幸せになるのが嫌だった」Qなぜ自分は死ななかった?「怖くなった。勇気が出なかった」■殺害後の行動ホテルで無店舗型風俗を利用法廷では、西光被告が渡辺さんを殺害した後の行動も明らかになりました。殺害後、西光被告は部屋から渡辺さんのパソコンやスマートフォンなどを持ち出し、そのうちパソコンは6万円あまりで業者に売却したといいます。Qなぜパソコンを売ろうとした?(西光被告)「飛び降り自殺をしようと考えて、ホテルを調べました。『バンジージャンプとか好きだからいけるわ』と思って」「パソコンを売ってホテル代にしようと思いました」大阪市内に移動し、渡辺さんのスマホを使った決済で、マウスウォッシュや整髪剤、菓子や酒など購入。ホテルで無店舗型風俗を利用したこともわかりました。Qなぜデリバリーヘルスを?「現実逃避するために。何か性的なことを考えると、問題から逃げられる(という)ような頭になっていて…事件と向き合わなかったことは、今は情けない、ありえないと思います」■「どんなに痛くて、どんなに苦しかっただろう」一方、法廷では渡辺さんの母親の意見陳述も行われました。「目の前にあるのは、ただ華蓮がいないということだけです。どんなに痛くて、どんなに苦しかっただろうと思います。そばにいてあげられなかった後悔だけです。被告人には、一瞬たりとも華蓮を思い出してほしくありません」母親が涙をこらえるようにこう述べた後、渡辺さんの父親も法廷で意見を述べました。「本来ならことし成人式を迎え、一緒にお酒を飲む約束をしていました。一緒に飲む予定だったお酒はまだ自宅にあります」そして、苛烈な処罰感情を示しました。「社会復帰は絶対に許せません。身勝手な殺人鬼に、死刑を求めます。そしてもうこんなにつらいことが、二度と誰にも起きてほしくない」■検察「命よりも見栄やプライドを優先」検察側は西光被告に対し、「自ら作り上げた金持ちである虚偽の彼氏像を維持するのに限界を感じ、嘘がばれて交際を解消されるのが嫌、渡辺さんが思い描いていた自分のままで終わらせたいという思いで殺害を決意した。渡辺さんの命よりも自分の見栄やプライドを優先し、命を軽視している」と指摘しました。さらに「遺体には62か所もの傷があり、めった刺しにするなど強固な殺意に基づいた犯行で、動機は他に類例を見ないほど身勝手極まりない」として懲役22年を求刑していました。一方、弁護側は「西光被告は不動産営業の仕事をしてから嘘をつくことに抵抗がなくなってしまっていた。謝罪の気持ちをもっている」などとして懲役20年が相当と主張していました。西光被告は「どんな刑でも私は一切控訴せず、一生償っていきます。本当に申し訳ございませんでした。」と立ち上がり、遺族に向かって謝罪していました。■大阪地裁の判決「両親らが述べた言葉は重い」2月28日午後、大阪地裁は判決で、「被害者には防御創を含めて62か所もの傷が残されていて、必死に抵抗する被害者を確実に殺害しようした」と強い殺意を認定。「殺害後にパソコンを売却し、薬局で生活用品を購入するなどの行為、性的サービスを受けるなどしており、一度も本気で自殺しようと考えていないと判断せざるをえない」と厳しく断じました。そして、「遺族の悲しみは大きく、両親らが述べた言葉は重い。1人を殺害した事案の中では最も重い部類にあたる」などとして、西光被告に対し、求刑どおり懲役22年の判決を言い渡しました。