プロポーズするまで交際相手が持病を隠していたことが許せない──。こんな相談が弁護士ドットコムに寄せられました。
交際相手には大手結婚相談所でのお見合いで知り合い、その後結婚前提の交際に発展。順調なお付き合いを経て、プロポーズしました。色よい返事を期待していた相談者に返ってきたのは、「持病あります」という告白でした。
その持病は性的な接触でも感染する可能性のあるウイルス性の病気ということで、相談者としては「悪意を持って私を騙していた」と憤っており、慰謝料請求したいと考えています。
交際相手が積極的に嘘をついていたというわけではなさそうですが、持病を明かさずに結婚前提の交際をしていたことで法的責任を問われることはあるのでしょうか。理崎智英弁護士に聞きました。
──持病を明かさずに結婚前提の交際をすること自体、何か法的責任を問われる行為なのでしょうか。
持病を明かさずに結婚前提の交際をしたからといって、必ずしも相手に対して法的責任を負うとは限りません。重要なのは、持病の内容です。
たとえば、性的な接触により感染するウイルス性の性病を患っているのにもかかわらず、そのことを秘して、相手と性行為をし、相手に性病を感染させてしまったような場合には、相手に対して、不法行為に基づく損害賠償義務を負う可能性があります。
もっとも、病気によってはワクチンで感染を防ぐこともできます。性行為をする前に持病のことを伝え、ワクチン接種を検討してもらったり、病気に関する正しい知識を伝えたりするような話し合いが必要ではないでしょうか。
──持病がある人は必ずしも珍しくありませんが、婚活のような場面ではどう振る舞うのが良いのでしょうか。
持病の種類にもよりますが、婚姻後の性生活に関するような病気(感染性の性病等)、婚姻後も継続治療が必要な病気(糖尿病等)、治療に多額の医療費がかかる病気のような場合には、婚姻後の夫婦生活に重大な影響を及ぼします。交際前に相手にその事実を明かすべきでしょう。
【取材協力弁護士】理崎 智英(りざき・ともひで)弁護士一橋大学法学部卒。平成22年弁護士登録。東京弁護士会所属。弁護士登録時から離婚・男女問題の案件を数多く手掛ける。事務所名:高島総合法律事務所事務所URL:http://www.takashimalaw.com