2024年12月12日、消費者庁と厚生労働省は、外食時の食品ロスの削減に向け、客が食べ残した場合、持ち帰りのためのガイドライン案を初めてまとめた。両省庁の検討会が開かれ、統合案が了承されという。
食べ残しを持ち帰る場合、客の自己責任が前提で、飲食店側にも持ち帰り対象の料理を判断することが求められる。ただ、食事中に食中毒の原因となる菌や唾液が食品に付着する場合もある。消費者庁はこのガイドライン案を政府の食品ロス削減推進会議に提出。了承されれば公表する予定だという。
キャリア10年以上、3000件以上の調査実績がある私立探偵・山村佳子さんは「フードロス対策の持ち帰りで浮気が発覚するケースがあります。普段行かない店の名前の紙袋、見覚えのない料理などでバレてしまうことは多いです」と言う。
山村さんに依頼がくる相談の多くは「時代」を反映している。同じような悩みを抱える方々への問題解決のヒントも多くあるはずだ。個人が特定されないように配慮をしながら、家族の問題を浮き上がらせる連載が「探偵が見た家族の肖像」だ。
今回山村さんのところに相談に来たのは、45歳の会社員・大和さんだ。「見覚えがない紙袋や、食品のパック、うちに絶対持ち込まないエビが入っている料理があり、妻の浮気を確信しました」と山村さんに連絡をしてきた。
私立探偵、夫婦カウンセラー。JADP認定 メンタル心理アドバイザー JADP認定 夫婦カウンセラー。神奈川県横浜市で生まれ育つ。フェリス女学院大学在学中から、探偵の仕事を開始。卒業後は化粧品メーカーなどに勤務。2013年に5年間の修行を経て、リッツ横浜探偵社を設立。豊富な調査とカウンセリング経験を持つ探偵として注目を集める。テレビやWEB連載など様々なメディアで活躍している。
今回の依頼者・大和さんは「このままでは妻を殴ってしまうかもしれない」と、夜中に電話をかけて来ました。やり場のない怒りを誰かに聞いてもらいたかったのかもしれません。
「終電で帰ってきた妻がすぐにシャワーを浴びていて、バッグをみると桜エビのおにぎりが入っている。僕はエビ類が大嫌いで、それまで絶対に妻は自宅に持ち込まなかったんです。それなのにバックに入っているのはおかしい」
大和さんも酔っているのか、呂律が回っていないところがありました。とりあえず、気持ちを落ち着かせ、まず眠ってくださいと伝え、翌日の土曜日9時にカウンセリングルームで会う約束をしました。
「昨日はありがとうございます。取り乱してしまってすいません。妻の変化についてお話しさせてください」と言い、結婚20年の妻について話し始めました。
「僕は妻の望む通り、人生を我慢して過ごして来たのです。できちゃった婚なので、“子供のために安定した仕事をしてほしい”と、大手の企業に無理やり転職させられました。当時、僕は美大を出てグラフィックデザイナーをしていたのですが、それでは不安定だと」
妻との出会いは、友人のアーティストのライブペイントで、同じ年の妻と意気投合。妻は海外の大学を卒業し、金融関連会社に勤務するエリートで、当時の女性が憧れるブランドのバッグを誇らしげに持っていたとか。
「僕でも知っているフランスのハイブランドバッグで60万円もするという。そういう異世界の女性に心惹かれたんです」
妻も大和さんの個性に夢中になり、すぐに妊娠。26歳で出産します。
「彼女の貯金は300万円以上あったのに、僕はゼロ。妻に激怒されて、デザイナーの夢を捨てて、大手企業に転職しろと厳命されて従いました。興味が持てない仕事を、心を殺してこなしているうちに、20年が経過していました」
妻の指示に従い仕事をしていたら、中途採用なのに異例の出世をしたそうです。妻は仕事ができるために、多忙だったとか。20~30代は海外出張も多く、幼い息子のケアをするために苦労した話が始まると、大和さんのマシンガントークが止まりません。いかに我慢をして妻を支えたかをずっと話していました。
「でも、妻のいいところは、僕に対して細かく配慮をしてくれるところ。僕は学校や両親に嫌いなものを残さず食べなさいと言われ、苦しい思いをしたトラウマがあります。それに対して妻は配慮してくれて、嫌いな食べ物を絶対に家に持ち込まずにいてくれたんです」
それなのに、桜エビがバッグの中にあった。他人にとっては小さなことでも大和さんには大きな問題です。
「それまで、いろいろ不審なところはあったのですが、息子も可愛いし、両親が揃っていた方がいいと思うので我慢していました」
妻が浮気をしていることに最初に気づいたのは息子だという。
「2年前、息子が高校時代、妻に反抗をしたことがありました。理由を聞くと、塾帰りに妻が知らない男の車に乗って帰宅するのを見たと言うんです。息子はこの4月から大学生になり、彼女ができ、横浜デートをしていたところ、妻が知らない男性と腕を組んでいる姿を見たと教えてくれました」
さらに息子は、帰宅すると妻がトイレの中で誰かと電話しており「愛してる」などと話しているのを聞いてしまった。息子が、「なんでトイレで電話してんの?」と聞くと、「そんなのするわけないじゃない」と妻はごまかしたと言います。
妻の写真を見せていただくと、肉感的な体に黒髪ロングヘアで、モテそうな印象です。自分が美人だと自覚している女性特有のオーラがあり、目の光が強い。経営者の妻にいそうなタイプだと思った私の気持ちを察知したのか、「僕は義母から“あの子はもっといい男と結婚すると思った”とよく言われていました」と言います。
義実家に軽視されながらも、結婚生活を続けたのは、息子の存在もありますが、妻に人生を任せておけばなんとかなるという安心感の中で生きているのが心地よかったからだそうです。
「先ほど、僕の嫌いなエビを持ち込んだ話をしましたが、妻から大切にされているという実感はありました。ただ、ここ1年くらい、深夜帰りや外泊が増え、“自由になりたい”とか言い出すようになったんです」
大和さんは、ここまで話すのに2時間かかっている。もっと決定的なことがあるはずだと黙っていると、「2週間前、妻のバッグをガサ入れしたら、離婚届が出て来たんです。そこから妻を試すよう言動が止められなかった」と苦しそうに告白。
「海外生活が長い妻は昔から、食べ残しがあると“ドギーバッグにしてください”と言って、持ち帰る。友達との食事会のものだと、ゴミ箱に店の名前が入った紙袋や、シールを貼ったバッケージが堂々と捨ててあるのですが、後ろ暗いものは隠すように入っている。それを開封して確認しては、“〇〇のミートパイが食べたいな~”とか言っていたんです」
妻がうろたえる姿が面白くて止められなかったと言います。そのうちに妻はドギーバッグをやめて、ファスナー付きビニール袋や紙皿にラップをしたもので持ち帰るようになったそうです。
それとともに妻の態度は冷たくなっていき、離婚のカウントダウンが始まったと感じたのだとか。そう話しながらも大和さんは「俺があんなことをしなければ元に戻れたのか」と言ったと思えば「でも妻が悪い。俺の夢を奪った」などとかなりメンタルが不安定です。
素行調査にはそれなりの費用がかかるため、目的をはっきりさせないで調べても意味がないことが多いです。大和さんの今後の人生の幸福について聞くと「妻と元通りの生活をしたい」と言う。妻の有責配偶者の証拠を取れば、一方的に離婚される可能性は減ります。
そこで調査に入ることにしたのです。
◇「嫌いな食材を持ち帰った」ということだけでも浮気がわかるというのも、「相手が好きな食材でも、自分が嫌いだったら見たくもないし家に持ち込まないでほしい」という大和さんの意向に妻が合わせていたからでもある。子供時代の辛い思い出があることにも寄り添ってきたのだろう。では「元通りの生活」は夫婦のお互いにとって幸せなのか。妻はどのように思っているのだろうか。
調査の結果は後編「持ち帰った食べ物から発覚した妻の「10年浮気」。45歳夫が決断した「衝撃の関係」」にて詳しくお伝えする。
持ち帰った食べ物から発覚した妻の「10年浮気」。45歳夫が決断した「衝撃の関係」