9連休と、長期休みの人も多い、2024年-2025年の年末年始。久々に家族と再会、という人も多いでしょう。そこで繰り広げられる「見ないうちに変わったな」というやり取りももはや定番。あまりの変わりように、衝撃を受けることもあるようです
9連休という人も多い、2024年ー2025年の年末年始。長期休みは実家に帰省というのがお決まりのパターンという人も多いのでは。実家に暮らすのは高齢になった親だけというケースでは、帰省は元気な姿をきちんと確認できる貴重な機会であり、親孝行を存分にしてあげられる、またとないチャンスです。
そう意気込んで帰省した、昨年の年末年始の出来事を振り返る斉藤大輔さん(仮名・45歳)。「昨年は夏に帰ることができなくて。だから1年ぶりの帰省だったんですが、その変貌ぶりに衝撃を受けました」といいます。
何の変貌に衝撃を受けたのか? それは実家そのものの変貌ぶり。
・外壁がきれいになっていて、屋根には太陽光パネル
・玄関前にはスロープが新設され、玄関ドアは引き戸に変更
・床材は滑りにくいものに変更
・すべての部屋に床暖房
・極めつけはホームエレベーターを新設
実家に暮らすのは、当時77歳の父親だけ。3年前に母親が亡くなり、それ以来、ひとり暮らしを続けています。元々、家事などしたこともないような父親だったので、実家でのひとり暮らしは不安でしかなかったという斉藤さん。子どもたちと同居という話もあがりましたが、「故郷を離れるのはイヤだ」の一点張り。せめて高齢の父が安全に暮らせるようにと、必要なところに手すりを付けたり、トイレや浴室などの水回りは使いやすいようにしたりと、300万円ほどかけてバリアフリー工事を行っていました。
今回、さらにバリアフリー工事を施したようですが……正直、「ここまでする必要ある?」と疑問を感じてしまうような、少々過剰なリフォームのような気がしたといいます。
――お父さん、すごいリフォームしたね。これどれくらいかかったの?
――うーん……全部合わせると2,000万円くらいかかったかな?
あまりの金額に衝撃を受けた斉藤さん。言葉を失ったといいます。父は毎月18万円ほどの年金を受け取っていると聞いています。また退職金やそれまでの貯金、株式などを合わせて3,000万円ほどある……というのが、父親が仕事を辞めた10年くらい前に聞いた話。そのお金がそのまま残っているとは考えにくい。それなのに、リフォーム等に2,000万円もかけるなんて。どこにそんなお金があるというのか?
「次から次へと、よい提案をしてくれるんだよ」「おかげで住み心地は格段にあがったね」「最近は電気代も高いだろう。太陽光!? 助かっているよ」と、嬉しそうに話してくれる父親でしたが、カモにされているのは明らかでした。
また、斉藤さんには他に気になる点がありました。色々なもののストックが大量にあることに気づきます。シャンプーや中性洗剤のほか、ミネラルウォーターや醤油、ソース、マヨネーズ……斉藤さん自身も余分に1つは買っておいてストックしておくタイプですが、父親の場合は異常な数。明らかにおかしい。なぜこんなにもストックを買っているのか尋ねたところ、「買ったこと、忘れちゃってさ。この有様だよ」と笑って答えます。その姿をみて、また違和感を覚えた斉藤さん。
後日、改めて帰省した斉藤さん。父親を病院に連れていきました。結果は初期の認知症。絶対とは言い切れませんが、過剰とも思われるリフォームも、過剰ともいえるストックの購入も、すべては認知症が原因だったのかもしれない……。
日本における高齢化は急速に進行しており、2024年度のデータによると、65歳以上の高齢者の認知症患者数は2030年には約523万人、2060年には約645万人に達すると予測されています。これは65歳以上の高齢者の約5人に1人が認知症を患う水準です。
認知症により判断力が低下すると、さまざまな被害に遭遇する危険性が高まります。不必要な物やサービスを大量に買わされる「過量販売」はその典型的なものといえるでしょう。
認知症とわかっていれば対策を講じることもできるでしょう。しかし認知症に気づいていないケースも多く、被害が拡大してしまうことも珍しくありません。この年末年始、高齢の親に変わったところはないか、しっかりと見ておきたいものです。
[参考資料]
内閣官房資料『認知症及び軽度認知障害の有病率並びに将来設計に関する研究』