11月30日午前6時20分ごろ、秋田県秋田市土崎港西にあるスーパーマーケット『いとく土崎みなと店』の店内にクマが現れ、開店前の作業中だった40代の男性従業員が襲われた。
【写真】罠にかかったクマ、田園に突如現れたクマなど
報道などによると同県では11月に入ってから「ツキノワグマ出没注意報」が出されており、29日までに48件の目撃情報が寄せられていた。うち31件が11月下旬になってからの短期間のもので、クマが相次いで市街地に出没しているさなかでの出来事だった。全国紙記者が解説する。
「スーパーに姿を見せたのは身長約1メートル、体重が約70キロの雌のクマです。従業員から通報を受けて県警が出動し、市と猟友会が協力して店のバックヤードと売り場をつなぐ出入り口2か所に箱ワナを設置するなどして対応したようです。
クマは店内の精肉売り場などを荒らしながら、最終的に約55時間にわたって店に居すわりました。12月2日午後8時10分ごろに警官らが、熊がワナにかかっていることを確認し、その後に麻酔で眠らせたクマを電気により殺処分したといいます」
幸いにも襲われた男性は軽症で、全治1週間のケガと診断されたものの12月3日までに退院したという。
市の農地森林整備課によれば、このクマが商品を食い荒らした様子はなく、パニックで店に迷い込んだ可能性もあるようだ。まる2日間以上におよんだクマの“立てこもり”だが、なぜ捕獲までに時間がかかったのか。同課の担当者が説明する。
「もっと早く捕まえられたのかなというのは反省している部分はあります。まず店舗にワナを設置して、その後にドローンを飛ばして、店内にクマがいない事を確認したので、バックヤードにいるんだろうなと判断しました。そっちにワナを移そうと動いたんですけど、やはり警察のほうからなかなか許可がおりなかった。
100%の安全を考えたときに、クマがバックヤードから急に襲ってくる可能性などを考慮すると、ワナを移すのは難しいという判断だったようです。もう少し早く安全を確認して、ワナをバックヤードに移せられたら、これほど時間はかからなかったのかもしれません……」
秋田県では昨年10月、同県美郷町と猟友会が協力して、作業小屋に立てこもったクマ3頭を殺処分したことに対して県などに苦情が殺到したケースもあった。市によれば今回の件についても、県内外から現在までに119件の連絡があり、うち半数ほどが「(クマを)どうして殺すのか」といった反対意見、残りは「(処分してくれて)ありがとう」という感謝の声だという。
クマの捕獲に協力した秋田県猟友会の会長である佐藤寿男さんは、「ある程度の苦情は見越していた」と話す。
「今回、ワナの設置についてはお手伝いしましたが、猟友会には基本的に待機命令があっただけ。猟友会主導でやるとまた、殺処分に関する苦情などで猟友会のほうに迷惑がかかるかもしれないという配慮で、県警と市が主導権を握って捕獲する方針になりました。市街地であるということもあり、銃を使うという可能性は初めからありませんでしたね」
クマの駆除に関する賛否についてはさらにこう続けた。
「そんなこと言ったって、危険があるクマは殺さないといけない。仮に捕まえて山に放したとしても、またすぐに戻ってくるんだよ。(秋田)市内に現れるようなタイプは特に危ない。
というのも市街地の周辺で生まれたクマの子どもは学習能力が高いんです。山の奥のほうにどれだけエサがあっても、それだけでは耐えられない個体もいるみたいで……」
時代や環境に合わせてクマも変化していると語った佐藤さん。秋田市内ではクマが捕獲された翌日4日にもクマの目撃情報があり、警察が現在も周辺地区の警戒にあたっているという。「市街地にクマは出ない」という一般論はもう通用しないのか──。