11月5日、厚労省が公表した人口動態統計(概報)によると、2024年上半期(1月~6月)に生まれた赤ちゃんの数は、前年同月比6.3%減の32万9998人にとどまり、初めて「70万人割れ」となる公算が大きくなった。
厚労省の担当者がこう話す。
「5日に発表したのは2024年上半期の累計の数字だけです。単純にその数値を2倍すると約66万人になる計算のため、各メディアが『70万人割れ』としているのです。
断定的なことは言えませんが、これまでの傾向としては、上半期の出生数よりも下半期の出生数が増えていました。下半期は1万人~2万人くらい増えるのではないかと思います。ただ、それでも最大で68万人程度ですから、初の70万人割れというのは、あながち間違いではないと思います」
ちなみに2023年の出生数は、上半期で35万2240人で、1年間では72万7277人。確かに下半期の方が、約2万2800人増えている。
政治担当記者がこう話す。
「国の少子化対策や子育て政策は、1994年に村山富市政権時代に育児休業給付や保育所の整備などを重点政策とした『エンゼルプラン』策定を機に始まりました。この時点での出生数は124万人。それから30年が経ち、出生数は約半数強にまで落ち込んでいます。
2003年には少子化社会対策基本法、2012年には子ども・子育て支援法などが施行されています。安部晋三政権の2019年には幼児教育・保育の無償化、2022年には菅義偉政権の方針から不妊治療の保険適用拡大が進められました。
さらに、2023年には岸田文雄首相が『異次元の少子化対策』を打ち出し、こども家庭庁が発足しています。政府が2004年度からこれまでに少子化対策等に投じてきた予算は66兆を超えました。こども家庭庁の2025年度予算の概算要求は、2024年度当初予算から約2400億円増額の6兆4600億円です」
それでも少子化が改善しなかった状況に対して、X上では《出生数見たけど、相当日本やばい》《半世紀以上も前から言われてきたのに》といった具合に、将来への悲観や政府批判があがっている。
ただ、それだけでなく、こんな“暴論”も散見される悲しき事態に……。
《岸田政権が強調していた「異次元の少子化対策」は結局、絵に描いた餅だったようですね。この際、何の役にも立たなかった「こども家庭庁」は速やかに解体すべきではないでしょうか》
《こども家庭庁が必要ないことが判明 即解体を》
《こども家庭庁の予算6兆円をこの子どもたちに全部使えばいいだろ なにやってきたんだよ 解体しろ三原じゅん子》
このように、こども家庭庁や三原じゅん子こども政策担当大臣に対する厳しいコメントが寄せられている。前出の記者がこう話す。
「こども家庭庁は6兆円超の予算を要求していますが、当然、それをすべて出生数を増やすために使えるわけではなく、子育てや教育にも投じられるわけです。
そのため、すべてをこども家庭庁のせいにするのはおかしいでしょう。むしろ子どもが少ないからこそ、こうした省庁は必要なわけで、そういった意見が出てくること自体が残念なことです。
政府は2023年6月、若年人口が急激に減少する2030年代に入るまでが、少子化を反転させることができるかどうかの重要な分岐点だとして『こども未来戦略方針』を閣議決定し、少子化対策を加速させるとしています」
国立社会保障・人口問題研究所が2023年4月に公表した資料によれば、「出生数が70万件を下回るのは2043年と推計された」となっていた。
「2024年には早くもそれが現実となりそうで、専門家の予測をはるかに上回るスピードで少子化が進んでいることが見て取れます。現在、日本の人口は約1億2500万人ですが、2070年には現在の3分の2にまで減少すると予想されています。しかし、出生数の推計予測がまったく当たらないことから考えると、人口減少の度合いはもっと早まるのではないでしょうか」(同前)
もはや“一発逆転”はあり得ないため、人口減少を前提にした新しい国の形を早急に示してほしい。