妻が平日の日中、「YouTubeを見ながらヨガ」をしていただけで夫がモヤモヤ?(写真:polkadot / PIXTA)
毎年11月22日は「いい夫婦の日」。夫婦やカップルがお互いに感謝を伝え合う日だそうですが、いま日本では長年、連れ添った夫婦が離婚する「熟年離婚」が増加しています。
これまで約4万件の離婚相談を受けてきたという離婚カウンセラーの岡野あつ子さんによると、最近はこれまで多かった「不貞行為や金銭トラブルなど、夫もしくは妻が問題行動を取っている」ケースではなく、「モラルハラスメント(モラハラ)」、および「価値観の相違」の相談がほとんどだそう。
本記事では岡野さんの新著『なぜ「妻の一言」はカチンとくるのか? 夫婦関係を改善する「伝え方」教室』から一部を抜粋し、日常のささいなことですれ違った夫婦の例をお伝えします。
【次の記事】「洗濯離婚」や「エアコン離婚」が起きる納得の理由
専業主婦(あるいは家事を担当する夫)であるパートナーに対して、「家にいるだけで何もしていない」とか、「仕事の話を理解してくれない」などと不満に思う人は多いようです。
中にはこういった不満を爆発させ、離婚を選択する人さえいるのです。
以下は私がかつて相談を受けた「ヨガ離婚」の事例です。相談者は50代の男性、妻も同年代です。
コロナ禍で相談者の男性もリモートワークになりました。ただずっと家にいると、だんだんと妻の行動が気になってきたそうです。
妻はよくYouTubeの動画を見てリビングでヨガをしていたそうですが、その姿を見て相談者の夫は幻滅してしまったそうです。
「俺が会社で必死に働いている間、こいつは気楽に遊んでいて、何もしていない。だから人間として成長が止まっている。そんな人間とこの先も夫婦でい続けていいのだろうか」と思ってしまったのです。
ただ、妻を呼んで話を聞いてみたところ、ヨガをしていたのは、むしろ前向きな行動だったとのこと。コロナ禍で外出を自粛しているので、少しでも運動に励み、ダイエットしようと努力していたと言います。
それに、この妻は週に2日仕事をしていました。しかも英語を使う難しい仕事で、結構しっかりがんばっていたようです。
つまり夫が抱いた「疑惑」は完全に濡れ衣だったのですが、それでも一度そう思い込まれてしまうと、疑惑を晴らすのは簡単ではありません。
それに、夫が不満に思っているのはこれだけではありませんでした。コロナ禍で家にいる時間が長くなり、家の中が常日頃からけっこう汚いことに気がついたのだそうです。
妻は一応は掃除をしていたのですが、少しズボラなところがあり、カバンを出しっぱなしにしたりもしていたので、そういう雑なところが夫は嫌だったようです。
このケースは、夫婦の伝え方やコミュニケーション不足がトラブルの原因でした。夫は妻がどんな仕事をしていて、どれくらいがんばっているか、まったく知りませんでした。家でヨガをしていたことも、「遊んでいるだけ」と決めつけていました。
結局、私が間に入り、夫婦双方の伝え方の改善に取り組みました。
お互いかどちらかの伝え方に問題があり、コミュニケーション不足に陥っている夫婦はかなり多いようです。
自分のパートナーが普段何をしているのか、どんな仕事をしているのかさえ、不思議なほどに知らない人がたくさんいるのです。
よく話を聞いてみると、帰宅した自分のパートナーに「今日一日どこで何をしていたか」を聞いていないのです。仕事やその日の行動について、積極的にパートナーに話す人が少ない、とも言えます。
その結果、「ただ家にいるだけで何もしていない」「どうせ会社でも大した仕事をしていない」などと思いがちなのです。
よく仕事では「ホウレンソウ(報告・連絡・相談)」が大事だと言われますが、夫婦関係においてもあてはまります。
普段から「今日はこんなことをした」「会社でこんなことがあった」と「報告」する習慣をつけておくことが、夫婦関係を円満にする「最大のコツ」かもしれません。
逆に、「報告」をしていないと、何かトラブルがあった場合でも、「今日会社で嫌な目にあった」などとパートナーに相談してもひとごとのように受け取られて、親身になってもらえません。
相談したところでパートナーは状況がわからず、「ふーんそうなの、大変だったんだ」程度の受け答えしかできないのではないでしょうか。
結果、「相談しても話を聞いてくれない、ムダだ」と勝手に思い込んでしまい、悩みをパートナーに打ち明けられず、一人で抱え込むようになってしまいます。
「こまめに打ち明けると、こまめに口出しされる」「仕事がうまくいっていないことを知られたくない」などと思い、「ホウレンソウ」をしていない人もいるかもしれません。
つまり「ホウレンソウ」を「ヘマをして突っ込まれるきっかけ」と思っているのです。
ある意味もったいない話です。たしかに「ホウレンソウ」は「しくじりがバレるきっかけ」にもなりますが、それ以上に、「絶好のアピールチャンス」でもあるからです。
日々の「ホウレンソウ」は、相手から信頼と評価を獲得するためには避けて通れません。
突っ込まれたりからかわれるのを恐れて何も報告しないから、いざというときに、パートナーから「どうせろくな仕事をしていない」「家でゴロゴロしているだけ」と思われてしまうのです。
自分では伝えたつもりでも、意図やニュアンスがうまく伝わらないことは日常茶飯事です。だからこそ普段から丁寧なコミュニケーションを心がける必要があるのです。
アピールが下手な人ほど、「コツコツがんばっていれば、きっと相手もわかってくれる」と思いがちです。
もちろん努力はとても大事ですが、それだけではなかなか人に伝わりません。みんな自分のことで忙しいので、他人のがんばりなんてあまり気にかけていないのです。
「アピールばかりしている人はズルい」と思う人も多いのかもしれません。でも、コツコツ努力していることをアピールするのは当然のことで、ズルいことでも何でもありません。
アピールしなければ、自分の努力が認められることもありませんから、どんどんアピールしていいのです。
夫婦間でも、「家事をがんばった」「仕事をがんばった」と、どんどんアピールしたほうがいいと思います。
逆に、アピールをしていないから、パートナーはあなたの地道な努力に気がつかないのかもしれないのです。

もちろん、仲がよくてラブラブな夫婦なら、無理にアピールする必要はないかもしれません。ですが、長年つき合って気持ちが冷めてきているとか、関係がギクシャクしはじめた、という場合、アピールは関係改善にとても有効です。
関係がギクシャクしているときは、お互い相手のことを疑っています。「こいつは俺のことを愛していないんだな」「金だけが目的で出ていかないのか」などと、相手に疑問の目を向けているものです。
そんな時こそ「いまでもあなたのことを愛していますよ」「仕事や家事をちゃんとやっていますよ」とアピールすることで、相手の気持ちや態度にいい影響を与えることができます。
普段からアピールしていない人が、急にアピールするのも難しいと思いますので、誕生日プレゼントに感謝や思いやりをアピールするメッセージを添えるとか、何かのイベントの際に、さりげなくアピールすることをおすすめしています。
【次の記事】「洗濯離婚」や「エアコン離婚」が起きる納得の理由
(岡野 あつ子 : 夫婦問題研究家)