慶応大医学部(東京)は、卒業後に栃木県内で医師として一定期間勤務することを条件に入学する「地域枠」(定員1人)を創設する。
同大医学部が地域枠を設けるのは初めてで、2026年度の入試から適用される。
「栃木県地域枠」は栃木県内の高校卒業者や栃木県内在住者などを対象に、一般選抜の募集定員66人の中に設ける。授業料などの修学資金を栃木県が貸与し、卒業後に栃木県が指定する医療機関で9年間勤務すれば、返還を全額免除する。海外留学や大学院での学び直しを希望する場合を念頭に、卒業後14年間のうちに計9年間勤めれば条件を満たしたと認める。
選抜方法の詳細は未定だが、一般選抜と同じ1次・2次試験を課すほか、栃木県への愛着や地域医療への思いを確かめるため、県職員も同席して面接する予定だ。
慶応大と栃木県医療のつながりは深く、済生会宇都宮病院や栃木県立がんセンターなどに同大出身の医師が数多く派遣されている。同大の医学部では、一般選抜による入学者のうち、7割を1都3県(東京、神奈川、埼玉、千葉)の出身者が占め、地方出身者の確保が課題となっている。今回の地域枠創設はこうした背景から実現した。
金井隆典医学部長らが7月25日に栃木県庁を訪れ、地域枠創設の協定を結んだ。福田知事は「慶応大の『独立自尊』という建学の精神のもと養成される、自分で考え、人間の尊厳を重んじる医師に将来の地域医療を担っていただくことは心強い」と感謝。金井氏は「多様な人が交じり合うことで骨太の人材が育つ。(慶応大で)もまれた栃木の学生が高度先進医療を担う人材として栃木の医療を支える循環ができれば」と述べた。
栃木県内では、10年度に独協医科大(壬生町)が栃木県の地域枠を導入。各都道府県から決まった人数の入学者を募る自治医科大(下野市)でも09年度に栃木県からの入学定員を増やした。現在は独協医大出身の64人、自治医科大出身の47人が県内の病院で働いている。