宇宙人とUFOの「驚くべき正体」とは(写真:Graphs/PIXTA)
「小惑星探査」や「火星移住」などのニュースから、UFO、宇宙人の話題まで、私たちの好奇心を刺激する「宇宙」。だが、興味はあるものの「学ぶハードルが高い」と思う人も少なくない。
知らなくても困らない知識ではあるが、「ブラックホールの正体は何なのか」「宇宙人は存在するのか」など、現代科学でも未解決の「不思議」や「謎」は多く、知れば知るほど知的好奇心が膨らむ世界でもある。また、知見を得ることで視野が広がり、ものの見方が大きく変わることも大きな魅力だろう。
そんな宇宙の知識を誰でもわかるように「基本」を押さえながら、会話形式でやさしく解説したのが、井筒智彦氏の著書『東大宇宙博士が教える やわらか宇宙講座』だ。
その井筒氏が「宇宙人とUFOの驚くべき正体」について解説する。
「宇宙人はいる?」と聞かれたら、ずばり、「宇宙人はいます!」と答えるでしょう。

なぜなら、「我々は広い宇宙に住んでいる宇宙人だから」……なんていう言葉のトリック的な答えを期待しているわけではないですよね(笑)。
じつはUFOの存在を確かめるため、NASAが乗り出しているのです。でも果たして、本当に宇宙人は存在するのでしょうか?
「宇宙人」について、「UFO」「地球外生命」の2つに分けて答えてみましょう。
まず、UFOの実在は確実です。「UFO」とは未確認飛行物体(Unidentified Flying Object)のことだからです。
つまり、「空を飛んでいる正体不明のものは、すべてUFO」になるということ。
みなさんはUFOと聞いて、宇宙人の乗っている空飛ぶ円盤を思い浮かべたのではないでしょうか?
1947年6月24日、不思議な飛行物体が目撃され、新聞の一面に「空飛ぶ円盤(皿)が目撃された!」と大きく報道されました。この日は「UFOの日」として、マニアの間で親しまれています。
しかし、目撃者は「奇妙な物体が水面に投げた皿のように飛んでいた」と話しただけ。そう、「空飛ぶ円盤」は、もともと誤報から生まれたものだったのです。
この報道をきっかけに、多くの人の脳裏に「円盤型の物体が空を飛んでいる」と刻み込まれ、ただの飛行機であっても「円盤型の物体に見えた」と報告する事例が多発しました。
人間には「見たいものを見る」という認知心理学的なクセがあります。先入観が見間違いを引き起こしてしまったのでしょう。
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先入観という点では、「宇宙人の姿」についても同様のことがいえます。
みなさんは「宇宙人」と聞いて、どんな姿を思い浮かべますか?
おそらく、逆三角形の大きな頭に、吊り上がった目をした灰色で小柄なものを思い浮かべるのではないでしょうか。
これは、スティーブン・スピルバーグ監督の映画『未知との遭遇』に登場した「グレイ」と呼ばれている宇宙人の姿。
映画の印象が強烈すぎて、「宇宙人=グレイ」のイメージが広く植え付けられてしまったというわけです。
UFOの94%は「見間違い」である!?(イラスト:村上テツヤ)
誰もが知らず知らずのうちに、先入観にとらわれてしまうものですが、UFOや宇宙人について考える上で、いちばん大切なのは思い込みを捨てることです。
宇宙人がいるかどうか、いるとしたらどんな姿なのか、答えはまだ誰にもわかりません。誰かがつくりあげたイメージに左右されずに、冷静かつ柔軟に考えていく必要があります。
まずは空飛ぶ円盤やグレイのイメージから脱却することを目指しましょう。
UFOの目撃報告を冷静に見てみると、たいていのものは説明がつきます。
過去に、アメリカ空軍が1万件以上のUFO目撃報告(1947~69年)について徹底的に調査したところ、じつに94%が「見間違い」であることがわかりました(ちなみに現在アメリカ政府やNASAは、UFOでなく、UAP「Unidentified Anomalous Phenomena:未確認異常現象」という言葉を使っています)。
いったい、何と見間違えたのかといいますと、飛行機や恒星・惑星、隕石、人工衛星から風船まで、多岐にわたっています。
こうしてみると、空には紛らわしいものが多くありますね。
【UFOと見間違えられたものランキング】1位 飛行機 41.6%2位 恒星・惑星 35.2%3位 隕石(火球) 11.0%4位 月 2.3%4位 人工衛星 2.3%4位 気球・風船 2.3%7位 サーチライト・地上光 1.8%CUFOSのHerdry による解析をもとに筆者が再集計 ※8位以下は省略
2021年のアメリカ政府の報告書によると、米軍パイロットが目撃したUFO144件のうち1件が気球と判明し、あとはデータ不足で正体不明だと結論づけられました。
整理すると、地上から目撃されたUFOは94%が説明できるけど、空中でパイロットが目撃したUFOはほとんどが正体不明だったということです。
では、地上から目撃されたUFOの正体不明の6%や、パイロットが目撃したUFOは、宇宙人なのでしょうか?
もちろん、すべてのUFOに説明がつくわけではありません。だからといって、説明がつかないUFOを宇宙人の乗り物と決めつけることもできません。UFOの目撃は「ただ正体不明の飛行物体が見えただけ」ということにすぎないのです。
現在、NASAはUFO研究の責任者とメンバーを任命し、データの収集と分析に取り組んでいます。
宇宙の専門家集団であるNASAが「本気モード」になっているということは、宇宙人が存在する可能性はゼロではないのでしょうか。
残念ながら科学的な見解としては、「UFOは宇宙人の乗り物である」という説を支持する証拠があるとは考えられていません。
なぜなら科学とは、次の3つがそろって初めて成り立つからです。
【科学に必要な3つの要素】実証性…仮説に対して観察や実験で検証できる再現性…誰が検証しても同じ結果が出る客観性…主観でなく事実に基づいて結論を導く
UFOが「宇宙人の乗り物である」という説には、この3つを備えた証拠はありません。
だからといって、UFOは「宇宙人の乗り物である」という説が間違っていると断言できるわけでもないのです。
いまはまだ科学的な証拠がないだけで、実際にはそれが正解だという可能性もあります。
そんな回答ではモヤモヤしますよね。
でも、とにかくUFOには慎重になる必要があります。
ひとつ言えることは、UFOや宇宙人について考えるときは、思い込みは捨てたほうがいいけど、希望まで捨てる必要はないということです。
だからこそUFOにはロマンがあり、人を惹きつけて止まないのでしょう。NASAの研究は2023年に始まったばかり。これから「驚くような事実」が発見されるかもしれません。
さらに次回は、宇宙人の存在に関する科学者の見解を解説していきます。
(井筒 智彦 : 宇宙博士、東京大学 博士号(理学))