36人が死亡、32人が重軽傷を負った京都アニメーション放火殺人事件の発生から18日で5年。
犠牲となった美術監督、渡辺美希子さん=当時(35)=の母達子さん(74)は、青葉真司被告(46)=一審死刑、控訴中=の京都地裁の公判を全て傍聴した。「あの子に会いたい」。決して癒やされぬ思いを胸に、今は犯罪被害者支援についての講演活動を続けている。
「あの子の最期を思い出して耐えられへんかった」。公判を振り返って達子さんはこう述懐した。さまざまな感情が湧き起こり、つらくて意識が遠のいたことも何度かあったという。
被告人質問での青葉被告の様子に「死んだ人間も、治療を受けている人間も地獄なのに、火を放った人間が意気揚々としゃべっていた」と憤りを隠せない。法廷で語られた動機についても「どんだけ子どもなんやと思った。幼さをすごく感じた」と、やりきれない思いを口にした。
兄の勇さん(45)も公判について「想像を超えてきつかった」と話す。それでも今は「負の感情だけで生きていくのはもうしんどい。そういう生き方はしたくない」と前を向く。全国で行っている講演活動も、当初は他の遺族の心情を考えて迷いもあったという。それでも「(犯罪被害者の)環境が少しでも良くなるなら意義があると思う」と力を込める。
裁判は4カ月を超える長期にわたったが、京アニのファンも含めたさまざまな人に助けられたという。勇さんは「(事件後に)社長も従業員の方も頑張ってくれた。(美希子さんが)そういうふうに愛される会社の一員だったのは一つの誇りだ」と語った。