岡山地裁(写真・時事通信)
同僚女性のはちみつに自分の体液を混入し、女子トイレに侵入する様子をSNSで得意げに報告するーー。2024年の2月ごろ、ネット上で話題となった徳田蓮被告の公判が、7月22日、岡山地裁でおこなわれ、懲役1年6月、執行猶予3年の判決が下された。
「徳田被告は、2023年8月から10月ごろにかけて、派遣先の住宅メーカーの女子トイレに侵入し、サニタリーボックスのなかに射精したり、同僚である女性の私物と思われるはちみつやコップに精子を混入する様子を、SNSにアップ。そのはちみつを、女性がそのまま知らずに飲んだことなどを嬉々として報告していました。ほかにも、駅や街なかで女性を盗撮した画像を、SNSにアップしていました」(事件担当記者)
ネット上では、徳田被告がアップした写真の背景や、映り込んでいたメモなどから、勤務先の住宅メーカーが特定され、このメーカーが《SNS上での当社に対する投稿について》とコメントを発表。警察が捜査を進めていることを明らかにした。
「結果的に、徳田被告は同社に派遣された社員だったことが発覚しました。一連の行為はあまりに卑劣ですが、徳田被告が罪に問われたのは器物損壊と建造物侵入のみ。しかも執行猶予までついたことで、SNSには多くの批判の声が投稿されています」(同前)
実際、Xでは、
《ハチミツ精子混入男、執行猶予なの!?は!?なんでこんなに甘いの!? 体液混入させたハチミツを実際に飲んだ被害者がいるんだよ。器物損壊じゃなくて性的暴行でしょ》
《体液混入というけど毒物混入と大差ないのに。軽い軽すぎる……》
《こんな甘々な判決じゃ、他にやる奴絶対出てくる》
《またやる猶予を与える岡山地裁》
と怒りの声が多数よせられている。
果たして、今回の判決は真っ当なのか。刑事事件に詳しい弁護士はこう語る。
「私も、個人的な感情としてはおかしいとは思いますが、簡単にいえば、今回の被告が起こした行為は、現行の法律の規制では公然わいせつや強制性交等の『わいせつ関連』の罪には問えないということです。
かといって、精液を飲ませたことによる傷害罪の成立も難しい。たとえば、これが睡眠薬入りのドリンクを相手が知らない間に飲ませて、相手を眠らせたとなれば、『傷害』です。しかし、今回のケースでは、間接的に精液を飲ませたとはいえ、これにより精神的に支障をきたしたというのでなければ、相手の健康への悪影響や、健康被害の証明は難しいですよね。
よって、刑事事件として罪に問えるのは、住居侵入と器物損壊しかなかったということで、この判決になったと思われます。初犯ですし、3年以下の懲役だと執行猶予がつけられるので、相場的にはあり得るでしょう」
一方で、この弁護士が首をかしげるのは“示談金”だ。一部報道によれば、今回の公判では、徳田被告が被害者の女性2人に謝罪文を送ったものの、示談が受け入れられなかったことや、被告が派遣元の企業に対して、約160万円の示談金を支払ったことなども明かされた。示談金は母親が立て替えたという。
「もしかりに、うちの弁護士事務所でこんなことをされたとしたら、160万円じゃ済まさないですよ。別にお金がほしいわけではなく、『我々はそういうことを許しません』ということを表明する意味でも、その損害を算定したうえで、場合によっては1000万円超の単位で訴えることもあるでしょうね。回収できなかったとしても、そうすることが企業としてのメッセージにもなるので。
もし私が検察官だったら、被害者女性のスタンスにもよりますが、被害者に診療を受けてもらったうえで、被害によって精神的なダメージを受けたことについて診断書を出してもらい、住居侵入罪と器物損壊罪に、さらに傷害罪をつけることを考えますね。誰が見ても相当、悪質な事件ですし、被害者がひどく嫌な思いをしたのは間違いないわけですから。世間が納得しないのも当然だとは思います」(弁護士)
決して許される行為でないのは、間違いない。