【森 功】積水ハウス地面師事件における「最大」の謎…入院してるはずの地主から届いた内容証明郵便は誰が書いたのか?

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2024年にNetflixで配信された『地面師たち』の「その後」をご存知だろうか。主人公のモデルとなった積水ハウス事件の主犯格・カミンスカス操が筆者と交わした手紙には、ドラマよりも遥かに恐ろしい詐欺師同士の生き残りをかけた戦いが綴られていた。「俺も地面師たちにダマされた!」「首謀者は別にいる!」と獄中で叫ぶ男が語る、地面師事件の真実とは。『地面師vs.地面師 詐欺師たちの騙し合い』より一部抜粋・再編集してお届けする。
【前編を読む】「受け取ったのは半分(1億円)だけ」…積水ハウス事件・カミンスカス被告による“冤罪の訴え”と“史上最高額地面師事件”の内幕
積水ハウス事件における最大の謎として、しばしば取り上げられる出来事がある。一つは、積水ハウスが羽毛田やイクタHDと海喜館売り渡しの仮契約を結んだあと、積水側に届いた内容証明郵便の一件である。
仮契約からわずか2週間後の2017年5月10日以降、立て続けに4通の郵便物が本社に届いている。それは積水ハウスが18年1月24日付で自ら設置した調査対策委員会の報告書にも掲載されている。内容証明郵便には、差出人の言葉として簡潔にこのように書かれていた。
〈(私は)本件不動産の所有者だが、仮登記がなされ驚いている。売買契約はしていないから、仮登記は無効であるので抹消せよ〉
差出人の名義は本物の地主である海老澤佐妃子で、住所は五反田の海喜館そのものだった。慌てたのは積水ハウスの営業担当者たちである。
「いったいこれは、どうなっているのでしょうか」
急遽同社の営業次長や事業開発室課長が、カミンスカスや中間業者の生田らに面談を求めた。その経緯は、事件摘発から2年以上経た20年12月7日付積水ハウスの検証報告書に記録されている。積水側の質問に対し、生田は述べた。
「海老澤さんは現在沖縄旅行に出かけています。通知書は前野さんの仕業だと思われます」
地主の海老澤と内縁の夫が痴話げんかをした挙げ句、嫌がらせのために積水ハウスとの取引を妨害しようとしたという趣旨だが、あまりに不自然である。むろん内容証明郵便は前野こと常世田の仕業などではない。
積水ハウス側はカミンスカスと生田に対し、正確な事実確認を要求した。そのため、17年5月19日の海老澤こと羽毛田との面談、さらに海喜館の内覧会が実現する。
もとより現実には沖縄旅行や痴話げんかなどは存在しない。本物の地主である海老澤佐妃子は末期癌で入院中であり、内容証明郵便を投函できるような状態ではなかった。彼女は6月24日に病院で息を引き取っている。
では、誰が内容証明郵便を出したのか。そこも長らく謎として残されていた。
実は彼女には母親が同じ異父弟が2人いた。海老澤佐妃子にとっては弟にあたる鳥海一郎、二郎(ともに仮名)兄弟である。
しかし鳥海兄弟は長らく、姉の佐妃子の存在を知らず、とうぜん姉が旅館の女将であることも気づいていなかった。実はこの異父弟が積水ハウスに内容証明付きの通知書を書いていたのである。
姉弟の関係についての詳細は章を改めるが、とどのつまり天涯孤独だと思われていた海喜館の女将海老澤佐妃子には、遺産の相続人がいたことになる。
そして地面師グループもそれを知っていた。そのことが事件をよりいっそうややこしくしている。
【もっと読む】「ハッキリ言います。私は無罪です」…Netflix『地面師たち』のモデルとなった事件の主犯が獄中から送った「手紙」の内容
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