人が認知症になるかどうかは、体質や遺伝といった「運命」で決まると思われてきた。だが最新医学の知見によれば、決してそれだけではない。日々の積み重ねが健やかな脳を作るのだ。
1章・前編記事『日本人に「認知症がぶっちぎりで多い」のはナゼなのか? 最新脳科学でわかった、黒幕とされる「ある脳内物質」の名前』に引き続き、解説していく。
人間の疾患を引き起こす要因は主に2つ。「日々の生活習慣」と、努力ではなかなか変えることのできない「特性」だ。それは認知症も同じであり、前編記事で紹介した習慣だけでなく、残念ながら「生まれつき認知症になりやすい要素」を持っている人もいる。
その代表例が血液型だ。日本人の約10%はAB型だが、実はほかの血液型と比べて認知症の発症率が高く、とくにO型と比較するとそのリスクは80%も跳ね上がる。これまで1万人の認知症患者を診察してきた認知症専門医の稲葉泉氏が、メカニズムを解説する。
「AB型の人は白血球の中でも、免疫機能に大きく関わるリンパ球が少ない傾向があります。白血球の働きと自律神経には密接な関係があり、リンパ球が少ないと自律神経のバランスが崩れやすい。結果的に体の酸化が進んで病気にかかりやすくなると考えられ、免疫機能が高いO型の人より認知症リスクも高まります」
生物には活発に動くときに働く交感神経と、休息や栄養の吸収を担う副交感神経がある。これら自律神経のバランスが乱れて交感神経が過剰に働くと、人は怒りっぽくなってしまう。
「前編記事でも説明したように、交感神経が過剰に働くとイライラが加速するだけでなく、全身、とくに脳の血流が悪くなって脳が劣化していきます。結果的に海馬機能などが低下し、認知症のリスクがより高まるわけです」
認知症になりやすい人には、ほかにも「意外な特性」がいくつもある。最新の研究成果を参照しつつ紹介していこう。
そのうちの一つが、利き手だ。加藤プラチナクリニック院長で脳内科医の加藤俊徳氏は、「右利きのほうが左利きより認知症になりやすい」と断言する。
「人間は体を動かすとき、右半身に対しては左脳が、左半身には右脳が指令を出しています。つまり右利きは左脳、左利きは右脳が発達しやすい一方で、使っていない部位はしだいに衰えて萎縮します。
駅の自動改札機を見てもわかるように、現代社会は右利きに合わせてデザインされている。左利きの人は日常生活でも右手を使わざるを得ないため、脳全体が満遍なく刺激されて認知症になりにくいのです。
以前、宮本武蔵のように両手で別々の刀を振る二刀流の剣道有段者の脳を調べたことがありますが、右脳も左脳も非常に発達していました。こういった方は認知症になりにくいでしょうね」
「週刊現代」2024年7月20・27日合併号より
認知症になりやすい特徴は、まだまだほかにもある。後編記事『ごはん派とパン派、認知症になりやすいのはどっち? 実は「驚異的な違い」があった』で紹介していこう。
ごはん派とパン派、認知症になりやすいのはどっち? 実は「驚異的な違い」があった