北海道旭川市で2021年にいじめを受けていた中学2年の広瀬爽彩(さあや)さん(当時14歳)が自殺した問題で、市の再調査委員会は30日発表した調査結果の概要版で「いじめが自殺の主たる原因であった可能性が高い」と因果関係を初めて認めた。さらに、学校と市教育委員会について「対応次第では自殺のリスクを発見し、減じる要因となり得たのに、果たせなかった」などと厳しく批判した。【横田信行、金将来】
旭川中2死亡 尾木ママ「出発点がおかしい」
記者会見は、再調査委員会が報告書の概要版を今津寛介市長に提出した後に開かれ、教育評論家の尾木直樹委員長らが対応した。21年に設置された別の調査委が認めなかった、いじめと自殺の因果関係を今回の再調査委が認めた理由などについて質問が相次ぎ、会見は約2時間半にわたった。
再調査委は22年12月に第1回の会議を開催。以降、22回の会議で、遺族や関係する生徒、教員や教委担当者ら延べ34人に聞き取りを実施するなど調査を進めた。
報告書は完成したが、再調査委は今回、約400ページに及ぶ報告書全体の提出を断念した。その理由について、以前の調査委の報告書と見られる文書が6月、非公表部分の黒塗りがない形でウェブ上に流出し、遺族側が反発していることを挙げた。個人情報などの保護措置や市の情報管理を徹底したうえで、年内のできるだけ早い時期に提出する方針を示した。
報告書は、学校の対応について「いじめではなく、(加害)生徒の問題行動とのみ捉え、(広瀬さんの)心身の苦痛をふまえたいじめの認知、対処を怠った」「転校先の中学校にいじめの引き継ぎを行わなかった」と非難。市教委についても「いじめの問題としないことを意図して、学校に対して指導助言を怠った」と厳しく指摘した。
尾木委員長は「なぜ亡くならなければいけなかったのか、遺族が抱く悲しみ、苦しみに寄り添う気持ちを大事にして調査した。解明するのに長い期間がかかり、苦しめてしまった。今後二度とこのようなことを繰り返さない社会にしたい」と述べた。

遺族側弁護士は報告書概要の提出を受け「要望をはるかに上回る充実した内容で、高く評価したい」とのコメントを出した。