選挙戦中盤になっても“カオス”な光景が続く東京の知事選に、今度は政見放送で脱ぐ女性候補が現れた。ポスター掲示板ジャックを敢行した「NHKから国民を守る党(NHK党)」の立花孝志党首の誘いで選挙に参戦した内野愛里候補(31)。実は「選択的週休3日制」という公約をかかげており、まずは“政見放送ストリップ”で注目を集めてから政策を説明する戦略があるらしい。本人を直撃した。
やりたい政策はあるというが…
そんなあいさつで始まる政見放送がNHKで流れたのは6月27日深夜。
「私は愛里、内野愛里。知っている人は知っている。知らない人は覚えてね」名前を連呼し、ほかには「LINEで友だち申請してね」と呼び掛けるだけ。政策が出てこないまま2分半ほど続いたところで、内野氏は脈絡なくシャツのボタンを外しはじめる。「は~、暑いね~。緊張で、暑くて、困っちゃうわ」そう言ってシャツを一気に脱いだ内野氏。下にはチューブトップを身に着けており、ハダカではなかったが、画面下の名前のテロップ部分で胸から下が隠れる位置を取って腕を組み、何もまとっていないかのような演出をしながら「カワイイだけじゃなくてセクシーでしょ?どう?やだ。そんな目で見ないで、ふふ。内野愛里、そろそろ覚えた?」と続けるのだった。ただし、政策についてはその後、一言も語られることはなかった。
「6月20日の告示日にはグラドルの桜井MIUがハダカでM字開脚したポスターが掲示板に現れ、貼りだした河合悠祐候補に警視庁が、都迷惑防止条例違反容疑で警告を出してはがさせています。今度は脱ぐ姿を見せる候補まで出てきて、完全に選挙が一部候補者の売名行為の場になってしまった。もう終わってます」と社会部記者はアタマを抱える。
ネット界隈でもXに「こんなんがでるから今後供託金300万じゃなくて3億でもいいわこれ」「炎上狙いの売名」と非難する書き込みが。一方で、「都知事になったら何してくれるの?」という疑問も出ている。そんな巷の声を本人にぶつけてみた。
「私、出身は静岡です。東京の大学を卒業した後、会社員もしばらくさせていただいて、コロナ禍のさなかの2020年から赤坂のバーで店長をやっていました。その後、22年末に今のお店を見つけて始めたんです」そう語る内野氏は現在、中野区内でバーを経営するママだ。バー店内で取材に応じた内野氏は政見放送のような甘ったるい口調ではなく、普通の口調だ。「NHK党の立花さんは赤坂のお店でお客さんとして知り合い、こちらのお店にも来てくださるようになったんです」
その立花氏率いるNHK党は知事選で24人の候補者を立て、掲示板ジャックを進行中。内野氏はこの24人のうちの1人として、NHK党側に300万円の供託金を負担してもらい出馬した。ポスターには課金制SNSに誘導するQRコードが載せられ物議をかもしているが、これも党にお任せだという。「誘われたのはほんと最近、5月の中旬です。『愛里ちゃん、都知事選、出ん?』みたいな。(笑)。立花さんはポスター掲示板ジャックのため30人くらい擁立したいけれど『若い女性がいない』って言うんです」(内野氏) 最初は「知事選出るのはさすがに、みたいな感じだったんです」というが、なぜ気持ちが変わったのだろう。
「去年の秋にカードショップを始めたんですけど、それがすっころげたんですよね。立花さんは『(選挙の)お金は心配しなくて大丈夫』って言うし、もともと舞台に立たせてもらったりしたこともあるので、求めてもらっているならやってみよう、と。借金を返済するのに、今のこの暮らしのまま何も変わらないと、本当にただお金を返していくだけの生活になっちゃうなって思ってたので」(内野氏)カードショップ経営でできた借金を返済するため、名前を売って新たな仕事のオファーを呼び込もうと知事選出馬を決めたというのだ。そんな内野氏の“選挙戦略”を描いたのも立花氏だという。
「政見放送でインパクトのある文言を出そうとなって出てきたのが『カワイイ私の政見放送を見てね』。立花さんが言うには『愛里ちゃん、かわいいからな。このかわいさがちょうどええねんって(笑)。60点の可愛さ』みたいな(笑)。まあ世間から見て、(自分は)めちゃくちゃ可愛いっていう感じではないんです。分かるんです。どちらかというと小動物とか、ワンニャンみたいなかわいさ、そういう感じだと思うんですよ」(内野氏)このコンセプトに“脱ぎ芸”も加えて政見放送のシナリオが練られたというのだが…
「どういうのがいいんですかねと聞くと、立花さんは『名前を連呼したらええんや』みたいな。『愛里は上着とか脱いだらええんちゃう?水着とかなったら』とか言われて、水着はヤだなって思って。で、みんな『ハダカ、ハダカ』って言ってるけど、チューブトップ着てるから個人的には上着を脱いだだけ、みたいな気持ちなんですよね(笑)。ええ、脱ぐのは立花さん(の発案)です。立花さんは敏腕プロデューサー、“政界の秋元康”なんで」(内野氏)
しかし、チューブトップを着ていてもヌードを想像させる演出だったのでは?」とたずねると「ハダカっぽく、っていうのも立場さんのアイデアだし、私もどうせやるんならそうしようって思ってました」と否定はしない。
非難が出ていることには「暑くて上着脱いだだけなのにね。でも『どう? セクシーでしょ?』って言っちゃったからだと思うんですけど」と、つかみどころがない答え。「やりすぎた、とか、マズいことをしたとの気持ちはないのか」と聞くくと「いや、もう、役を演じた気持ちでやってたんで」と話すのみだった。
はたして政見放送の“効果”は出ているのだろうか。内野氏によると、出馬後LINEでは1日100~300件の友だち申請が届き、一生懸命返事をしていたが、申請の数は政見放送の放送後に激増したという。「友だち申請は(政見放送前の)100倍くらいいってるんじゃないですかね。1分でパパパッと何本も届くときがあるし、増え方がえぐー、みたいな感じで。送られてくるのが多すぎて、すぐに返すのは無理なんです」(内野氏)万が一、当選してしまったらどうするのだろうか。「そりゃ、ガンバらせていただきます。まあ、副知事に立花さんをお呼びして、私がやりたいことをやるにはどうしたらいいか、を相談させてもらって」
ここで「知事になってやりたいことはあるのか?」と問いかけると内野氏はこう語った「やりたいことは、選択的週休3日制です。土日に加えて平日からも希望する曜日を1日休みにするんです。(週の中で)中休みが入ると疲れが取れるから、残りもダレずに頑張れるじゃないですか。私、会社員だった時に起きるのがしんどくて。週5日ずっと働きづめって大変なんですよ。間に休みが欲しいってすごい思ってたんで」
もっともこの“公約”は出馬を決めてから考えたという。「YouTubeとか生放送で出演する番組もこの先ちょいちょいあって。(7月から)街頭演説もやらせていただくんで、その時にちゃんとお話して動画を見てね、と。政見放送で爆発して、他のところで真面目にやったらみんな『ヤベえ女を見に行くか』みたいな感じで見に来てくれるじゃないですか」そう話す内野氏。「でもやっぱり脱ぎ芸は、選挙をバカにしているんじゃないですか?」と問うてみたら、こう返って来た。「泡まつ候補としてテレビにも取り上げてもらえないし、真面目にやっても見てもらえないとなったら、もう真面目じゃなくやって、『うわ、なんやコイツ』って来たところにちゃんと真面目に話したやつを見てもらった方が効率いいじゃないですか」(内野氏)投票まで残るは1週間。カオス首都決戦は続く…。
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班