沢山の人の手が触れるものに触れられない、潔癖症の人ってたまにいますよね。除菌のスプレーやティッシュを使うぐらいならまだ他の人に影響はないものの、行き過ぎると周りの人を困惑させてしまうことも。今回はそんな潔癖症の人に出会った経験のある筆者の知人、Eさんから聞いたお話です。

Eさんは当時スーパーのレジ打ちのパートをしていました。
安くていいものを揃えていることで有名なお店だったため、レジはいつも長蛇の列ができるほど混みあっていました。
「ふぅ……今日も忙しいな」その日は特売の日だったこともあり、いつもよりお店が混雑していて、全レジを解放してもお客さんがどんどん並びます。
「よーし、頑張るぞ!」忙しくなると燃えるタイプのEさんは、張り切ってレジ打ちをこなしていました。
「いらっしゃいませ!」Eさんが1人の女性客からカゴを受け取り、商品をスキャンしようとしたときでした。
「あ、触らないで! 汚いから!」突然女性客がそう叫び、Eさんがスキャンしようとした商品を奪い取りました。「あなたお金触ってたでしょ、汚いのよ!」「は、はあ……」そう言われても、カゴの中には商品がいっぱいに入っているため、手に取らないとスキャンすることができません。
「すみませんが、触らないと会計ができなくて」 Eさんがそう言うと、その女性客は顔をしかめました。「手を洗ってから触ってよ! ほら早く、手を洗って来て!」しかしその女性客の後ろには他のお客さんが長蛇の列をなしています。今Eさんがレジを離れるわけにはいきません。「どうしよう、誰か呼ぼうかな」誰かにレジを代わってもらおうとしましたが、特売日であるため全員が忙しく動き回っていて、手の空いている人などいません。
「早く、手を洗って来て!!!」女性客はイライラとした様子でEさんに言いました。
Eさんがどうすべきか迷っていると、突然後ろから声が響きました。「お客様、セルフレジがありますので、そちらを使っていただけますか」「て、店長……」それは偶然レジに溜まったカゴを回収に来た店長でした。「仕方ないわね!」お客さんはカゴをひったくるようにしてセルフレジの方に向かいました。
Eさんの働いているお店は年配の方が多く、セルフレジを使いたがる人が少ないため、空いていたのが幸いでした。
その後Eさんは急いでレジの列をさばき、事なきを得たそうです。「店長、今日はありがとうございました!」Eさんがお礼を言うと、店長は何事もなかったように笑って答えました。「これからも来られるかもしれないから、潔癖症の人はセルフレジにご案内するようにみんなに共有しとくよ」「はい!」
その後例の女性客は何度もスーパーに買い物に来ましたが、有人レジに並ぶ度に「触らないで!」と言うので、その都度スタッフがセルフレジに案内するようになったそうです。セルフレジのタッチパネルが苦手な潔癖症の方もいるのではと思いましたが、どうやらその女性客は「お金を触った店員の手が汚い」と考える人だったようです。
潔癖症の方の気持ちもわかりますが、商品に触らないで会計をするのは非常に困難ですよね。できれば自分からセルフレジに並んで欲しいものです。
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
ltnライター:齋藤緑子