うつ病とは、気分が強く落ち込むなどの精神的な症状の他、眠れない・身体がだるいなどの身体的な症状が現れる病気です。
生活への影響が非常に大きい病気であり、誰しも発症する可能性があります。悪化すればさらに精神的・身体的な症状が現れるケースもあるため、早期発見が大切です。
そのためにも、うつ病の初期症状を知り早期に治療を受けられるようにしておきましょう。
本記事では、うつ病の初期症状・進行した場合の症状・対処方法・病院での治療方法をご紹介します。
※この記事はMedical DOCにて『「うつ病」の初期症状・原因はご存知ですか?医師が監修!』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。
監修医師:伊藤 直(医師)

精神的負担や強いストレス
日常的な小さなストレスの積み重なり
治療薬
精神的負担や強いストレスというのは、大きな環境の変化にあたるものです。例えば、病気・大切な方との離別や死別・転職・配属転換・引っ越しなどが挙げられます。これらの要素は、頻繁ではありませんが大きなストレスとなります。大きな環境の変化によって、精神的ストレスを感じるのです。次に、日常的な小さなストレスの積み重なりも原因になると考えられています。例えば、仕事・学業・人間関係・孤独感などが挙げられます。大きなストレスではありませんが、日常的なストレスが積み重なって徐々に精神的負担が大きくなり、うつ病を発症することがあるのです。また、一部の内科治療薬などが原因でこの病気を発症する可能性もあります。このように原因は多岐にわたるため、はっきりとは解明されていません。しかし、多岐にわたるからこそ誰しも発症のリスクがあることがわかります。

涙もろくなる
気分の落ち込みが続く
喜び・楽しみが感じられない
食欲がわかない
眠れない
全ての症状が現れるわけではありません。しかし、通常であれば回復するような気分の落ち込みなどが、時間が経過しても回復しないような状態が初期症状の特徴です。涙もろくなる症状は、感情の高ぶりやストレスを感じた際に誰しもありますが、うつ病の初期症状として現れる際には少し違います。初期症状としての涙もろさは、心のバランスを保つ働きがあるセロトニンの機能が低下することで神経伝達物質の乱れ、感情のコントロールができなくなることで引き起こされます。これまで泣かなかったタイミングで涙が出るようなこともあるでしょう。気分の落ち込みについても、通常であれば時間が経過することで落ちついて気持ちが軽くなります。しかし、初期症状として現れる気分の落ち込みは、時間が経過してもなかなか改善しないことが特徴です。落ち込んだ状態が2週間以上続くような場合や、何をやっても気分が晴れない状態が初期症状としての特徴に挙げられるでしょう。喜び・楽しみが感じられないことも初期症状のひとつです。好きなことや普段なら楽しいと感じることでも、喜びを感じられずやる気がなくなってしまいます。食欲がわかないことも症状のひとつに挙げられます。うつ病になると自律神経にも悪影響を及ぼし、自律神経と密接にかかわる胃・腸の働きが弱まるため、食欲がわかなくなってしまうのです。食欲不振・食事量の減少・食後の胸焼け・吐き気といった、さまざまな症状を引き起こします。眠れないといったものも代表的な初期症状です。不眠症状は、うつ病発症者の約8割の方が悩まされている症状です。眠れない症状といっても、入眠困難・中途覚醒・早朝覚醒・熟眠障害などさまざまなタイプがあります。中でも、入眠困難な症状が現れる方が多く、入眠に30分以上かかる場合は注意が必要です。

自殺を考えてしまう
引きこもりになってしまう
うつ病によって自殺を考えてしまうケースは少なくありません。気分の落ち込みなどから、常に自殺のことを考えてしまうような危険な状態にあることがあるのです。また、引きこもりになるケースもあります。現実から目をそむけたくなることで、引きこもりになってしまうのです。しかし、うつ病が改善したからといって、引きこもりから抜け出せるとは限りません。そのため、一度引きこもりになると非常に大変な状態になってしまいます。

うつ病は、精神的・身体的ストレスがかかることで発症する病気です。大きなストレスでなくても、小さなストレスが日々重なることで発症する可能性もあります。
そのため、自分では気づかないうちにうつ病を発症しているケースもあります。自覚症状が少ないあまりに、受診・治療が遅れるケースもあるでしょう。
少しでも異変を感じた場合には医療機関に相談しましょう。受診に抵抗などを感じる必要はなく、まずは気軽に相談することが悪化を防ぐことにつながります。
参考文献
うつ病ハンドブック
うつ病( 厚生労働省)
日本うつ病学会 うつ病看護ガイドライン