「熱中症」というと夏真っ盛りの7、8月頃になるイメージがあるかもしれない。しかし、暑さに体が慣れていないのに気温が上昇する梅雨の晴れ間や梅雨明けにも、実はリスクが高い。
常に命にかかわる危険性がある熱中症だが、速やかに適切な応急処置を行うことで、重症化を防ぐことができる。
そこで、いざというときのために知っておきたい熱中症の症状と応急処置の手順の要点を、日本気象協会のサイトから紹介する。
熱中症に素早く対処するためには、まず症状を知っておこう。
熱中症とは、高温多湿な環境に体が適応できないことで現れる様々な症状のこと。もし以下の7つのような症状が一つでも出たら、熱中症にかかっている危険性がある。
【重症度I(軽症)】
(1)めまいや顔のほてりめまいや立ちくらみ、顔がほてるなどの症状が出たら、熱中症のサイン。 一時的に意識が遠のく、腹痛などの症状が出る場合もある。
(2)筋肉痛や筋肉のけいれん手足の筋肉がつるなどの症状が出る場合がある。 筋肉がピクピクとけいれんしたり、硬くなったりすることも。
【重症度II(中等症)】
(3)頭痛、吐き気、体のだるさ体がぐったりし、力が入らない。吐き気やおう吐、頭痛などを伴う場合もある。
【重症度III(重症)】
(4)体温が高い、皮膚の異常体温が高く、皮膚を触るととても熱い、皮膚が赤く、乾いているなど。
(5)呼びかけに反応しない、まっすぐ歩けない声をかけても反応しなかったり、おかしな返答をしたりする。または、体がガクガクとひきつけを起こす、まっすぐ歩けないなどの異常があるときは、重度の熱中症にかかっている。すぐ医療機関を受診しよう。
(6)水分補給ができない呼びかけに反応しないなど、自分で上手に水分補給ができない場合は大変危険な状態。この場合は、むりやり水分を口から飲ませることはしないように。すぐ医療機関を受診しよう。
【その他の症状】(7)汗のかき方がおかしい拭いても拭いても汗が出る、もしくはまったく汗をかいていないなど、汗のかき方に異常がある。
※重症度の目安I…現場で対応できる軽症II…病院への搬送を必要とする中等症III…入院して集中治療の必要のある重症(環境省「熱中症保険環境マニュアル2022」より)
この基準を目安に、症状を自己判断せずに医療機関を受診しよう。
上記のような症状があった場合、段階に応じた対応が必要となる。次の(1)~(3)の手順に従ってすぐに応急処置をしてほしい。
(1)意識があるか?ある→クーラーが効いた室内や車内などの涼しい場所へ移動する。屋外で、近くにそのような場所がない場合には、風通しのよい日かげに移動し、安静に。
→衣服を緩めて体の熱を放出させる。そして、氷枕や保冷剤で両側の首筋や脇、足の付け根などを冷やす。皮膚に水をかけて、うちわや扇子などであおぐことでも体を冷やすことができる。ない場合はタオルや厚紙などで代用を。
ない→救急車を呼ぶ。救急車が到着するまでの間に、上記の応急処置を始める。救急車を待っている間にも、現場で応急処置をすることで症状の悪化を防げる。この時、呼びかけの反応が悪い場合には無理に水を飲ませてはいけない。
(2)水分を自力で摂取できるか?できる→水分・塩分を補給する。大量に汗をかいている場合は、塩分・糖分を一緒に補給できるスポーツドリンクや食塩水(1Lに対して1~2gの食塩を加えたもの)がよい。カフェインやアルコールはNG!
できない→医療機関へ。本人が倒れた時の状況知っている人が付き添って発症時の様子を伝える。なお、おう吐の症状が出ている場合、水分が気道に入る危険性があるので、むりやり飲ませない。
(3)応急処置を行って症状が良くなったか?良くなった→そのまま安静にして十分に休息を取り、回復したら帰宅しよう。
良くならない→医療機関へ。やはり、本人が倒れた時の状況を知っている人が付き添って発症時の様子を伝える。
今回紹介した症状や応急処置の方法を、家族や友人、チームメイトなど、日々一緒に過ごす人たちとシェアできればより安心だ。
また、熱中症の危険をともなう活動をする際は、いざというときに備えて、緊急連絡先や医療機関の所在地・連絡先などを事前に調べておいてほしい。
(日本気象協会推進「熱中症ゼロへ」プロジェクト より)
イラスト=さいとうひさし