政治資金規正法改正案の修正を巡って生じた岸田首相(自民党総裁)と麻生副総裁との溝が埋まらずにいる。
関係修復に腐心する首相は会食を呼びかけているが実現しておらず、麻生氏側の不満は根強いとみられている。政権の後ろ盾となってきた麻生氏との関係悪化が長引けば、首相の総裁選での再選戦略にも影を落としそうだ。
首相は11日午後7時過ぎ、公務を終えると首相官邸を出て、外出することなく公邸に戻った。複数の政府・自民党関係者によると、外遊前に首相は麻生氏との会食を希望していたものの結果的に実施されなかった。
首相と麻生氏の亀裂は、規正法改正案の修正で首相が公明党に譲歩したことに端を発する。麻生氏は公明の求める規制強化を実施すれば若手の政治活動が困難になると何度も首相に訴えていたため、首相の対応に失望したとみられる。
首相は折に触れて麻生氏と会食し、1月に岸田派解散を表明し、麻生氏から根回し不足だと不興を買った際も、3日後には夕食をともにして亀裂修復に動いた。しかし、今回は公明と修正合意に至った党首会談後、1週間以上が経過しても機会を得られていない。
党本部では11日、茂木幹事長を交えた3氏で約40分間にわたって面会した。毎週実施する「3者会談」で、普段は30分程度で切り上げるのが通例だが、この日は40分ほどかけて話し合った。党首会談直後の前回の3者会談は麻生、茂木両氏が沈黙する重苦しい雰囲気だったことから、党内では「首相がなるべく長く時間を取ろうとしたのでは」との見方が広がっている。
麻生氏は歩み寄りのそぶりを見せていない。8日の福岡市内での講演では「将来に禍根を残すような改革は断固、避けねばならない」と強調し、首相の対応を暗に批判した。約20分間の講演では、首相の名前にほとんど触れなかった。
麻生氏が率いる麻生派は55人を擁し、総裁選の国会議員票ではまとまった一大勢力となる。首相周辺は首相の再選戦略を念頭に、「どこかで関係を修復しないとまずい」と漏らす。
一方、麻生派では、自前の総裁候補を担ぐべきだとの声が勢いを増している。派内には総裁選に意欲があるとされる河野デジタル相がおり、同派中堅は「政策集団が総裁候補擁立を目指すのは当然だ」と語る。
麻生氏は「ポスト岸田」の一角の茂木氏とも関係が良好で、首相との不和は総裁選の構図に影響を与える可能性がありそうだ。