4月1日に青森県七戸町の深さ約6メートル土中から、プラスチック製の容器に詰め込まれたトラック運転手の谷名幸児さん(54)の遺体が見つかった事件。元勤務先の運送会社「十枝内運輸」の社長、十枝内伸一郎容疑者(47)らが殺人容疑で逮捕され、青森県警の捜査が進んでいる。
【写真】被害者・谷名さんの自宅。面識のない市ノ渡被告と陰に隠れていた十枝内容疑者らの計画的な手口とは
NEWSポストセブンは、谷名さんの息子Aさんに取材した。Aさんはシングルファザーだった谷名さんと10年以上の間、2人で生活しており突然の父の死に「なぜ父が殺されなければならなかったのか」と嘆く。そして谷名さんが容疑者らと長年不仲だったことも明かした。
「父はかなり警戒していたので、十枝内容疑者だと分かっていたら家の外に出なかったと思います」(Aさん)──十枝内容疑者もこれを分かっていたのだろう。1月7日夜、谷名さんを連れ出した人物は市ノ渡歩美被告(37)=監禁などの罪で起訴=らだった。谷名さんと面識がないとみられる歩美被告であれば、警戒しないで出てくると考えたようだ。十枝内容疑者と歩美被告は縁戚の関係にあることが分かっている。
Aさんは警察から谷名さんが自宅から連れ去られる状況を聞いていた。
「宅配便が来たと思って、父は外に出たそうです。陰に隠れていた十枝内が手を出してきて、父は倒れこみました。すると、竹内(洋容疑者)が足を抑えて父を起き上がれないようにして、十枝内が体の上に馬乗りになって、何発か殴って……そのまま車に運ばれ、連れて行かれたんです」(Aさん)
後に谷名さんが残酷な手法で殺害されることを歩美被告は知っていたのだろうか。歩美被告と親しく事件後もやり取りが続いているBさんにも話を聞いた。立場上、取材に応じることに後ろ向きだったBさんだが、歩美被告についてどうしても言いたいことがあるという。
「歩美の父親と伸一郎(十枝内)の父親が従兄弟なんです。だから、伸一郎と歩美も親戚になります。2人が愛人関係にあると周りで言われているのは知っていますが、それは絶対にありません。もちろん挨拶などはしますが、2人とも子供はいますし、そんな関係ではありません。普段から会うような仲でもない」
事件について話を聞くと、Bさんは歩美被告は呼び出した谷名さんがその後どうなるかについては「知らなかった」と主張する。
「本人自身が深い事を考えてなかった。殺すとわかっていて呼び出したわけではない。そんなことを分かっていたら絶対に頼まれてもやりませんよ。軽い気持ちで伸一郎の頼みを受けてしまったんです。
宅配業者を装って、被害者の方を連れ出したと報じられていますが、そもそも宅配会社にお勤めしていたので、『装って』という言葉にも違和感があります。お正月あたりのことだったかと思いますが、忙しい時期で、そのままの格好かは分かりませんが谷名さんを呼びに行ったんじゃないかなと思います。事件が起きた後に私と歩美の父親でその宅配会社を訪れていまして、次の日には解雇になっています」
歩美被告は女手一つで子育てをするシングルマザーだった。
「離婚して何年か経っていますけど、歩美は子供4人を育てているんです。だから、昼夜一生懸命働いていたんです。夜は町内の飲食店でバイトをしていました。子供たちを本当に可愛がっていて素直でいい子です。店の他の女の子やお客さんからも好かれています。昼の仕事は解雇されましたが、飲食店の方々は彼女の復帰を待っているんです。罪を償って、戻ってきたらまた一緒に働きたいと……」
Bさんは勾留が続く歩美被告の面会に何度も行っているという。
「歩美は後悔していて、常に泣いています。もちろんやってしまったことが、結果的に大きなことに繋がってしまったのは事実ですし、取り返しはつきません。いつも歩美を見ていた私としては彼女を少しでも助けたいというのが本心です」
シングルマザーとして子育てをしていた歩美被告。十枝内容疑者から谷名さんの呼び出しを依頼され、安易な気持ちで受けてしまったということなのだろうか。十枝内容疑者のこともよく知るBさんは取材中、終始辛そうな表情をしていた。