栃木県那須町の河川敷で東京都内の夫婦の遺体が見つかった事件で、警視庁は1日、新たに実行役とみられる男2人を死体損壊容疑で逮捕した。
2人は「夫婦の遺体を処分後、数百万円の報酬を受け取った」などと供述。既に逮捕されている指示役の男ら2人も事件前に報酬を約束されたと説明しており、警視庁は4人とは別の人物が多額の金を用意し、事件を主導したとみて調べている。
新たに逮捕されたのは、いずれも住所・職業不詳、韓国籍の姜光紀(カングァンギ)(20)、元俳優の若山耀人(きらと)(20)両容疑者。姜容疑者は4月30日午後に神奈川県大和市のホテルで、若山容疑者は同日深夜に千葉市若葉区の知人宅で、それぞれ身柄を確保された。
発表によると、2人は同16日未明~朝、那須町の河川敷で千代田区の飲食店経営宝島龍太郎さん(55)と妻幸子さん(56)の遺体に火を付けて損壊した疑いがある。
捜査関係者によると、2人は前日の15日夜、品川区のコンビニ店で知人の平山綾拳(りょうけん)容疑者(25)(同容疑で逮捕)から車を借り、同区内の空き家付近で宝島さん夫婦と接触したとみられる。2人が乗った車は16日午前4時頃、那須町の遺体発見現場付近を走行していた。
2人は調べに対し、「平山容疑者から指示され、遺体を処分後に数百万円を受け取った」と供述。平山容疑者は17日朝に出頭しており、警視庁はこの間に3人が再接触したとみている。
一方、29日に同容疑で逮捕された住所・職業不詳佐々木光容疑者(28)は「ある人物から報酬を約束されて遺体の処分を指示され、平山容疑者に依頼した」と説明。逮捕時に現金数百万円を所持していた。平山容疑者の関係先からも現金約1000万円が押収されている。
逮捕された4人はいずれも宝島さん夫婦と面識がなかったとみられ、警視庁は別の上役が事件を計画したとみて、押収したスマートフォンの通信履歴を解析して背後関係を調べている。
1日に逮捕された若山耀人容疑者はかつて子役として活動しており、2014年放映のNHK大河ドラマ「軍師官兵衛」では黒田官兵衛の幼少期を演じていた。
出身地の岐阜県美濃加茂市は同年3月、当時小学4年生だった若山容疑者に、市の魅力をPRしてもらう「もっとみのかも夢大使」を委嘱していた。芸能界引退を理由に20年5月に大使を辞めたという。当時、担当課にいた男性職員は「いい子だったので(事件は)驚きでしかない」と話した。
警視庁は防犯カメラ映像を収集・分析する「リレー方式」で実行役ら3人の行方を追い、逮捕につなげた。
追跡の起点となったのは、遺体発見翌日の4月17日に東京・五反田駅前交番に出頭した平山容疑者の足取りだった。
平山容疑者は逮捕当初、「Aさんに遺体の処分を依頼された」と指示役について言葉を濁したが、警視庁は防犯カメラ映像から16日午前3時半頃、品川区の居酒屋で、若い男と合流したことを突き止めた。
2人は居酒屋を出た後、コンビニ店に立ち寄っており、警視庁は店内の映像からこの男が佐々木容疑者と特定。沖縄県に移動したこともつかみ、28日、那覇空港で身柄を確保した。
姜容疑者ら2人も同様で、遺体発見前日の15日夜、品川区のコンビニ店に設置された防犯カメラが、駐車場で平山容疑者から車を引き継ぐ様子を捉えていたことから特定されたという。