今の減少率が続くと696年後、日本の子どもがたった1人に――。
東北大・高齢経済社会研究センター長の吉田浩教授(加齢経済学)は4月22日、2024年版の「子ども人口時計」を更新し、696年後の2720年に国内の子ども(15歳未満)が1人になると公表した。少子化が加速しており、前年の推計より100年余り早まった。
子ども人口時計は、少子化問題に危機感を持ってもらおうと米国の「終末時計」などをヒントに、吉田教授が2012年に開発した。毎年、国の人口推計のデータを基に計算。こどもの日の前後に、同研究センターのホームページで公表している。
人口推計では今年4月1日時点の子ども(15歳未満)は前年比33・6万人減の1401万人で、1年間の減少率は2・3%。その数字を基に、吉田教授は、こどもの日の5月5日時点では1397万9189人と推計。そして子ども人口時計は、このままの減少ペースが続けば、「696年後の2720年1月5日」に1人になると予測した。
23年版の人口時計は、「798年後の2821年10月27日」で、それと比べ101年早まった。初年の12年版は「4147年」だったので、12年間で1427年早まったことになる。
24年版の予測は、23年の出生数が75万8631人で、8年連続の減少となったことが影響した。日本の「合計特殊出生率」(1人の女性が生涯に産む子どもの推計人数)も1・26で、人口を維持するために必要とされる2・07にはほど遠いのが現状だ。
出生数が減少している背景について、吉田教授は「不景気が長く続いた日本では、所得の低さを理由に結婚や出産ができない若者が増えた」と指摘。子育て環境の改善が必要とし、▽子どもの医療費や給食費の無償化など負担軽減▽男性の育児休業取得と、夫婦が「共働き、共育て」する社会の実現▽退職時期を10年延ばし、育休を3~5年取れるような制度改革――などを挙げた。
吉田教授は「出生数の減少が止まらない限り、『時計』の針が戻ることはない。日本が少子化で絶滅する最初の国になるかもしれない。女性や高齢者が就業できる環境を整え、全ての人が『総活躍』する社会を目指すべきだ」と訴えている。