ステップファミリー(再婚家族、複合家族)という言葉が随分と社会に認知されてきたが、大切なことを社会が理解していないが故に、悲劇が繰り返されている。筆者はADRという民間の調停機関を運営しているが、ステップファミリーをめぐる問題も多く持ち込まれている。養父母が子どもとの関係に悩む事例も多いが、子どもに養父母ができたことで実父母が悩むことになる事例もある。今日はそんな悲劇的な事例を紹介する(あるあるを詰め込んだ架空の事例である。)
記事前編は「子連れ再婚をした女性が『自分の子ども』を妊娠して愕然…そして襲ってきた『激しい不安』」から。
ヨシフミとアケミは3年前に離婚した。その際、5歳の娘ユイは母親であるアケミが引き取ったが、ヨシフミは定期的にユイと会い、父子関係を良好に保っていた。しかし、ある日、アケミから「再婚が決まったの。ユイが混乱すると良くないから、当分会わないでほしいの」と言われたのだ。ヨシフミからしてみれば、そんな一方的な話に同意するわけにはいかなった。アケミが再婚するのは勝手だ。そして、その再婚相手とユイが養子縁組することも、今の法律のもとでは阻止できることではない。しかし、自分には父親として会う権利があると思ったのだ。
そんな憤りを感じながらも、会社の同僚や先輩、幼馴染など身近な人に相談をしてみた。そうしたところ、「おまえの気持ちも分かるけど、父親が2人になったら子どもが混乱するのでは?」、「新しいパパとの関係が落ち着くまで、ちょっと待ってあげてももいいんじゃない?」といったアドバイスが多かったのだ。ヨシフミは納得いかなかったが、ユイを困らせてはいけないと思い、当面自分からは会いたいと言わないようにした。
そうして時間が経過し、いつの間にか5年、10年と過ぎていった。無性に会いたくなることもあったが、自分が身を引くことで、ユイが幸せな家庭で育つことができるならと我慢した。そんなある日、ユイから連絡があり、高校3年生のユイと再会を果たした。そして、そこで衝撃の事実を聞いたのだ。
アケミの再婚相手、つまりユイの養父はとんでもないモラハラ夫だったのだ。ユイとアケミは、理不尽に怒鳴られ、いつも男の顔色を見ながらびくびくと生活していた。面会交流がストップしたのも「おまえら、誰の金で生活できてると思ってるんだ。父親に会いに行きたいならそいつに生活費を出してもらえ」とユイとヨシフミが会うことにいい顔をしなかったからだ。しかし、ユイの大学受験を目前に夫婦が不仲となり、男がユイの学費を出さないと言い出したため、困ったユイは十数年ぶりにヨシフミに連絡をしてきたのだった。
この事例でも、社会において「実父」と「養父」の区別がされておらず、父親が2人いると混乱させてしまうという間違ったアドバイスが悲劇の発端となっている。本来であれば、ユイの実父母がしっかりと話し合って問題解決すべきであったし、それが難しいなら家庭裁判所で「面会交流」として協議することもできた。
それをしなかったため、ヨシフミはユイの大事な成長の過程に貢献できなかっただけでなく、ユイが辛い思いをしているのにも気付いてやれなかったのだ。
こうした社会の無理解、そして当事者自身の無知の背景には、「初婚家庭崇拝」があるのではないだろうか。ひとり親家庭やステップファミリーより、一度も離婚を経験していない初婚家庭こそが一番好ましいという考え方だ。
そのため、再婚当事者は、再婚相手が自分の子を我が子として受け入れてくれることを望み、別居親である実父母をいなかったことにしてしまうのだ。そして社会もそれを受け入れている。
筆者は、ステップファミリーは素敵で楽しい家庭になる可能性を大いに秘めているし、子どもにとってもプラスになり得ると考えている。実父母の他にも親身になってくれる大人がいることは、その子どもの財産である。ステップファミリーの魅力を最大限に引き出すには、初婚家庭に似せるのではなく、多様性に満ちた複合家族として機能することが大切なのではないだろうか。
子連れ再婚をした女性が「自分の子ども」を妊娠して愕然…そして襲ってきた「激しい不安」