〈「早期退職しようか迷っています」「いいんじゃない」勤続年数30年…“電通に人生を捧げた男”を裏切った「上司の一言」〉から続く
「私ね、離婚に関わる公正証書を書いたの。よく読んで検討して」
【ぼろぼろ】妻に愛想を尽かされた「元電通マン」のその後
約30年勤務した電通をやめた福永耕太郎氏。退職した直後に妻から三行半を突きつけられ、最終的には財産まで失ってしまった理由とは……? 新刊『電通マンぼろぼろ日記』(三五館シンシャ)より一部抜粋してお届けする。なお、登場人物はすべて仮名である。(全2回の2回目/前編を読む)
「電通をやめた男」はなぜ家族も財産も失うことになったのか? 写真はイメージ getty
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電通を退社して数日が経ったころ、家にいた私のもとに妻が歩み寄ってきた。彼女の手には数枚の書類が握られていた
「私ね、離婚に関わる公正証書を書いたの。よく読んで検討して」
私は絶句した。妻から三行半を突きつけられるとは思ってもみなかったからだ。数年前から、妻との夫婦喧嘩のたび、私が投げかけた暴言が思い起こされた。
「誰に食わせてもらってんだ!」「おまえのほうがこの家から出ていけよ!」
後悔とやるせなさがとめどなくあふれ出た。私が彼女に対して行なったのはパワハラ・モラハラだっただろう。私は気づかぬうちに、彼女の心をぼろぼろにしていたのだ。
私は妻と何度となく話し合いの機会を持った。時間はいくらでもあった。家のリビングに向かい合って座り、彼女の気持ちを聞いた。私はなんとか2人のあいだにある溝を埋めたいと思った。
だが、そのたびにむなしくなった。彼女はいつも生返事だった。その表情からは、「あなたと関係を修復するつもりはありません」というゆるぎのない拒絶が伝わってきた。彼女は私が投げかけた言葉を許すことができなかったのだ。
結局、妻は離婚の意思を翻すことはなかった。
彼女が書いた離婚に関わる公正証書を読み、慰謝料や財産分与など金銭的な決め事に合意した。
私たちは2人で公証役場に赴いた。
離婚の責任は全面的に私にあるとして、彼女に慰謝料を支払った。そして婚姻期間に築いた財産が共有財産であることを認め、その半額を彼女が受け取るべき財産と認定して、将来にわたり、その金額を分割して支払うことに同意した。彼女は「住まいを探さないで」と言って出て行った。
私は住んでいたマンションを売却して、売却益を彼女の口座に振り込んだ。だが、「共有財産に見合うお金を分割で支払う」当ては私にはもうなかった。形ばかり数回、振り込むと、私の手元に金は残っていなかった。
数カ月間、私は新しい仕事を探し続けた。そして、思い知った。広告代理店の営業あがりの60に近い人間が求められる職場などほとんどないことを。

すでに眠れなくなり、睡眠導入剤と向精神薬に頼っていた私はさらに落ち込み、精神を病んだ。
いくつかのカードローンが払い切れなくなり、弁護士のもとに駆け込んだ私は自己破産した。
(福永 耕太郎/Webオリジナル(外部転載))