宮城県の産業廃棄物処理会社で、病院から出た胎盤や血液などの「感染性廃棄物」が長年処理されず、放置されていたことがJNNの取材で明らかになりました。廃棄物の処理過程を管理する「マニフェスト」を偽造し、「処理した」とウソの報告も。「前代未聞の事態」。対応に追われる病院は…。そして、記者の直撃取材に会社の社長は…。
【写真で見る】JNNの取材で明らかに 採血管、臓器、胎盤などを放置か「感染性廃棄物(バイオハザード)」印の容器が山積みのまま
山積みのタイヤに水色のラインが入った大きな袋。分厚い扉の先には白色の容器がうず高く積み上げられています。
容器には黄色や赤色のマーク。「感染性廃棄物」を意味するバイオハザードと呼ばれる印です。この映像は宮城県加美町にある産業廃棄物処理会社「砂押プラリ」の内部を撮影したもの。ここで前代未聞の不正が行われているというのです。
「TBSインサイダーズ」への投稿「敷地内工場の冷蔵庫には、病院から回収した注射針、血液、胎盤が大量に残っています。数年にわたり、回収した感染性廃棄物が未処理のままの状態です」
実際に「砂押プラリ」に向かうと人気はなく、作業が行われているようには見えません。ここで一体、何が行われていたのか。元従業員がJNNの取材に応じました。
「砂押プラリ」元従業員「(Q.そもそも砂押プラリさんはどんな会社ですか)医療系の特別産業廃棄物ですかね、そういったものを回収をして処分をしている会社」
「砂押プラリ」では、病院から集められた「感染性廃棄物」を滅菌処理し、リサイクルするための分別作業を行っていたといいます。バイオハザードの印がある容器には何が入っていたのでしょうか。
「砂押プラリ」元従業員「赤いものに関しては液状のもの。採血管だったり、あとは臓器とかも入っている。胎盤ですね、産婦人科さんから出てくるやつ。目に見えて積まれていくのが分かっているような状況で」
胎盤などの臓器は、本来、焼却処分されますが、そのまま保管されていたというのです。
「砂押プラリ」元従業員「(Q.いつから溜め置かれていた)1999年から荷物があそこに積み上がっているんじゃないか。見当がつかないですね」
取材を進めると、「砂押プラリ」は宮城、岩手、福島、茨城、富山の合わせて5県で、100を超える病院などと取引関係にあったことがわかりました。
医療法人「清仁会」もそのひとつ。透析患者を多く抱えるこの法人では、使用済みのチューブなどの処理を30年以上にわたって委託していました。
医療法人清仁会 上田仁理事長「『砂押プラリ』は全然処分していないと。何十年も(廃棄物を)溜めて、実際は処分していないっていうのを職員から聞いた。まさかそんなとんでもない処分をしているとは思わなかった。怒りだけども通り越してね、呆れている」
この法人は2023年8月、保健所から届いた通知で「砂押プラリ」が廃棄物の処理を行っていない事実を知ったといいます。
医療法人清仁会 担当者「大崎保健所から来たやつ(通知書)で、実際には処理されていない可能性がありますと」
マニフェスト=産業廃棄物管理票とは、廃棄物が適切に処理されているかを確認する7枚綴りの書類です。
「砂押プラリ」では、このマニフェストに処分を終えたというウソを記載していたというのです。
医療法人清仁会 担当者「恐らく処分をしていないけど、虚偽の伝票ではないかということ。どこの業者に聞いても、『こんなの前代未聞だ』ということを言っていた」
さらに取材を進めると、多くの病院で混乱が起きていることがわかりました。「砂押プラリ」は2023年10月、宮城県から「産業廃棄物処分業」の認可を取り消され、現在は稼働していません。保健所は100を超える病院に、「砂押プラリ」の敷地内に残された感染性廃棄物の回収を求めています。別の病院の担当者は…
宮城県内の病院 担当者「こっちとしては、そんな急に言われて、そんなどうしたらいいのかっていう形で。数十年にわたり不正をしていた可能性があると聞いているので、それなのに数年おきに認可の更新の許可をしていたわけですから、行政側は。責任を病院側に押しつけているようで納得いかないというのが本音です」
なぜ感染性廃棄物を長年放置し、適切に処理したとウソまでついていたのか、「砂押プラリ」の社長を直撃しました。
記者「感染性廃棄物を長年にわたり放置していた?」社長「長年ってことはない」記者「バイオハザードのマークが付いたポリタンクが山積みになっているが」社長「それは未処理です。未処理だから先月(1月)かな、業者にお願いをして全部空に片付けた」記者「免許(認可)取り消しを受ける前は?」社長「冷蔵庫にありました。別に菌が余計に発生するわけではない。倉庫じゃないから」
感染性廃棄物を放置していたことを認めた社長。なぜそのままにしていたのか。
「砂押プラリ」の社長は、5年前の大雪で工場の屋根が崩落し、廃棄物の処理が滞るようになったと説明しました。
社長「(平成)31年に大雪になって工場が全部壊れた。それでも品物が入ってくるじゃない毎週。潰れたからってすぐに持って行くったって、飽和状態なんですよ、宮城県は処分場が。それじゃ困ったと、どうしようかと、それでそのまま仕事が続いたわけだ」
病院からの要望を受けて、やむなく引き受けていたと主張しました。マニフェスト(産業廃棄物管理票)の虚偽記載については…
社長「手で書くのが間に合わなくて事務のミス」記者「意図的ではなく?」社長「事務のミスです」記者「社長自らが(偽造の)指示したということは?」社長「そういうことはない」
あくまでも「事務のミス」と繰り返しました。「砂押プラリ」に残された廃棄物の行方は…。
小川彩佳キャスター:バイオハザードマークがついた感染性廃棄物がそのまま放置されているということですが、これは危険な状態ですよね。
TBS社会部 調査報道担当・神保圭作記者:取材では現場の環境への影響がどのようなものだったか分かりませんでしたが、宮城県産業廃棄物対策課・堀籠洋一氏は「環境に非常によくないという認識を持っている。早く現地から無くなる取り組みをしていく」と、環境への悪影響を懸念していて、医療機関に回収を求めているという現状です。
藤森祥平キャスター:環境省の資料によると、感染性廃棄物は血液や血を拭いたガーゼ、予防接種などで使った注射器などが含まれます。医療機関が適正な料金を支払って委託された業者が焼却や滅菌をして、最終処分場に送るという取り決めがあり、厳重に扱わなければいけません。医療機関も取り扱いに十分気をつけなければいけないと分かっているんですよね。
データサイエンティスト 慶応大学医学部 宮田裕章教授:医療機関内での廃棄に関しては、アクシデントがないように徹底してダブルチェックなどをしていますが、業者に任せた後はなかなか確認する術がありません。ただ一方で、廃棄責任は医療機関側にあるので、そこも含めて見ていかなくちゃいけないんですよね。今回の背景のひとつには、アナログで処理を続けてきたということもあるのではないかと思います。当事者の社長は「ミスだ」と言っていましたが、約25年続いてきたことなので、そうではないという印象です。アナログで処理し続ける環境を続けたことによって、それを第三者がチェックできない状態。コロナ禍でも日本はFAXで(感染者など)コロナのやり取りをしていて、「デジタル敗戦」と呼ばれていましたが、ここにもそういった影響があるんじゃないかなと感じました。
トラウデン直美さん:社長は「もう片付けた」と話していましたが、実際にはまだ残っているんですよね。それは今後どうするんでしょうか?
神保記者:▼「砂押プラリ」は従業員を10月で解雇していて作業ができない、処理する資金もないと社長は取材に答えています。▼宮城県は行政代執行で撤去するという方法もあり、費用を病院側に請求することができます。ただ、▼病院側が撤去しようにも、新たな産廃業者が見つからず困っているという状況です。
トラウデンさん:病院が他の処理業者を見つけられない、産廃業者がいっぱいになってしまっているという現状なのであれば、行政の力も入れて改善していかなきゃいけないところなのではないかと思います。(「砂押プラリ」の状況を)宮城県は気づけなかった、見抜けなかったんですか?
神保記者:宮城県は必要に応じて「砂押プラリ」に対して指導を行っていたと答えていますが、数年前の認可の更新をしているので、「不正に気づけなかった」と言えると思います。
法律では廃棄物は出した病院の責任となっているので、宮城県側が病院に回収を求める流れになっているわけです。一方で、撤去を求められてる病院側からすると、宮城県が認可を出してる、つまりお墨付きを与えていると捉えているわけで、行政にも責任があるんじゃないかという意見が取材の中で出てきています。
トラウデンさん:実際、廃棄業者が足りないという現状はあるんですか?
神保記者:取材の中で「新しい産廃業者が見つからない」という声をたくさん聞きました。現状、どれだけの数があるかという取材は尽くされていませんが、業者が足りないという状況があるように感じます。
小川キャスター:行政も含めた調査が必要にも感じますが、どうしたらこうした事態を防ぐことができるのでしょうか。
宮田教授:高齢化社会で医療ニーズが高まっていく中で、病院が更なるチェックをするというのはなかなか困難です。そういう意味では仕組みで解決していくというのがひとつのアプローチかなと思います。すでに行政と連携をしながら、デジタルでチェックする方法があります。郵便物が今どこにあって、誰がチェックしてるのかというのも可視化されていますが、医療廃棄物に関しても同じような取り組み始めています。こうした仕組みを使っていくというのはひとつのアプローチかなと思いますね。
NEWSDIGアプリでは『医療廃棄物の処理』などについて「みんなの声」を募集しました。Q.医療廃棄物が適切に処理されているか関心がありますか?「おおいに関心がある」…48.4%「どちらかといえば関心がある」…38.0%「どちらかといえば関心がない」…10.2%「全く関心がない」…3.4%
※3月20日午後11時39分時点※統計学的手法に基づく世論調査ではありません