頭痛や腹痛を感じるときに、市販の解熱鎮痛剤である「ロキソニン」または「カロナール」を選択するという方は多いのではないでしょうか? これら2つの薬は一見似ているように思えますが、実はそれぞれに特徴があり、状況に合わせた適切な使用が重要です。そこで今回は、薬剤師の山形さんにこれらの薬の作用の仕組み、使用時の注意点、症状に応じた適切な選択方法について詳しく解説いただきました。
監修薬剤師:山形 ゆかり(薬剤師)
近畿大学薬学部薬学科卒業。卒業後、総合病院で糖尿病病棟の薬剤師として勤務。病院での経験を通じて「食の重要性」を深く感じ、食に関する資格を取得。現在は、「健康は食から」というモットーのもと、薬膳など食の知識を活かした薬剤師としての啓蒙活動中。薬膳アドバイザー・フードコーディネーター・フードアナリスト
編集部
頭痛や腹痛の時に痛み止めを使用する場合、「ロキソニン」や「カロナール」が思いつくのですが、これらは市販で購入できますか?
山形さん
ロキソニンとカロナールは病院で処方される薬の商品名であり、成分名はそれぞれ「ロキソプロフェン」「アセトアミノフェン」です。薬局やドラッグストアで購入できるものは、成分名に近い名前で販売されていることが多いですが、全く別の名前のものもあります。探す場合には、「ロキソプロフェン」「アセトアミノフェン」という成分名で探す方が分かりやすいでしょう。
編集部
ロキソニンとカロナールの作用の仕組みは違うのですか?
山形さん
はい。ロキソニン(ロキソプロフェン)は非ステロイド性抗炎症薬です。痛みや炎症、発熱を引き起こすプロスタグランジンの生成を抑えます。これにより炎症による腫れや痛み、発熱を和らげます。一方、カロナール(アセトアミノフェン)は非ステロイド性抗炎症薬には分類されず、非ピリン系の解熱鎮痛薬です。主に脳の中枢や体温調節に作用して発熱や頭痛に効きますが、直接的な抗炎症作用はありません。
編集部
では、成分としてロキソプロフェンとアセトアミノフェンを含む薬の形状のタイプに違いはありますか?
山形さん
ロキソプロフェンは内服薬として錠剤、細粒、液剤、外用薬としてテープ剤やゲルなどがあります。錠剤はドラッグストアでも市販されていますよ。細粒や液剤は飲みにくい場合に便利ですが、医師の処方が必要です。外用薬は痛みのある部分に直接塗布するタイプでテープ剤、パップ剤、ゲル、ローションがあります。 外用薬は全て市販薬として購入可能です。使用する部位や使いやすさに応じて選択しましょう。一方でアセトアミノフェンは、内用薬には錠剤や細粒、シロップがあり、外用薬には坐剤があります。坐剤はお子さまや錠剤が飲みにくい場合におすすめで、市販薬としても入手可能です。錠剤は市販薬でも販売されていて、細粒やシロップはとくにお子さまに適しています。粉薬の一つのドライシロップは水に溶かして飲んでもいいですよ。
編集部
副作用に違いはありますか?
山形さん
ロキソニン(ロキソプロフェン)は胃腸障害や腎機能障害のリスクがあるので、胃が弱い方は注意が必要です。カロナール(アセトアミノフェン)は過剰に摂取すると肝臓にダメージを与える可能性がありますが、通常の用量では胃腸への影響は少ないことが特徴です。
編集部
熱があるとき、ロキソニンとカロナールのどちらを選ぶべきでしょうか?
山形さん
発熱の原因が何であるか、またほかにどのような症状があるかに応じて選びましょう。単に熱を下げる目的であれば、カロナールの方が胃にやさしい選択肢となります。痛みや炎症がある場合はロキソニンが効果的です。ただし、症状や体調によって異なるので、自己判断せず、医師や薬剤師に相談することをおすすめします。
編集部
関節が痛い場合はロキソニンとカロナールのどちらがおすすめですか?
山形さん
関節痛の場合、ロキソニンがおすすめです。とくに炎症を伴う関節痛には効果的です。ロキソニンは体内で痛みや炎症の原因となるプロスタグランジンの生成を抑制するため、関節の腫れや痛みを軽減するのに役立ちます。
編集部
胃が弱いのですが、ロキソニンとカロナールのどちらを選ぶといいですか?
山形さん
胃が弱い場合は、カロナールを選ぶ方がいいでしょう。カロナール(アセトアミノフェン)は、胃への負担が比較的少ないとされています。これは、アセトアミノフェンが主に脳の中枢神経に作用して痛みの伝達を抑え、解熱効果を発揮するためです。ロキソニンは、胃粘膜を保護するプロスタグランジンの生成を抑制することがあり、胃腸の不調や出血のリスクを高める可能性があります。特に胃が弱い方や胃腸障害の既往歴がある方は、ロキソニンの使用には注意が必要です。
編集部
ロキソニンやカロナールなど解熱鎮痛剤を選ぶ際に注意すべき点は何ですか?
山形さん
解熱鎮痛剤を選ぶときには、副作用や既存の症状、アレルギー歴を把握することが大切です。長期間の服用や過剰摂取は避けます。不適切な薬の選択や服用量の誤りは、症状の悪化や副作用のリスクを高めるので、自己判断せずに医師や薬剤師に相談しましょう。
編集部
子どもに市販の解熱鎮痛剤を選ぶときはどちらが適切ですか?
山形さん
ロキソニンは15歳未満のお子さまには推奨されません。カロナールは、体重や年齢に応じた適切な服用量であればお子さまにも安全とされています。
編集部
妊娠中や授乳中に服用できる市販の解熱鎮痛剤はありますか?
山形さん
ロキソニンは妊娠中や授乳中の服用は避けます。とくに妊娠後期の女性はロキソニンを飲んではいけません。それ以外の方は、医師等の指示がある場合のみ服用可能です。カロナールは妊娠中や授乳中でも一般的には安全とされていますが、医師の指導のもとで服用する方がいいでしょう。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
山形さん
ロキソニンとカロナールは、それぞれ特徴があり適した症状も異なります。ご自分の症状や体質をよく理解して選びましょう。お子さまや妊娠中の方はとくに注意が必要です。自己判断で服用するのではなく、医師や薬剤師に相談してくださいね。解熱鎮痛剤を正しく使って、辛い症状を一刻でも早く和らげましょう。
ロキソニンは非ステロイド性抗炎症薬で、痛みや炎症、発熱を和らげる効果があります。一方、カロナールは非ステロイド性抗炎症薬には分類されず、発熱や痛みに効くものの直接的な抗炎症作用はないことがわかりました。それぞれの薬は形状、副作用、適した症状も異なります。個々の症状や体質に合わせた解熱鎮痛剤の選択をすることが大切です。不安な場合は、自己判断に頼らず医師や薬剤師へ相談してくださいね。