宝塚歌劇団の宙組に所属していた劇団員の女性(当時25)が2023年9月に死亡しているのが見つかった問題で、劇団に対してパワハラの認定や謝罪を求めていた遺族側が会見し、28日に劇団側が14項目にわたるパワハラの存在を認める合意書を交わし、劇団側が遺族に謝罪した事を明らかにした。劇団側も28日の同時刻に会見している。
女性の代理人弁護士は亡くなった女性の母親のコメントを発表した。当初パワハラの存在を否定した劇団側を痛烈に批判し、娘に寄せる思いを綴っている。
全文は以下の通り。
遺族(母)
あの日から季節は幾度か変わりましたが、私たちの時間は止まったままです。
娘を想わない日はありません。娘に会いたい、抱きしめたい、ここに居てくれたらと一日のうちの瞬間、瞬間に何度も思っています。
そして、助けられなかったことを悔い、娘に謝っています。
娘の夢をみて、目覚めた時の現実の虚しさに打ちのめされる、そんな朝を何度迎えたでし ょうか。
パワハラが無かったことを前提に作られた調査報告書は、こともあろうか劇団HPに掲載されました。
過重労働については見解の違いはあったものの、ある程度認める内容でしたが、パワハラ については、全ては娘に非があった、そのための正当な範囲内での指導だった、パワハラは一切無かったという酷い内容でした。
劇団が依頼した弁護士の聞き取りの場で、私たちが提出した娘の悲痛な言葉や証拠、そし てパワハラを実際に見聞きし、全てを話してくださった劇団員さんの数々の証言も全く反映されておらず、パワハラを行った側を擁護する内容でした。
劇団側にHPでの掲載を止めるように繰り返し求めましたが、1ヶ月以上経ってからよう やく抹消されました。
調査報告書の内容を盾に「パワハラはありませんでした」と断言され、「証拠があるなら是 非お見せいただきたい」と画面越しに挑んでこられた劇団の記者会見は、今でも鮮明に覚 えています。
それに対して、調査報告書の誤りを詳しく指摘し、私たちが入手した証拠や劇団員さんか らの証言を、直接提出しましたが、劇団は、第三者委員会を設置することはなく、パワハラ を行った人の意見のみを聞き、それを擁護しました。
今更ながら、2年半前にヘアアイロンによる火傷があった時に泣き寝入りせず、声を上げれば良かった、昨年2月に劇団がヘアアイロンによる火傷の事実を「事実無根」と発表した時に抗議すれば良かったと、後悔してもしきれません。
いずれにしても、事実は隠蔽され、娘の居場所は無くなっていたかもしれません。けれど、声をあげておけば、娘の命は救えていたはずです。
阪急阪神ホールディングス、宝塚歌劇団の幹部の方々に、もしご自分の娘が同じことになったら、どうされたのかと、お尋ねしたいです。
娘は決して弱かったわけでも、我慢が足りなかったわけでもありません。過酷な労働環境と、酷いパワハラの中でも、全力で、笑顔で舞台に立っていました。強く生きていました。私たちはそんな娘を誇りに思っています。
娘の尊厳を守りたい一心で、今日まできました。
事実を訴え続けた結果、当初は過重労働のみを認め、一切パワハラは無かったと主張された劇団が、多くのパワハラを認め、本日ようやく調印となりました。
言葉では言い表せないたくさんの複雑な想いがあります。
娘に会いたい、生きていてほしかったです。
最後になりましたが、娘にお心を寄せてくださった方々に感謝を申し上げます。