バタークリームで成形したケーキをチョコレートで覆い、タヌキに見立てた「たぬきケーキ」。
昭和の終わりごろまで全国の洋菓子店で多く見られたが、生クリームを使ったケーキが主流になるにつれ減少した。しかし近年、かわいさや懐かしさから人気が再燃。インスタグラム上で「#たぬきケーキ」とハッシュタグが付けられた投稿は2万件を超え、販売を再開する店もある。
1977年から札幌市内で洋菓子店「シャトレーヌ」を営む中川仁さん(80)は、創業から約10年間はたぬきケーキを販売していたが、製造に手間がかかるため販売を停止。2012年に地元で開催された「昭和の洋菓子再現フェア」でたぬきケーキを出したところ好評だったため、再販することにした。
東京や名古屋から来て購入する人もおり、現在も人気商品だという。ケーキの中に入れるアンズジャムを、チョコレートと生クリームを混ぜたガナッシュにするなど、時代に合わせて試行錯誤もした。中川さんは「50代くらいの人は『懐かしい』、若い人は『かわいい』と言って買う人が多い」と笑う。
ネット上で「全国たぬきケーキ生息マップ」を管理する青森県の会社員松本よしふみさんは、販売店は10年前後が一番少なかったが、この10年ほどで再販する店やメディアに取り上げられる機会が増えたと話す。洋菓子チェーン店の進出が遅かった地域に今も残ることが多いとし、「幼少期にたぬきケーキを食べていた40~50代はノスタルジーを感じ、若者はSNS映えするかわいい見た目から買うのでは」と分析する。
松本さんは07年からマップを作り、これまでに200軒以上の店を巡ってきた。「顔が付いていて感情移入しやすく、思い出に残りやすい。店ごとに個性があるのも魅力」と語る。札幌市内でも「シャトレーヌ」のものは円形だが、「梅屋」では三角形、「くるみや 山鼻店」ではリボン付きとなしの2種類が販売されている。松本さんは「最初はみとるつもりでやっていたが、盛り上がってきた。これからも見守っていこうと思う」と話した。